RTDアルコール飲料スプリッツソサエティ、ソーシャルメディアを駆使した成長戦略:フォロワー600万人は「商品発売の鍵」

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インフルエンサーのベン・ソファー氏がインスタグラムに投稿したミームのなかでも、ひときわ目を引くのは、昨年から経歴に書き込まれた「スプリッツソサエティ(Spritz Society)の創業者兼CEO」という新しい肩書きだ。

ソファー氏は、@BoyWithNoJobというインスタグラムのアカウントを運用し、約160万人のフォロワーを集めている。ソファー氏の妻クラウディア・オシュリー氏とその妹のジャッキー・オシュリー氏も創業者として名を連ねており、スプリッツソサエティの共同創業者の各種アカウントをすべて集めると、約600万人のフォロワーから成るネットワークが存在することになる。RTD(レディトゥドリンク)缶入りカクテルブランドのスプリッツソサエティは、創業時から、創業者のフォロワーを活用してブランドを広めてきた。

「この10年をかけて、着実にオーディエンスを育ててきた」とソファー氏は述べている。「オンラインでの発言を通じて、我々や我々の考えを信じてもらっている。だから、我々が何かを勧めれば、それを買ってくれる」。

「何千もの人にダイレクトメッセージを送った」

2021年創業のスプリッツソサエティは、果実風味の発泡性カクテルを4本入り1パックで販売しており、価格は17ドル(約2300円)である。ソファー氏のチームは頻繁に、フレーバーやパッケージデザインなどブランドのさまざまな側面についてフォロワーからの意見を求めている。スプリッツソサエティは、発売時、最初の24時間で数十万ドル(1000万円以上)の利益を上げるという盛り上がりを見せた。また、プレシードファンディングでは370万ドル(約5億円)を調達した。

ソファー氏は、インスタグラムのアカウントを運用しながら、マーケティング会社のマリーナマーヘルコミュニケーション(Marina Maher Communications)、メディアエージェンシーのヴェイナーメディア(VaynerMedia)、コンテンツマーケティング会社のブルーアワースタジオ(Blue Hour Studios)などと協働し、マーケティング業界で経験を積んできた。これが、スプリッツソサエティの経営に役立っている。単純に特定のマーケティングデータを追うのではなく、ソーシャルメディアから得た独自のデータを利用し、フォロワーの好みに合うブランドを立ち上げたのである。

ソファー氏は、スプリッツソサエティのフォロワーは「発売する製品の鍵となった存在で、我々は時間とともに、フォロワーとフォロワーが好む製品を関連付ける販売地点をも作り続けている」と述べている。

会社を創業する前に、チームはGoogleフォームを用意して、パッケージデザインやブランドメッセージからフレーバーやアルコール度数まで、オーディエンスに細かく意見を求めた。ソファー氏は、当時、何千もの人にダイレクトメッセージを送ったとも述べている。同氏によると、フォロワーを通じたデータの取得や、ブランドについてのフォロワーとの対話は、現在も続けているとのことである。

フォロワーの存在は、スプリッツソサエティが流通業者や小売業者との関係を築くためにも役立っている。ソファー氏は、創業者のフォロワーのネットワークは、ストーリーピッチや製品の販売に役立ったと述べている。スプリッツソサエティは現在、自社の直販サイトのほか、トータルワイン&モア(Total Wine & More)、ベブモ!(BevMo!)、スペックス(Specs)など約400の卸売店や独立系酒店で販売されている。

ソーシャルメディアをいかに活用するか

インスタグラムやTikTokのようなソーシャルメディアプラットフォームは、スタートアップの成長に欠かせないツールになってきた。生理に関するライフスタイルブランドであるオーガスト(August)のCEO、ナディア・オカモト氏は、300万人のTikTokフォロワーを活用してブランドの認知度を高めた。一方、スキンケアブランドであるピースアウト(Peace Out)の製品のバイラルビデオは、24時間で6か月分の売上を叩き出した。

「ソーシャルメディアは、人類史上最大となる世論のクラウドソーシングだ」と、インフルエンサーマーケティングファームのインフルエンシャル(Influential)のCEO、ライアン・デタート氏は述べている。「それを構築し、理解できれば、たとえば製品の改良だってできる」。

スプリッツソサエティの場合、同社のネットワークを利用して最新の夏のフレーバーであるピーチを6月に発売した。このフレーバーを選んだ方法は、ブランドを立ち上げたときと同じだ。買い物客にメールを送り、4つのフレーバーから選んでもらったのだ。

マーケティング会社であるリングコミュニケーションズ(Ring Communications)の創業者でサフォーク大学教授のキンバリー・リング・アレン氏は、創業者がインフルエンサーでもある場合、より低コストでブランドの顧客を獲得できると述べている。つまり、会社の利益率が高くなる。

「RTD市場は急成長中で、飽和状態となっている。ウォッカソーダ、缶入りテキーラ、缶入りマルゲリータなどが溢れている」。Allen氏はこう述べている。「何も意識せずに乗り出せば、トップをめざすために身を粉にして努力することになる」。

交流会の開催やポッドキャストの運営も

また、創業者たちは、取引のあるさまざまな卸売店で、交流会を開催している。ソファー氏によれば、これによってソーシャルメディアのエンゲージメントを大きく獲得しているという。ほかの2人の創業者、クラウディア・オシュリー氏とジャッキー・オシュリー氏はザ・モーニングトースト(The Morning Toast)という自分たちのポッドキャストを共同運営しており、1週間に100万人のリスナーが聞いているとソファー氏は述べている。クラウディア氏は@GirlWithNoJobとしても知られ、インスタグラムで300万人以上のフォロワーを集めているコメディアンである。ジャッキー氏のインスタグラムのフォロワー数は約27万人である。

ただし、アレン氏は、有名人になれば批判に曝されたり過去の過ちを掘り返されたりすることにもなると述べている。「やることすべてが顕微鏡で観察されるようなものだ。インフルエンサーになり、ソーシャルメディアでフォロワーを集めたら、隠しておけることなどほとんどない」。

ソファー氏は、フルタイムの仕事としてコンテンツクリエイターになろうと思ったことはないと述べている。コンテンツを作るのは楽しいが、今はスプリッツソサエティの経営に集中しているとのことだ。

「スプリッツソサエティは天職だ。@BoyWithNoJobを見れば、これこそが私の仕事だとわかるだろう」。ソファー氏はそういっている。「ただ残念なことに、そのためにミームが減り、ミームを投稿する時間も減ってしまった」。

[原文:How ready-to-drink alcohol brand Spritz Society rallies its social media followers for growth]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image Via Spritz Society

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