Amazon、プライム会員特典を拡充:サブスク収益の鈍化で「顧客維持」に傾注

DIGIDAY

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人々の財布の紐がますます固くなっているなか、Amazonは会員の維持をめざして、米国内のプライム(Prime)サービスに、さらに多くの特典を加えようとしている。

同社は8月1日、パックサン(Pacsun)、ジーエヌシー(GNC)、スーパードライ(Superdry)、ディーゼル(Diesel)などの小売業者と提携し、10都市以上の特定の郵便番号に該当するプライム会員に、即日配送を提供すると発表した。eコマース大手の同社は7月にはグラブハブ(Grubhub)と契約を締結し、一部レストランでプライム会員の配送料を無料にした。

プライム会員向けの特典を拡充

Amazonのサブスクリプション収入の伸びは、昨年度の第2四半期に前年同期比30%超だったが、最新の四半期(4〜6月)には10%に低下した。会員数の減速にもかかわらず、プライム会員はパンデミックがはじまって以降、同サービスへの「出費を有意義に増やした」と、同社の最高財務責任者を務めるブライアン・オルサブスキー氏は第2四半期の決算発表で言及した。「この期間、プライム会員がプライム特典をより多く使用し、ショッピングとエンターテイメントにおいてAmazonを多用する傾向が強まった」と同氏は付け加えている。専門家によると、同社はプライム会員により多くの価値を与え、解約の可能性を減らすために、プライムプログラムの特典を増やしている。

「これにより、Amazonはレストラン、アパレル、消費財といったオフラインの大規模カテゴリーへの足がかりを得るとともに、さらに重要な点として、ファーストパーティーデータを得られることになる」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)の小売およびeコマースのプリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は、米モダンリテールへのメールでの回答で述べている。「これによってeコマース全体の成長が刺激され、主要な購入カテゴリーにおいて摩擦が減少して即時性が改善されることで、Amazonの成長も促進される」と同氏は付け加えている。

「グラブハブを追加したことは、プライムのエコシステムの会員維持に役立てるための戦略だった。小売業者向けの即日配送サービスも、同様の目的から生まれた部分がある」と、コンサルティング企業のグローバルデータ(GlobalData)で小売マネージングディレクターを務めるネイル・サンダース氏は述べている。

Amazonがプライムサブスクリプションを最初に開始したのは2005年2月で、最初の価格は年間79ドル(約1万700円)で、100万点以上の在庫がある商品について2日間での配送を無制限に使用できた。Amazonプライムデー(Prime Day)における会員限定の特売と割引の魅力は、いまでも会員に加入する最大の理由であり続けている。同社はこれまで数年間に、ホールフーズ(Whole Foods)やAmazonフレッシュ(Amazon Fresh)からの食料品配送を特典に加え、ほとんどの商品を当日中に配送することで、会員の定着率を高めている。

会員価格の値上げの背景

多くの特典が矢継ぎ早に追加される一方で、同社は今年2月に米国でのプライム会員の価格を引き上げた。会員価格は以前の年間119ドル(約1万6100円)から年間139ドル(約1万8800円)になった。

サンダース氏は次のように述べている。「プライムの値上げは、サービスのコストが、追加された特典の量に追い付いていなかったことを示している。Amazonの収益がさらに圧迫されている現在、値上げによってこれを修正することは、収益を多少増やし、利益を確保するための方法だ」と、同氏は語る。

しかし、米国におけるプライムの成熟度、すなわちAmazon自身が2022年4月に株主たちに送った手紙で明かしたように、このサービスの会員数がすでに2億人を超えていることを見れば、eコマース大手である同社は「成長を促進するための新しい道筋を探す必要がある」と同氏は述べている。

同氏は、「その一部は、プライムの値上げによって達成できるだろう。しかし、停滞を多少なりとも打破するため、小売業者や企業向けの新しいサービスや提供品を前面に押し出すことが必要だ」。

即日配送についてほかの企業と提携することも、同社のフルフィルメントネットワークの過剰能力を収益化するために役立つだろう。品物を1日またはそれ以内で配送するため、同社は過去2年間に在庫、仕分け、品物の移動を行う施設を450以上も増やした。

「しかし、これはAmazonが自社のサービスをより多くの小売業者に組み入れていくということでもある。同社は広大な物流およびフルフィルメントのネットワークを作り上げたが、その保守には膨大なコストを要する。同社は利益を確保するため、このネットワークを収益化する必要があり、その方法のひとつが、小売業者向けのサードパーティのサービスを追加することだ」とサンダース氏は述べている。

インサイダーインテリジェンスからのプライムデータ(*画像クリックで拡大)

小売業者にとっての利点

プライムで販売を行うブランドは、買い物客への非常に迅速な配送に加えて、Amazonの物流およびフルフィルメント能力も使用できる。

「多くの分野において、Amazonは非常に完成度の高い即日配送を実現している。単独の小売業者がこれに近い配送能力を作り上げることは極めて困難なため、非常に迅速な配送を提供したければ、Amazonと提携することは大いに意味がある」と、サンダース氏は語る。

「またAmazonは、ほかにも小売業者向けに、決済から倉庫管理まで、小売業のあらゆる業務を支援する多くのサービスを提供している。大手のブランドや小売業者はこれらのすべてを活用する必要はないかもしれないが、中小規模の企業にとっては非常に有益なサービスだろう」と、同氏は付け加えている。

これらに参加するブランドや小売業者は、新しいパートナーシップについて非常に楽観的だった。

「Amazonとの出品者パートナーシップの拡大には、一部のパックサンの小売店舗からの直接配送が含まれており、大きな可能性があると感じている」と、パックサンのeコマース担当バイスプレジデントを務めるミミ・ルイズ氏は、米モダンリテールへのメールによる回答で語った。「これにより、当社はプレゼンスを拡大し、自宅で買い物をするという利便性を好む顧客に商品を届けることができる」と同氏は付け加えている。

ネットフリックスもサブスクで苦戦

キッチン用品のチェーンであるサー・ラ・タブル(Sur La Table)はハイエンドの調理器具を販売しており、同様の所感を表明している。「シームレスな即日配送と、オンラインで購入して店舗で受け取るというオプションを選択可能にするのは、当社のブランドのリーチを新しいオーディエンスへと広げ、より優れたサービスを顧客に提供するための新しい方法だ」と、同社の最高経営責任者を務めるジョーダン・ボロシン氏はメールの声明で述べている。同社はこれまで数年間にわたり、マーケットプレイス出品者としてAmazonを使用してきた。

リプスマン氏は、これらの新しいパートナーシップの影響は、小売業者たちにとって「わずかなもの」に過ぎないかもしれないと指摘する。「これらの小売業者の商品に目を留めた消費者が、当日配送が可能であることを知れば、コンバージョン率が多少上がることは考えられる。しかし、その影響が感じられるのはごく限られた場合だけだろうと、私は想像している」と、同氏は述べている。

Amazonは常に、無料配送以外にも多くの特典をプライム会員に提供しようとしてきた。「同社の今回の試みも、その流れに沿ったものだが、消費者たちがさらに多くの経済的な圧力にさらされ、サブスクリプションを減らそうとしている事実を踏まえたものでもある。当社はネットフリックス(Netflix)のような業者がこの影響を受けているのを目にしている。Amazonは、新しいサービスを追加することでプライムを魅力的にし、人々が会員であることを維持し続けることに期待している」とサンダース氏は述べている。

[原文:Amazon Briefing: Amazon expands Prime benefits to maintain customer loyalty]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Amazon

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