映画の映像や画像を勝手に利用した上で、字幕やナレーションを別個につけて、わずか数分程度で映画の内容を要約する「ファスト映画」が、TikTokの中国人クリエイターによって多数制作されており、多いものでは数百万再生されていることがわかりました。
TikTok creators are condensing Hollywood films like Gone Girl and Danish Girl into minutes and getting millions of views – Rest of World
https://restofworld.org/2022/movies-in-minutes-on-tiktok/
中国語圏では数年前から、動画SNSである抖音(Douyin)、快手(Kuaishou)、哔哩哔哩(bilibili)などでファスト映画が流行してきました。しかし競争が激化した結果、中国人クリエイターは、抖音の国際展開版であり中国国内では利用が禁止されているTikTokに進出してきたとのこと。
ニュースサイトのRest of Worldの取材に対して、フルネームは明かさず「ウィルソン」と名乗ったクリエイターによると、素材は抖音など中国のプラットフォームから入手し、中国語で要約台本を作ったのち、DeepLなどの翻訳サービスを用いて内容を英語に変換、吹替アプリのMoyinでナレーションを作り、Adobe Premiereで仕上げているのだとのこと。TikTokの海賊版検出をくぐり抜けるため、一部のフレームについて削除か反転を行う加工も入れているそうです。10のTikTokアカウントを運用しているというウィルソン氏は、月に約1400ドル(約20万円)稼いでいるとのこと。
また、「Bi」と名乗るクリエイターはVPNを利用してイギリスで2つのTikTokアカウントを運用し、月300ポンド(約4万6000円)稼いでいるそうです。
ウィルソン氏とBi氏は他人に技術を教える有料講座も提供していて、余暇にお金を稼ぐ方法を探している専業主婦が多数受講しているとのこと。近年は英語だけではなくドイツ語、フランス語、スペイン語、インドネシア語のクリップも作成し始めたそうです。
作られたクリップのナレーションは機械音声で、ときには翻訳ミスもあるのですが、数千から数百万再生されるとのこと。実際に、2016年に公開されたトム・フーバー監督、エディ・レッドメイン主演の映画「リリーのすべて」のまとめ動画は400万回以上再生されています。
中国の規制当局であるChina Netcasting Services Associationは、ショート動画アプリに対して、ライセンスを持たない映画やテレビ番組のクリップ投稿を禁止するように命じたものの、中国国外の著作権者による取り締まりはないと考えるクリエイターは投稿をやめず、動画ストリーミングサービスのiQiyiは、抖音に投稿されたクリップにiQiyiで配信されている元作品へのリンクを入れてもらうという形で協業していくことを選びました。
Douyin strikes deal with iQiyi on derivative works – PingWest
https://en.pingwest.com/w/10503
なお、この件についてTikTokはコメントをしなかったとのこと。
Rest of Worldは「二次創作物の人気が高まれば、TikTokとのライセンス契約を検討する可能性が高い」という、ロサンゼルスでエンタメ関連の弁護士をしているラリー・ザーナー氏の言葉を紹介。ザーナー氏は、クリップを投稿しているクリエイターから報酬を得ようとするのは「もぐらたたき」のようなもので、努力の価値がないと述べたとのことです。
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