借金を返済できない人の顔写真や個人情報を悪用して脅迫や嫌がらせを繰り返す詐欺ローンアプリが横行している

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現代人の多くがスマートフォンを通じてインターネットにアクセスしている中で、詐欺師もスマートフォン向けのアプリストアでさまざまな詐欺アプリを展開しています。海外メディアのRest of Worldなどが、「約束より少ない金額しか貸さない上に、被害者の個人情報を悪用して脅迫を続けてくる詐欺ローンアプリ」についてまとめています。

Mexican scam loan apps will edit your face onto X-rated photos and send it to your family – Rest of World
https://restofworld.org/2022/mexico-scam-loan-apps/

Mexican Loan Apps, Extortion, and the Google Play Store
https://techpolicy.press/mexican-loan-apps-extortion-and-the-google-play-store/

人口の約半数が非公式の経済システムに組み込まれているというメキシコでは、労働者階級の人々が銀行ローンを組むことはかなり難しいとのこと。その代わり、非公式な金融システムにおける貸し借りが一般化しており、友人や会社の同僚を経由してどこかからお金を借りることが多いそうです。

そんな中、近年はGoogle Playなどのアプリストアからローンアプリをインストールし、少額のローンを組む人も増えていますが、ローンアプリの中には詐欺的なものも多く存在しています。Rest of Worldが接触したマリアさんという女性は、少額のお金が必要になった時にSolPesoというローンアプリをインストールし、お金を借りることにしました。この際、アプリはマリアさんの個人情報や財務データに加え、連絡先を含むスマートフォン内のデータにアクセスすることも求めてきたとのこと。

SolPesoはマリアさんが契約した金額より少ない額しか送金しなかった上に、貸した数日後には契約時の金額と利息を合わせて返済することを求めてきました。マリアさんが返済できないことを知ると、業者はマリアさんに電話や脅迫のメッセージを送ってきたそうです。

結局、マリアさんはSolPesoへの返済を遂行するために別のローンアプリを頼らざるを得なくなり、その後の数週間でRápikrédito・Super Peso・LoanLaLa・Money Flash・iFectivoなどさまざまなローンアプリに手を出したとのこと。新たに手を出したローンアプリの多くも、SolPesoと同様にマリアさんへの嫌がらせを行ったため、時には1日50件以上もの電話やメッセージを受け取ることがあったそうです。脅迫の中には、「マリアさんの顔写真をPhotoshopで加工して泥棒に見せかけた写真を配る」「家族をレイプして殺す」など、さまざまな脅迫が含まれていました。マリアさんは、「これは恐ろしく憂鬱です」「彼らは非常に攻撃的なメッセージを送ってくるので、恐怖で満たされます」と述べています。


Rest of Worldによると、メキシコのサイバー警察署は94のローンアプリを「さらし行為や脅迫」に関連していると特定しており、これらのうち35のアプリはGoogle Playから入手できるとのこと。ロイターのジャーナリストであるダイアナ・バプティスタ氏は、メキシコの金融やデジタルの文化に精通していない人々はプライバシーポリシーを読むことに慣れておらず、危険なアプリを見抜く能力も高くないと指摘。そのため、Googleが運営するGoogle Playでアプリが配布されており、その評価が高ければ、「Google Playがうそをつくはずはない」と簡単に信用してしまうそうです。

マリアさんがインストールしたSolPesoをはじめ、詐欺的なローンアプリの多くはスマートフォンの連絡先などさまざまな情報にアクセスしますが、これは脅迫の範囲を借主以外にも広げるためです。一般的に、詐欺的なローンアプリは手数料などと称して最初に契約した元本の半額程度しか送金せず、さらに貸した数日後に元本と利息を合わせた金額の返済を迫ってきます。もちろん借主のほとんどは返済できず、その場合はマリアさんが経験したような嫌がらせが始まります。

マリアさんに対する嫌がらせはその後もヒートアップし、iFectivoというローンアプリは女性の裸体にマリアさんの顔写真を重ねたフェイク画像を作成し、13歳の娘・いとこ・めい・連絡先に含まれていた17人に送信したとのこと。結局、マリアさんはお金を返済するために売春することを余儀なくされたと述べています。


アプリストアのセキュリティやプライバシー問題を分析する団体・SocialTicのセキュリティ専門家であるPaul Aguilar氏は、「この種の詐欺はユーザーだけでなく周囲の人々にも影響を与えるため、もっと適切に規制するべきです」と指摘。Rest of WorldはGoogleが詐欺的なアプリを削除した前例として、インドの中央銀行であるインド準備銀行が約600もの詐欺的なインスタントクレジットアプリにフラグを立てた後、2021年~2022年にかけてこれらのアプリが削除されると共により厳しいポリシーが設けられた事例を挙げています。

しかし、メキシコの全国金融サービス利用者保護委員会(CONDUSEF)で金融サービス・商品の分析統計ディレクターを務めるJesús Chávez Ugalde氏は、CONDUSEFは登録された金融機関が関与する状況でのみ介入できると主張し、未登録のアプリについてはCONDUSEFの管轄外だとRest of Worldに語っています。この法的ギャップや、メキシコ人の多くが警察を信用していないことにより、メキシコでは詐欺的なローンアプリが横行しているとのこと。

詐欺的ローンアプリ自体への規制は困難であっても、返済を求めて嫌がらせや脅迫を行うことは違法行為に該当するため、メキシコのサイバー警察はこれらのアプリと戦っています。それにもかかわらず、詐欺的ローンアプリの被害に遭う人々は増加傾向にあるとのことで、政府やプラットフォームによる規制、そしてメキシコ人へのデジタル・金融リテラシー教育が求められています。

なお、SNSには詐欺的ローンアプリの被害に遭ったメキシコ人によるグループが存在し、被害者に対策や心構えを共有しているとのこと。極端なものとしては、詐欺的ローンアプリが現実世界まで被害者を追跡しないことに目を付け、「使い捨て携帯電話を入手して架空の個人情報やSNSアカウントでローンを組み、お金を借りるだけ借りて後は無視を決め込む」という詐欺師をだます手法も共有されているそうです。

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