昆虫が花粉を媒介するように海の甲殻類も藻類の生殖活動を助けていることが明らかに

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ミツバチやチョウなどの昆虫は植物の花粉を媒介する役割を担っており、近年ではミツバチの減少によって植物の受粉に影響が出ることが懸念されています。新たな研究では、生物が植物の生殖活動をサポートするのは陸上に限った話ではなく、海に生息する甲殻類が藻類の生殖活動を助けていることが明らかになりました。

Pollinators of the sea: A discovery of animal-mediated fertilization in seaweed
https://doi.org/10.1126/science.abo6661

Crustaceans help to fertilize seaweeds, study finds
https://phys.org/news/2022-07-crustaceans-fertilize-seaweeds.html

Crustaceans Discovered ‘Pollinating’ Seaweeds in Scientific First
https://www.sciencealert.com/crustaceans-found-pollinating-seaweeds-in-an-ocean-first

陸上植物において昆虫などの花粉媒介者が重要な役割を担っていることは知られていましたが、これまでは海洋動物が海中の藻類の受精を支援することはないと考えられてきました。そのため、動物による花粉の媒介は植物が地上に進出した後、古くても2億5200万年前の中生代にさかのぼる頃に発生したものとみられていたとのこと。

ところが、フランスやチリの国際的研究チームが行った新たな研究により、海洋動物が藻類の受精を媒介していることが発見されました。研究チームが研究対象にしたのは、紅藻の一種でオゴノリ科に属する「Gracilaria gracilis」という藻類と、Idotea balthica(イドテア)という小型甲殻類です。

一般的な海藻は鞭毛(べんもう)を持つ雄性配偶子(精子)が海中を泳ぎ、雌性配偶子(卵子)に到達することで受精します。ところが、紅藻類は泳ぐために必要な鞭毛を欠いているため、精子は海流に乗って漂うことで卵子へと到達します。

研究チームは実験で、オスのGracilaria gracilisの付近でエサを食べていたイドテアの体に精子が付着し、メスの雌性配偶子に精子を移す様子を確認しました。以下は、実際にオスのGracilaria gracilis(左上部)とメスのGracilaria gracilis(右上部)を設置した水槽に複数のイドテアを泳がせた水槽の動画です。イドテアはオスとメスのGracilaria gracilisの周囲を活発に泳ぎ回っており、この体に粘液で覆われた精子が付着するとのこと。

Crustaceans help to fertilize seaweeds, study finds – YouTube
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研究チームによると、イドテアが存在する場合はGracilaria gracilisの受精成功率が20倍も高くなったとのことで、「私たちの研究結果は、生物学的な相互作用が海藻の受精確率を劇的に向上させることを初めて示したものです」と述べています。

イドテアは単に精子を媒介する役目を担っているだけではなく、Gracilaria gracilisをすみかにしたり表面に生息する微生物を食べたりしているそうで、両者はどちらにも利益がある共生状態を維持しているそうです。

以下の画像は、イドテアの体に付着したGracilaria gracilisの精子を蛍光で着色したもの。


今回の研究結果を受けて、中国科学院昆明植物学研究所のJeff Ollerton氏とZong-Xin Ren氏は、動物を介した受粉の概念と歴史が陸上の植物から海中の藻類へと拡大し、これまでの想定よりはるか昔からこの種の相互作用があった可能性を示したと述べています。しかし、Gracilaria gracilisのような紅藻類は約6億5000万年前から存在していた一方、イドテアのような甲殻類は約3億万年前に誕生していたとされることから、それ以前にどうやって繁殖していたのかには謎が残るとのことです。

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