月の軌道が地球上の植物の成長や気候に影響を与えている可能性

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月の引力による潮の満ち引きは、魚の移動やサンゴの産卵など、地球上の動物の行動に大きな影響を与えることが知られています。マッコーリー大学の研究チームによって、潮の満ち引きがマングローブの生態にも影響を与えている可能性があるとわかりました。

Scientists Find Weird Connection Between Lunar ‘Wobble’ And Mangrove Canopies : ScienceAlert
The lunar nodal cycle controls mangrove canopy cover on the Australian continent | Science Advances
https://doi.org/10.1126/sciadv.abo6602

Scientists Find Weird Connection Between Lunar ‘Wobble’ And Mangrove Canopies : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-find-weird-connection-between-lunar-wobble-and-mangrove-canopies

マッコーリー大学の湿地生態学者であるニール・センティラン教授が率いる研究チームは、1987年から2022年にかけて撮影された高解像度の衛星写真を用いて、オーストラリア大陸全体のマングローブ林の被覆率を測定しました。その結果、マングローブの樹冠面積に変動があることが判明しました。


約1カ月という月の周期によって生まれる潮の満ち引きで、沿岸に生育するマングローブの根を覆う潮の流れも変化するため、マングローブの生育に影響を与えます。ただし、今回の研究で関連が指摘されたのは、月の軌道の長期的な変動です。

月の公転軌道面は地球の公転軌道面である黄道面に近く、およそ5.1度の傾きを持ちます。そして、月の公転軌道面自体がこの傾きを保ちながら、約18.6年の周期で回転します。この公転軌道面の回転によって、月の軌道が少しずつ変化し、マングローブにも影響を与えているというわけです。


センティラン教授は「マングローブの年間樹冠被覆面積の傾向を時間の経過とともに調べると、18.6年周期で非常に興味深い振動があることに気づきました。月の周期の山と谷のタイミングを詳細に調べたところ、マングローブの樹冠被覆面積の変化と完全に一致していたのです」とコメントしています。

研究チームによれば、長期的な周期によって月の潮汐(ちょうせき)力が最も弱まると潮位が低くなるため、マングローブの生態系が乾燥し、樹冠の被覆が小さくなるとのこと。一方で潮汐力が最大になると、潮位が高くなり、マングローブの成長が促進されるため、樹冠の被覆面積も多くなるというわけです。

さらに研究チームは、月の18.6年周期による公転軌道面の変化が、エルニーニョ・南方振動にも影響を与え、オーストラリア東部・北アメリカ・南アメリカ西海岸で発生する大雨と干ばつに影響を与えていると指摘しました。例えば、2015年にオーストラリア北部でおよそ4000万本のマングローブを枯死に至らしめたエルニーニョ現象の発生時期が、月の潮汐力が最も弱まったタイミングと一致していたと研究者は主張しています。


研究チームは、今回の研究が地球の自然のリズムを解き明かす上で重要だと述べており、地球温暖化を食い止めるために大気中から二酸化炭素を除去する方法を世界中が模索する中、その詳細を理解することは重要なことだと主張しています。

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