ファッションレンタル がインフレ圧力に耐えている理由

DIGIDAY

現在、ファッションのほぼあらゆる側面にプレッシャーがかかっている。メーカー側は対処しているが、原材料の高騰によってブランドの利益率が圧迫され、結果的に顧客は同じ商品に対して以前よりも高い金額を支払わなくてはならなくなる。

しかしそんな時期に、レンタルファッションが驚くほどの回復をみせている。パンデミックの初期には、服を借りるのにちょうどよい機会がほとんどキャンセルされてしまったため、レンタルは壊滅的な打撃を受けた。だが現在、ワービーパーカー(Warby Parker)やオールバーズ(Allbirds)といったD2Cブランドを含むブランドの多くが苦戦するなか、レンタル会社はサブスクライバー数をさらに伸ばしており、安定したビジネスを展開している。

お金をかけずにワードローブに多様性と楽しさを

創業3年目となるニューリー(Nuuly)は、アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)の親会社であるURBN傘下のレンタルサービスだ。同社は、過去3カ月で1日あたり数百人の新規サブスクライバーを獲得し、7月末時点でアクティブなサブスクライバー数が9万人以上に達している。ニューリーのプレジデントで、アーバンアウトフィッターズのCTOデイブ・ヘイン氏によると、ニューリーの月額利用料は88ドル(約1万2000円)であり、順調に利益を上げている。ちなみに、13年の歴史があるレント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)のアクティブサブスクライバー数は13万5000人である。

「今年のトップラインのサブスクライバーの伸びは見ていて楽しいが、ビジネスとしてボトムラインの黒字化に向けて前進していることに対しても、信じられないほど興奮している」とヘイン氏は言う。「ニューリーではサステナブルなビジネスを構築したいと早くから決定しており、そのためには、将来の成長(ニューリーのカタログに150の新規ブランドを追加するなど)への継続的な投資を支えるべく、最終的には利益を出す必要があった」。

前四半期には営業損失が初めて売上高の10%を下回り、ニューリーは来年までに黒字化できるかもしれないと、ヘイン氏は述べた。

「消費者にとってほぼすべての場所で価格が上昇しているため、ニューリーは強力な価値提案を提供している」とヘイン氏。「当社のプログラムは、お金を使いすぎてしまったとか、無駄遣いしているなどという気持ちにはならずに、ワードローブに多様性と楽しさを加える方法だとサブスクライバーは思っている」。

レンタルなら何年にもわたって商品を収益化できる

レント・ザ・ランウェイも、インフレ圧力にもかかわらずビジネスの回復を目にしている。前四半期には過去最高のサブスクライバー数と前年同期比100%増の売上高を記録した。同社はパンデミックでは何千人もの顧客がサブスクリプションをキャンセルまたは一時停止するなど、大きな打撃を受けていた。

レント・ザ・ランウェイのCFOスカーレット・オサリバン氏は、同社はそのコスト構造により、インフレや今後起こりうる不況といった変動する市場状況に対応できる立場にあると述べた。同社の営業コストの約60%は変動費だ。この中には、カスタマーサービス、パフォーマンスマーケティング、ブランドへの収益分配の支払いなどが含まれているが、これらはすべて需要や収益に応じて調整可能だ。

しかしまた各製品が収益化されているため、インフレ環境下におけるレンタルならではの長所もある。

「私たちのビジネスは、ほかのビジネスとは違う。他の小売業者やeコマース会社が在庫で身動きが取れなくなる可能性があるのに対し、私たちは何年にもわたって商品を収益化できる」とオサリバン氏は言う。

つまり、レンタル業者もコストの上昇に直面しているが、1着の服が1回きりの購入だけでなく、複数回の取引で収益を上げるため、コストにかかる1ドルからさらに大きな効果が得られるのだ。

しかしレンタル業者は、顧客との商品のやりとりで余分な輸送費を負担しなければならない。それに対してレント・ザ・ランウェイは今年、提携先の配送会社を多様化し、配送料を一定に抑えている。さらに、同社は年末までに顧客の50%に自宅でのピックアップを提供することを目標としており、これはUPSのような全国規模の運送会社を経由した配送よりも安価である。

レント・ザ・ランウェイは最近値上げを行い、4月には各会員層のコストを10ドル(約1400円)程度引き上げた。しかしオサリバン氏によれば、これは定期的に行われるものにはならないだろう。

「毎年値上げするという具体的な計画はない」と彼女は言う。「その時々で、一桁台半ばの値上げをすることはあるかもしれないが、それは理由がある場合だ」。

[原文:‘Our business is different’: Why fashion rental has withstood the pressures of inflation]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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