事故で手足を3本失った山田千紘さん(30)は障害等級が最も重度な1級だが、「障害年金」を受給できていない。保険料の納付義務が生じる20歳になった後、定められた期間分を納付していなかったためだ。
「もちろん僕に落ち度がある」という山田さん。代償は大きかった。障害基礎年金の受給額は年額約97万円。障害がある中で何かとお金はかかる。手足を失った絶望に加え、金銭面での不安ものしかかった。山田さんが当時を振り返り、その後前向きになるまでの気持ちの変化を語る。
【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)
病院に来て泣きながら話した母
19歳の時に家庭の事情で大学を中退した後、半年ほどのアルバイト生活を経て、ケーブルテレビの会社に就職しました。20歳になってから8か月後のことです。その就職から2か月後、電車事故に遭って右手と両足を失い、障害者になりました。
20歳になってから就職するまでの8か月間、僕は納めるべき国民年金の保険料を納付していませんでした。当時の僕は目の前の生活をするお金に余裕がなく、年金を軽視していたのかもしれません。国民年金は過去2年までなら後から納付できるということだったので、「正社員として働くようになってからまとめて納めよう」くらいに思っていました。
ところが、いざ働き始めて2か月で交通事故に遭って、厳しい現実に直面しました。
障害年金を受給するには、障害の原因になったケガの初診日前日から数えて2か月前までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間で保険料を納付するか、免除されるかしていないといけません。僕は20歳で被保険者になってから10か月の時に事故に遭ったので、8か月間のうち6か月分を納める必要がある計算になります。でも未納だったから、障害年金は受給できないということでした。
僕は障害等級が最も重度な1級で、もし障害基礎年金を受給できた場合、現在の支給額は年に約97万円です。それが一生受給できません。20歳以上60歳未満なら年金保険料を納付しないといけないので、「20歳になったら払えよ」と言われたらその通りです。もちろん僕に落ち度がありました。
とはいえ受給できないと知った時、ショックは大きかったです。受給できないことを年金事務所に聞いた母親が、病院に来て泣きながら僕に話したのをよく覚えています。リハビリを終えた後、自分でも年金事務所に行って、受給できないことをちゃんと説明してもらいました。