日本にデパートは必要なのか:どの駅も百貨店が主導する開発はない

アゴラ 言論プラットフォーム

皆さんは最近、デパートに行ったことがありますか?行った方でもデパ地下以外のフロアはどうでしょうか?

確かに一年に何度か訪れて、年に数回ぐらい買い物をする機会はあるかもしれません。しかし、案外、デパートの中に入っているニトリやユニクロ、家電量販店、書店といったところで買い物をしていてデパートそのものでは買っていないケースも多いのではないでしょうか?

世の中からデパートが無くなったらどうなるのでしょうか?私は誰も困らないと思います。つまり、社会的存在意義を終えたと考えています。そもそもターミナル駅に隣接したところに巨大な販売面積を持つことで殿様商売をしてきたものの業態変更が出来ず、消費者の動向や社会の変化にも対応せず、テナントへの場所貸しと化し、デパート=不動産業とも思われる状態になっているのは見るに堪えないのです。

日本の百貨店のイメージ Wikipediaより

新宿。私にとっては非常になじみがある駅ですが、小さい頃から新宿のデパートには未だかつて一度も入ったことがありません。理由は簡単です。どこからどうやって入るのかわからないので入る機会がなかった、それだけです。新宿西口はご存知の通り、複雑な作りになっている上に人が常に流れているため、うろうろすると邪魔になるようなところです。

その為、サブナードとかプロムナードのリテールの方が買いやすいということになってしまうのです。言い換えるとデパートはフロアに上がる手間があるのですが、プロムナードは目的地に向かう地下通路沿いにあるのでちょっと見て歩くことがしやすいのです。同様に名古屋の栄は地下街が有名で、私はたまに行くとよそ者であることもあり、珍しい店が多く、ウキウキするのです。

その新宿、小田急百貨店が再開発のため「閉店」し、代わりにハルクに移ったのですが、規模はごくわずかで中途半端。しかも再開発後に百貨店として戻るかは白紙とされます。渋谷の東急東横店も百貨店の役割を終えましたし、道玄坂奥にある本店も23年1月末で閉店となります。本店は駅から遠いこともあり、送迎バスを出すなど苦心していましたが、デパートとして正直、誰をターゲットにしているのかさっぱりわからないピンボケ百貨店でした。

これは何を意味しているかといえば百貨店は一億総中流の時代に家族そろって休日を過ごす場所というイメージから離脱できず、消費者が年層や収入層、好みにより分散化する中、ターゲットマーケティングが出来ず、なんとなく、ブランドごとに陳列してみた、という感じなのです。つまりバブル崩壊とともに百貨店の位置づけは変わらなくてはいけなかったのに30年以上たっても根本的変化ができなかった、それに尽きるのです。

カナダの場合、デパートがショッピングモールに併設されているケースが多いのですが、人の流れはデパートには向きません。私は靴をカナダのデパートで時々購入するのですが、何が嫌かといえば靴売り場が散らかり放題、店員はなかなかつかまらず、サービスはほとんど期待できないのですが、バーゲンをやっている時はアウトレット並みの価格を提示していることもしばしばあるのです。つまり、価格でしか魅力を提示できないともいえます。

池袋西武の行方も混とんとしています。セブン&アイが売却を打ち出したものの買い手との交渉がまとまらず、今だ、新たなニュースが飛び込んできません。個人的には既存不動産の再利用ではなく、建て替えすべきと思います。超高層でリテール、ホテルとレジデンスの組み合わせでよいと思います。特に池袋はサンシャインとメトロポリタンホテルぐらいしか主要ホテルがないので高級ホテルかアパホテルのどちらかだと思いますが、感覚としてはアパが似合う駅だと思います。

池袋西口は既に再開発が先行しており、マルイ跡地には高層オフィスビルの建築準備が進みます。雑然とした西口駅前も東武百貨店を含む大規模再開発で10年ぐらいで一大変身します。結局、どの駅も百貨店が主導する開発はないのです。

デパートはよりターゲットを絞った専門店化に変わっていくことでしょう。但し、中高年層のご婦人の方々の「買い物、ウィンドーショッピング、井戸端会議場」としての需要はあるわけで、そのハートをどうつかむかが今後の百貨店業界の生き残り策ではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年10月25日の記事より転載させていただきました。

タイトルとURLをコピーしました