全米広告主協会、CMO向け「 プログラマティック バイイングガイド」を公開:「目標は、透明性を高めるのを手助けすること」

DIGIDAY

全米広告主協会(The Association of National Advertisers:以下、ANA)が8月17日、プログラマティックメディアバイイングに関する初のガイドを公開した。ANAによると、これで、マーケターは年に数十億ドルを節約できるという。これは、メディア売買の比較的曖昧で非効率的な部分に光を当てようとするANAの取り組みで、最新の措置となる。

プログラマティックの透明性についてのCMO向けガイド(CMO’s Guide to Programmatic Transparency)」では、特にプログラマティックチャネルで費やされた金額の半分以下しか、実際にデジタル広告の表示に充てられていないという調査結果を踏まえ、投資を最大限に活かす方法について提言している。

プログラマティックバイイングは、広告主がリアルタイムで入札し、 YouTubeやデジタルビルボードなど、多くのデバイスやプラットフォームで消費者のターゲティングを行うことができるため、人気が高まってきた。

トップ企業のマーケターですら苦労する領域

ANAの推定では、支払額の40~65%はパブリッシャーに行き、その多くがプログラマティックバイイングをサポートするサービスに充てられている。同協会はこれらの提言により、非効率なものを削減する方法を示すことで、マーケターが年に80億~160億ドル(約1兆1000億~約2兆2000億円)を節約できると主張している。ANAによると、2021年時点で、広告支出のうち1550億ドル(約21兆3100億円)以上が毎年、プログラマティックを経由しているという。

このプロジェクトの陣頭指揮を執るANAのCMOグローバル・グロース・カウンシル(CMO Global Growth Council)の責任者、ニック・プリモーラ氏は、CMOがプログラマティックメディアのイノベーションや成長についていくのは難しいと述べている。トップ企業のマーケティング責任者でさえ、理解しようと努めている分野であり、47ページにわたるガイドには、ブランドやエージェンシー、コンサルタント企業など、30以上の寄稿者とパートナーからの教訓が集約されている、とプリモーラ氏は付け加えた。

「目標は、CMOがこれらの分野にもっと投資し、制限をなくして透明性を高めるのを手助けすることだ。CMOが働いている現場は非常に複雑化している」とプリモーラ氏は語った。

ミート・ザ・ピープル(Meet the People)のCEO、ティム・リンゲル氏は、投資額の40~65%がパブリッシャーの利益になるという結果について、もっと高くてもいいと考えている。現実には、パブリッシャーは、入札プロセスで余ったインベントリー(在庫)から多くの利益を上げることが可能で、その多く(GoogleやFacebookなど)がバイヤーであると同時にセラーであるケースもあるからだ。

「非効率かどうかは見方による。(プログラマティックが)理にかなった投資なのは間違いないが、何を期待するかによるだろう(中略)金の使途を理解し、適切な質問をしてほしい」とリンゲル氏は言う。多くのCMOは、そうした質問が分からないか、そうした質問をしないかのどちらかだ、とリンゲル氏は付け加えた。CMOは、広告のフォーマットであれ、広告を掲載するサイトであれ、投資した金の行き先を理解する必要があるという。

「『アドテク税』が高いのは、否定できない」

しかし、エコシステムが巨大なため、それが困難になりかねない。ANAによると、2011~2020年のあいだに、マーケティング技術の業界は、ベンダー数が約150から約8000へと急増した。その結果、ほとんどの企業は現在、メディアのサプライチェーンのために必要以上の金を払っている。ANAによると、その多くは、プロバイダーやサービスにおける重複や、最近の発展に伴うプログラマティック広告購入プロセスの透明性不足が原因かもしれないという。

「『アドテク税』が高いのは、否定できない事実だ」と、プロハスカコンサルティング(Prohaska Consulting)のCMOで、グローバル顧客マーケティング担当責任者のレイチェル・パスクア氏は話す。「だが、アドテク税に含まれるものを理解し、提携関係やベンダーなどを再交渉して整理すれば、そうした費用を削減できる」

ANAが驚いたことに、基本用語であれ、マーケターとマーケティングテック企業間のサービスレベル契約といったより具体的な分野であれ、こうした資料の多くは、利用不可能だった。CMOガイドは、エトナ(Aetna)やIBM、 ペプシコ(PepsiCo)など、大手企業での実務経験がある寄稿者の現実的な提言を提供している。プリモーラ氏は、エージェンシー業界や、さらには学界の他のリーダーも、これを利用して透明性の問題への取り組みを支援できると期待している。

「ガイド以上のものだ。これは学習者のコミュニティなのだ。CMOだけでなく、サプライヤーのCEOや、大学の教授ならびに学部長にとっても、課題や成功を十分に意識するのに役立つ」とプリモーラ氏は言う。

もっと大規模な構想の一環で、ANAのプログラマティックガイドは、エージェンシーやそのパートナーとともに透明性を高めるのに必要な措置を概説している。たとえば、サプライチェーンにおける費用の内訳や、データを用いた継続的なプロセスを生み出すようサプライヤーやパートナーにアプローチする方法などだ。それぞれのソリューションには、社内で議論を促す素材や事例、提案が掲載されている。プログラマティックメディアバイイングのシステムとその費用内訳についての資料も提供している。

特効薬はないが、教育が解決策のひとつに

ガイド全文は、クライアントサイドのマーケターおよびプラチナ会員のほか、ゴールド会員、シルバー会員、個人会員など、ANAの会員向けに、ダウンロード版で提供されている。

パスクア氏から見れば、業界の透明性については「特効薬」がない。だが、コストを理解し、交渉し、正しい結果の測定を行うことができる教育されたバイヤーを獲得することも、解決策のひとつとなる。

「細心の会計と徹底したアトリビューションと測定が、前述のアドテク税を減らす鍵だ」とパスクア氏は語った。

[原文:ANA’s programmatic buying guide aims to shine a light on murky inefficiencies for CMOs

Antoinette Siu(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:分島翔平)

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