ビットコインを法定通貨として採用した後に中途半端な仮想通貨「サンゴコイン」を開始した中央アフリカ共和国はどうなったのか?

GIGAZINE
2022年12月28日 09時00分
メモ



2022年4月、中央アフリカ共和国の大統領府は仮想通貨のビットコインを法定通貨として採用することを発表しました。国家が法定通貨に仮想通貨を採用すると発表したのはエルサルバドルに次いで世界で2番目。さらに中央アフリカ共和国は独自の仮想通貨「サンゴコイン」をトークンとして発行すると2022年7月に発表し、世界中から注目を集めました。しかし、この中央アフリカ共和国の経済政策は、記事作成時点だとうまくいってない模様です。

Central African Republic delays crypto token listing, cites ‘market conditions’ | Reuters
https://www.reuters.com/technology/central-african-republic-delays-crypto-token-listing-cites-market-conditions-2022-12-20/


One of the World’s Poorest Countries Put Its Faith in Crypto – Why?
https://www.vice.com/en/article/dy7qyz/central-african-republic-bitcoin

アフリカ諸国はフランスやイギリスなどヨーロッパ諸国の植民地だった歴史があり、公用語がフランス語や英語となっている国も多く存在しています。そして、中央アフリカ共和国やセネガルベナンカメルーンなどの旧フランス領諸国では「CFAフラン」という通貨が使われていました。

このCFAフランはフランスが印刷と流通を管理するために1945年に導入した通貨です。しかし、「CFAフランはフランスがアフリカ14カ国の資源を搾取し、財政的に支配するための通貨だ」という批判があり、フランス支配から脱却したいアフリカ諸国の一部はCFAフラン経済から脱して独自の通貨体制を築こうとしています。

人口500万人ほどの内陸国で、世界最貧国の1つとしても知られる中央アフリカ共和国もCFAフランからの脱却を目指しており、中央アフリカ共和国の大統領府は2022年4月27日に仮想通貨のビットコインを法定通貨に採用することを発表しました。

中央アフリカが法定通貨にビットコイン採用、世界で2カ国目 | ロイター
https://jp.reuters.com/article/centralafrica-economy-bitcoin-idJPKCN2MJ28C

中央アフリカ共和国のフォースタン=アルシャンジュ・トゥアデラ大統領は「現金に代わるものは暗号資産、すなわち仮想通貨です。私たちにとって、形式的な経済はもはや選択肢ではありません」と語りました。

中央アフリカ共和国では、1960年に独立してから60年以上にわたって内戦が続いています。ビットコインはブロックチェーン(分散型台帳)システムを基盤にした非中央集権型エコシステムの通貨なので、技術的・普遍的に利用可能で検閲もなく、いかなる権力にも支配されません。そのため、政情が常に不安定な中央アフリカ共和国にとって、ビットコインには大きなメリットがあるといえます。


しかし、中央アフリカ共和国では人口のわずか14%しか電気を使えず、さらにインターネットにアクセスできるのは人口のわずか10%ほど。中央アフリカ共和国民の年収の中央値は493ドル(約6万5000円)で、1ビットコインを購入するのに何十年もかかります。

中央アフリカ共和国の首都・バンギにあるバンギ大学に通う学生は、「ビットコインを法定通貨に採用するという計画が発表されたとき、盛大な祝賀会が開かれ、私たちは皆この国を誇りに思いました。しかし、法定通貨になっても生活はまったく改善されていません」と語っています。また、別の学生は「ほとんどの市場トレーダーや顧客が電話やインターネットにアクセスできません。バンギ以外の住民は何も持っていません」とコメントしています。

結果的に中央アフリカ共和国に住むほとんどの人がビットコインに投資することができないまま、2022年7月に中央アフリカ共和国の大統領府は10億ドル(約1330億円)の調達を目指し、独自の仮想通貨である「サンゴコイン」を発表しました。


しかし、中央アフリカ共和国は2022年12月19日に、「現在の市況とマーケティング上の都合」を理由に、サンゴコインの上場を延期したと発表しました。ロイターによれば、記事作成時点でサンゴコインは販売目標の0.01%しか達成されていないとのこと。

サンゴコインは「中央アフリカ共和国の未来」と銘打たれ、入手するには最低500ドル(約6万6000円)の投資が必要でした。さらに投資のインセンティブとして、投資家は1万ドル(約133万円)の投資で中央アフリカ共和国の土地を購入でき、6万ドル(約800万円)の投資で中央アフリカ共和国の市民権も購入できましたが、これらは2022年8月に最高裁判所から違憲と判断され、無効となりました。

結果としてサンゴコインの取引は記事作成時点でロックされている状態で、手に入れたとしても販売あるいは交換する方法がない状態となっています。人権保護NPO・Human Rights Foundationの最高戦略責任者であるアレックス・グラッドスタイン氏は、CFAフランの批判者であり、発展途上国でビットコインを法定通貨に採用することを支持する人物ですが、サンゴコインについては「実に中途半端だった」と評価しています。

グラッドスタイン氏は「中央アフリカ共和国がビットコインを法定通貨にしたのは、どうもサンゴコインを宣伝するための詐欺のようなものだったようで、ビットコインを国内経済に有意義に統合することが目的だったとは思えません。大統領はビットコインに興味を持っているようですが、その興味を利用してサンゴコインでばく大な利益を得ようとした少数の人々が周囲にいるのでしょう。しかし、実際にはわずかな資金しか調達できなかったようです」と述べています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました