Wi-FiルーターやNASの省電力機能の効果は? 電力不足でも常時オンがオススメ?【イニシャルB】

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 ここ数年、本格的な夏や冬に突入したタイミングで、電力不足による節電が求められることが多くなってきた。

 家庭でも、使わない部屋の照明を消したり、エアコンの温度を調整したりするなどの工夫がなされているが、ルーターやNASなどの機器は、こうした要請にどう対応すればいいのだろうか? むしろ常時オンにしておく必要性についても解説する。

Wi-FiルーターやNASの省電力機能ってどれくらい?

 Wi-FiルーターやNASがどれくらい電力を消費しているか? あまり意識したことがない人の方が多いことだろう。

 もちろん製品によって異なるわけだが、Wi-Fiルーターの消費電力は、以下のように一般的なモデルは15~20Wといったところだ。

Wi-Fiルーターの消費電力の目安

小型の中継機:10W前後
一般的なモデル:15~20W
ハイエンドモデル:30~35W

バッファローのハイエンドモデル「WXR-6000AX12S」の消費電力。最大で35.9W

 もちろん、カタログの値は最大消費電力なので、通信が発生したりインターネットに接続したりと、稼働しているときの電力となり、常にこの電力を消費しているわけではない。例えば、筆者宅にあるWXR-5950AX12は、カタログ上の最大消費電力は37.1Wだが、通常時(数台のクライアントが接続された状態)は13W前後だ。

 一方、NASはHDDを搭載することから、もう少し消費電力が高くなり、以下のようにアイドル時は15W前後、稼働時は30W前後といったところになる。ただし、法人モデルでは、高性能なCPUや電源が搭載されることからもう少し消費電力が高くなり、2~4ベイでも稼働時で85W前後になる場合もある。

NASの消費電力の目安(2~4ベイ)

アイドル時:15W~25W
稼働時:30W~50W
法人モデル稼働時:85W前後

 照明の消費電力は、100W相当のLED電球で15W前後、6畳向けクラスのLEDシーリングライトで30W前後となるので、Wi-Fiルーターは洗面所などのLED電球ほど、NASは部屋のLEDシーリングライトほどと考えると分かりやすいかもしれない。

 しかしながら、Wi-FiルーターやNASは、基本的に24時間365日稼働させるのが当たり前とされており、電源をオフにする機会は滅多にない。また、最近では、電波を遠くまで飛ばすために中継機やメッシュを利用するケースが増えており、家庭内でアクセスポイントが複数台稼働する状況も増えている。

 このため、Wi-FiルーターやNASでも消費電力を抑える工夫をする必要性が問われ始めている。

「使わない時間」を探し出して省電力化する機能はすでに存在

 では、具体的にWi-FiルーターやNASで、どのように消費電力を抑えるのかというと、最も簡単なのは、機器に搭載されている省電力機能を活用することだ。

 一部のWi-FiルーターやNASには省電力機能が搭載されていて、一部の機能を停止したり、スケジュールに従ってWi-Fiの電波を停止したり、電源そのものを自動的にオン/オフしたりすることが可能になっている。

バッファローのWi-Fiルーターに搭載されている省電力機能(画面は「WXR-5950AX12」)。スケジュール設定でモードを指定できる。LED、有線LAN速度、無線LAN機能のオン/オフなどを設定できる

 どの機能が搭載されているかはメーカーや機種によって異なるが(というか、Wi-Fiルーターに関しては、最新機種ではこうした機能があまり搭載されないことの方が多い)、例えば、主な省電力機能は以下のようなものがある。

  • LEDのオン/オフ[効果小]
     本体のLEDを常時オフ、もしくはスケジュールによってオン/オフできる
  • 有線の通信速度を下げる[効果小]
     有線LANの速度を100Mbpsなどに抑える
  • Wi-Fiをオフにする[効果小]
     Wi-Fiをオフにする。スケジュール設定なども可能
  • アイドル時にストレージを停止する[効果中]
     NAS内蔵HDDやWi-FiルーターのUSB共有などで、アイドル時にストレージを一時的に停止する
  • ファンの動作モードを変える[効果小]
     NASの場合はファンの動作モードを低速にすることで消費電力も抑える
  • 電源そのものを停止する[効果大]
     NASの場合はスケジュールによる自動起動・停止が可能

 これらのうち、NASに関してはスケジュール設定による電源のオン/オフが節電には効果的だ。一般的には夜間に停止し、翌朝起動するという使い方が多いと思われるが、さらに細かく設定し、例えば、ちょうど電力需要も上がってくるお昼休みの時間帯に停止するのも手だ。

 ポイントは、自分の生活リズムに合わせて「使わない時間」を割り出すことだ。せっかくのNASなので、使いたいときに停止していては意味がない。睡眠時間、不在時間、休憩時間など、停止しても構わない時間を探し出して、その時間に停止するように設定しておくといい。

SynologyのNASの電源管理機能。指定した時間に電源オン/オフを実行できる

 停止と言っても、待機電力が存在するのでゼロにはならないが、消費電力を1W前後にまで下げることができる。例えば、Synologyの2ベイNAS「DS716+」の場合、以下のような結果となった。

NAS(DS716+)の消費電力

消費電力(W)
アイドル時 12
アクセス時 14
待機時 1

※ストレージは512GBのSSD×2

 このほか、NASに関しては、容量が少なくなることや、コストが上がるデメリットはあるが、HDDをSSDに交換するのも効果的だ。例えば、同じくDS716+の場合、4TB×2のHDDの場合は20W、512GB×2のSSDの場合は12Wとなった。

ストレージ別のNAS(DS716+)の消費電力

消費電力(W)
HDD(4TB×2) 20
SSD(512GB×2) 12

※アイドル時に計測

Wi-Fiルーターの節電機能は効果が小さい

 このように、節電機能を活用するのが簡単だが、Wi-Fiルーター関しては、こうした機能の効果はあまり大きくない。例えば、バッファローのWXR-6000AX12Sで省電力機能を利用した結果が以下だ。

 Wi-Fiをオフにして接続できない状態にしても、削減される電力は2Wほどとわずかだ。もちろん、2Wでも削減することは重要とも言えるが、機能が制限される割に削減幅は少ない。

Wi-Fiルーター(WXR-6000AX12)の消費電力

消費電力(W)
アイドル時 13
省電力機能オン 12

※LEDオフ、有線低速化、Wi-Fiオフで計測

起動時(アイドル時)

省電力オン(LEDオフ、有線低速、Wi-Fiオフ)

Wi-Fiが停止すると夜間の自動更新ができない

 このようにWi-Fiルーターもわずかながら電力を節約することはできるが、Wi-Fiルーターで注意しなければならないのは、停止中にアップデートなどが実施できなくなることだ。

 最近では、IoT機器の脆弱性がセキュリティ被害につながることが珍しくない。このため、家電やセンサーなど多くの機器がファームウェアの自動更新機能を搭載しており、夜間などに自動的にアップデートするように構成されている。

ファームウェアのアップデートが夜間に自動的に実行される機器も多いので要注意

 前掲の結果のように、省電力機能をオンにしても有線LANがオンになっていれば、Wi-Fiルーターそのもののファームウェア、もしくは有線で接続されている機器の自動更新は実行される。

 しかし、Wi-Fiが停止してしまっていると、Wi-Fiで接続されている家電やセンサー類などのアップデートが実行できない。このリスクが非常に大きいわけだ。

 また、仮に機器が有線で接続されていて、自動アップデートを実行できても、省電力機能によって速度が抑えられると、ダウンロードに時間がかかってしまう。稼働時間が延びてしまっては、結果的に節電へつながらない可能性すらある。

 先に、最近のWi-Fiルーターでは省電力機能自体があまり搭載されなくなりつつあると述べたが、その背景には、こうした家庭内インフラとして停止が許されないという事情もありそうだ。

NASは節電対策しておくべき

 以上、Wi-FiルーターやNASの省電力について検証してみた。NASはスケジュール機能によって停止する効果が大きいが、Wi-Fiルーターに関しては、停止しても効果が低いだけでなく、むしろデメリットの方が大きいと言えそうだ。夜間のアップデートなども考慮し、こうした節電機能を活用するといいだろう。

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