以前にあれこれ食べ比べ、その多様性に驚いた「かた焼きそば」の世界。でもよく考えると、そのすべてにかかっていたのは、中華風のとろみ餡オンリーでした。
もっと自由に、いろんなソースをかけてみたらどうなんだろう。合うのかな? 合わないのかな? やっぱりかた焼きそばのソースは、中華風にかぎるのかな?
前の記事:40年前の「赤玉パンチ」を開けてみる
宇宙はもっと多様性に富んでいるはず
以前当サイトでこんな記事を書かせてもらいました。
内容は、かた焼きそばにハマり、地元のお店でかた焼きそばを出している店10軒でひたすらかた焼きそばを食べるというもの。すると、かた焼きそばにはひとつとして同じものがないということがよくわかり、最終的にこんな結論に達しました。
ところが先日、ふと思ったんです。よく考えると、その他の麺類って、それぞれにかなり味つけのバリエーションがあるのに、かた焼きそばは基本、中華丼風の餡かけだけだよなと。
それ以外の味は合わないんだろうか? いやいやそんなはずはない。あの揚げ麺には、どんな味も受け止める度量がある気がする。それに、宇宙とはもっと多様性に富んだもののはず。
そこで今回は、市販の揚げ麺にあれこれソースをかけて食べ比べ、かた焼きそばの新たなる可能性を探ってみようと思います。
レトルトソース×市販の揚げ麺
そこでまず、土台を用意します。
僕の住んでいる関東圏だと、大きめのスーパーならたいてい売ってます。
で、今回はお手軽に、スーパーやコンビニで手に入るレトルトのソース類をあれこれ買ってきてみました。
左上から右下へ向かい、
・魯肉飯の具
・クリームシチュー
・カレー
・グリーンカレー
・牛丼の具
・つけ麺スープ
・カルボナーラソース
・ミートソース
これをそれぞれ、小皿に少量用意した揚げ麺に適量かけては味見していこうと思います。
というかこの揚げ麺、ちょっとそのままぽりぽりつまんでみたんですが、なにもかかってなくても美味しいですね! ほんのりと塩気があって、香ばしくて、甘くないかりんとうみたい。塩少々をまぶしてやるだけで、いいつまみになるな。
「カレーかた焼きそば」
じゃあまず、大好物のカレーからいってみますかね。選んだのは、好きなレトルトカレーのひとつ「ボンカレーゴールド 中辛」。
ど〜れどれ、ぽりぽりぽり……あ、もう、普通に超うめー!
まず、カツカレーやコロッケカレーが定番であるからして、揚げ麺の香ばしさやサクサク感が合わないはずがないんですよね。また、カレーライスのようにがつがついけず、どうしてもひと口が少量ずつになるから、大好きなカレーを酒のつまみ的に味わえる。ああもう、残りの麺ぜんぶにカレーかけて食べちゃいたい!
「ミートソースかた焼きそば」
今回の企画、もういい予感がするぞ。すでに確信しているのは、きっとどれも基本的に美味しいであろうこと。あとはもう、よりお互いが高め合う組み合わせを探すのみだ!
世の中には、「みんなそんなに好きなの!?」ってくらいパスタソースがあふれていますから、試したい放題の世界ですね。なかでも定番のミートソース、いってみましょう。
あああー、これは……大大大正解だ! たまにイタリアンバルなんかで、揚げたパスタに塩をまぶしたものが軽いおつまみとして出てきたりするでしょう。ミートソースと一緒に食べると、急にそれが頭をよぎる。揚げ麺が一気にイタリアンに染まり、まったく違和感がない。かた焼きそばの醍醐味に、「ソースに浸って徐々にしなしなになってくる麺」がありますが、その意味でもミートソースのとろみ感は絶妙。
もうね、なぜこの料理がなかったんだ!? (どこかにあったらすみません)って感じですよ。あ、これさっきも言ったか。
とにかく、超好き!
「カルボナーラかた焼きそば」
パッケージには「風味豊かなベーコンと4種のチーズでクリーミーに仕上げました」とありますね。まぁ、合わないはずがないでしょう。
なるほどなるほど。これまでののふたつと比べると、ほんの少しだけ“おもしろみのある味”な仕上がりかな。もちろん美味しいんですが、なんだろ、どこか「チーズアーモンド」っていうおかきを思い起こさせるような、お菓子っぽさがある。
もちろん選ぶソースによっても感想は違うんでしょうが、やっぱりまったりとろりが持ち味のカルボナーラは、素直にゆで麺のほうが合うかもしれません。
「魯肉飯かた焼きそば」
いや〜、染まるなぁ、揚げ麺よ。さっきまでイタリアン食材だったのに、一気に台湾味じゃないか。
八角などのスパイスがおりなすオリエンタルな香りと、たっぷりの豚肉の旨味。とろみ感もほぼ正当かた焼きそばの中華餡と同じくらいで、もう、なんの違和感もありません。
これ、台湾の屋台で出したら大ブレイクするんじゃないの? (すでにあったらすみません。って、これもさっきから言ってるな)
「クリームシチューかた焼きそば」
え、待って待って。今回、スーパーで見つけた「新宿中村屋 濃厚クリームシチューごろごろ野菜のこだわり仕立て」というのを選んでみたんですが、さすが中村屋さん、レトルトなのに、シチュー自体がびっくりするほどうまい!
ただし、商品名どおりの濃厚さは、麺になかなかソースがいきわたらないほど。その優しさと荒々しさが対立してしまい、あくまで今回のシチューに限っては、純粋にそのまま味わいたいかな。
だけどもちろん美味しいので、ご家庭で作った残りシチューのアレンジとしてはありだと思います。
「牛丼風かた焼きそば」
いや〜、昨今のレトルトって本当すごいっすね! というか、その感覚がもう古いか。昨今っていつだよ、っていう。だいぶ前からすごいのかレトルトは。とにかく具がたっぷりでよ〜く煮込まれた牛丼のアタマの、あの美味しさが、さっとあっためただけで味わえるんだもんな。
ただですね、みなさんもそうだと思うんですが、これをお米にかけた牛丼や、僕の場合なら豆腐にかけた肉豆腐。それらの美味しさが体に染み込みすぎていて、どうしても思い出してしまう。つまり、食べていると米や豆腐が欲しくなる。
変わり種の一品としてはありだけど、今日いちで、あんまりやる意味のない組み合わせかな〜……。
「グリーンカレーかた焼きそば」
わははは! これはさ、もう、あるよね? この料理。うっま! 激うまだわ。
パキポキの麺とその油っ気が、グリーンカレーの爽やかな辛さ、甘さと融合し、もう、タイにこういう料理がないとおかしい! というレベル。
と思ってよ〜く思い出してみたんですが、ココナッツミルクベースのまろやかなカレースープにゆで麺が入り、さらにトッピングとして揚げ麺がのる「カオソーイ」っていうカレーラーメンがありましたよね。カオソーイにもいろいろ味のバリエーションはあるんでしょうが、あれに近いんだ。そりゃあうまいよな。
「つけ麺風かた焼きそば」
すいません、これだけ単体写真を撮り忘れてしまったんですが、選んだのは「山岸一雄監修 つけ麺専用ストレートスープ 濃厚魚介醤油味」。あの名店「東池袋大勝軒」を創業した山岸さんが監修したんだから、うまいことは間違いなし。あとは揚げ麺との相性ですが。
このように盛りつけてみました。メンマや煮玉子を用意するなど、他のソースに比べてえこひいき感が出てしまいましたが、やっぱりそのほうがつけ麺的な雰囲気が出るじゃないですか。
で、こいつをバリボリと味見してみると……わー、想像以上にいい! つけ麺の世界では、ごわごわ、わしわしと表現されるような太麺がもてはやされたりすると思うんですが、それの究極というか。
これまたカレーと一緒で、勢いでは食べきれないので、新しい「つけ麺風おつまみ」としてかなり優秀な気がします。
いや〜、どれもうまかった!
個人的ベストメニューは?
食べ比べた8種類のニューかた焼きそば。好みの差はあれど、どれも美味しかったな〜。なかでも個人的にいちおしメニューを選ぶとしたらどれだろう?
う〜ん……やっぱり、揚げ麺が一気にイタリアンに染まった衝撃が忘れられない「ミートソース」かな!
というわけで、最後に「ミートソースかた焼きそば」を1人前、きっちりちゃんと作って味わってみましょう。
1人前の麺に、さっきと同じレトルトなんですが、せっかくなので粗びきのひき肉をたっぷり炒めて加え、パセリ、粉チーズなども散らし、そして赤ワインも用意して。いただきま〜す!
ガシガシ、バキバキとむさぼる揚げ麺の香ばしさがあらためて美味しく、そこに絡みつく甘酸っぱいソースとひき肉の旨味がたまらない。どう考えてもこれ、中華風餡にひけをとらない組み合わせですよ!
書く前は、「相性」「好み度」「斬新さ」などの項目を設け、星でもつけて評価するのもありかなと思っていたのですが、最初の2品を食べたくらいでもはや「みんな違ってみんないい」モードに突入してしまった、今回の記事。
わかったことは、かた焼きそばの揚げ麺の、どんな味でも受け止めてくれる度量は、限りなく大きかったということ!
みなさんもぜひ、自由にあれこれ試してみてください〜。
ライターからのお知らせ
これまでデイリーポータルZにスズキナオさんとのコンビ「酒の穴」で書いた記事をセレクトし、全ページに新たなはみだし対談も加えて再編集した本、『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』が9/29に発売されます! よろしければぜひ。