「ビジョンだけでは説得できない」:資金調達難のなか、利益と成長のバランスを問われる スタートアップ たち

DIGIDAY

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今年、D2Cブランドにとって、ベンチャーキャピタルの調達がますます困難になったことは明らかだ。パンデミックのあいだ、投資家にとってeコマースは魅力的な分野だった。しかし現在は、消費財のスタートアップには、インフレから、今後の景気後退を見据えたベンチャー投資家の出資の手控えまで、多くの逆風が吹いている。

それでも、資金調達が困難であることに関する議論は、この数週間でピークに達したように思われる。特に、食前酒のスタートアップであるハウス(Haus)が、リード投資家を確保できなくなり、事業の売却を望んでいると発表してから、消費財分野の創業者たちは、投資家の注目を集めるにはどうするべきかについて、ソーシャルメディアの記事を比較したり、それぞれの個人ネットワークを通じて情報を得たりしていると語っている。

投資家の期待は製品のタイプやスタートアップの規模によって異なるが、創業者たちによると、飲食料品などのカテゴリでは、卸売業者の流通が広がり、センターステージに躍り出たことで、D2Cのアプローチが重視されなくなっているという。一方投資家は、成長率を犠牲にすることなく粗利益やEBITDAなど主要な収益性指標を向上させる、より明確な道筋を期待している。

ビジョンとストーリーテリングだけでは説得できない

「何が何でも成長率、という見方ではなくなってきた」と、調理器具ブランドのメイドイン(Made In)の共同創業者であるチップ・モルト氏は語る。

今回話を聞いた創業者のなかに、現在資金調達をしているという人はいなかったが、これらの創業者たちは、現在の考えはすべて、資金調達を行っているほかの創業者から聞いたことや、投資家との会話に基づいていると話していた。

「創業者やCEOの役割として、いつでも投資家との対話、確認、人との会合をやっている」とモルト氏は述べている。

アジアにインスパイアされた炭酸飲料のブランドであるサンゾ(Sanzo)の創業者のサンドロ・ロコ氏は、先週、「対応できる以上のリクエストに打ちのめされている」とツイートしたあと、飲食料品のスタートアップ向けに資金調達のアドバイスを共有した。

「特にこの6週間、終わっていない、あるいは少し減速したラウンドについて、話を聞く相手がものすごく増えたと思う」と、ロコ氏は米モダンリテールに語った。

飲食料品の分野では「D2Cからの利益がやや下がっていることがわかった。販売チャネルとしてのD2Cが、全体的にそうなっている」とロコ氏は述べている。ハウスやドリンクブランドのダーティレモン(Dirty Lemon)のようなD2C先行のやり方は、以前は注目を集めていたが、現在は、「そのブランドが小売業界で何をしているか」に注意が向けられている。

ロコ氏は、シリーズAのラウンド中とその後で、創業者が「ビジョンとストーリーテリング」だけでベンチャー投資家を説得することはできなくなると述べている。「資料に逐一数字を書き込む」必要はないが、選んだ販売チャネルに応じて、会社の収益性を上げられることを示す一定の指標が重視されていると同氏は述べている。卸売業者を通じて販売する飲食料品ブランドであれば、「営業効率の高さによって得られる堅実な粗利益」などが注目される。

規模を拡大してもうまくいくのか

ゼロシュガー飲料ブランドのスーン(Swoon)の共同創業者であるクリスティーナ・ロス・ブランクファイン氏も、この意見に同意している。飲食料品の分野では、これまでも、高い営業効率が実現されることを示す指標、たとえば、既存店売上高の増加などが常に重視されてきた。しかし、景気後退の可能性が高まり、ブランドの資金調達が難しくなることを考えると、「できるだけ粗利益を増やすためにどうするか」がより注目されるだろうと、同氏はいう。

要するに「規模を拡大してもうまくいくビジネスなのか」が問われていると、同氏はまとめている。

後期ステージのブランドからも、同様の話が出ている。モルト氏は最近、プライベートエクイティカンファレンスに出席したが、そこでは、「存在するべきでないビジネスへの過剰出資は終わった」と唱えられていたという。

後期ステージで注目されたのは、EBITDAの成長と、その元となる計算値、つまり、粗利益や貢献利益などだったという。「現在のEBITDAが500万ドル(約6億8400万円)であれば、現在のプロファイルで7500万ドル(約102億5500万円)にできる道筋はあるのか」。

来年、消費財のスタートアップは、険しい道を歩かなければならない。投資家は、売上の増大を犠牲にすることなく主要な収益性指標を向上させることを期待しているが、事業の運営にかかるコストはさらに値上がりするだろう。

「創業者たちが現在感じているプレッシャーのひとつは、あらゆるものが値上がりしていることだ」と、ロス・ブランクファイン氏は述べている。「材料費、人件費、その他事業に関係するあらゆるコストが値上がりしている」。

「コストの増大という圧力に耐えながら成長を続けるという、タイトなバランスだ」と、同氏は続ける。「資金を求めてうろうろせずに、今は耐え、次の18カ月をできるだけうまくやり過ごせ、といわれている」。

[原文:DTC Briefing: In a scarce fundraising environment, startups are asked to balance profitability and growth]

ANNA HENSEL(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Made in/Sanzo/Swoon

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