書き出し小説大賞第241回秀作発表

踏まれて目を覚ますと、私は韻になっていた。

suzukishika

公園が夏の色になった。

もんぜん

君は誰にとっても遠い親戚だった。

ミミズグチュグチュ

妹はプリンが嫌い。甘い茶碗蒸しみたいだからって。私は茶碗蒸しが嫌い。しょっぱいプリンみたいで。

あの

70億人の眉間に皺が寄った。

堺くん

時間がない時は月の光だけ浴びて寝ます。

いちもくれん

はっけよーい…デンジャラス！

いずも

読経に蝉時雨が混ざって、父の背が丸い。

タカタカコッタ

手渡された賞状はすでに筒状に丸みを帯びていた。

節度亜図夢

海広いとはしゃぐ君。見上げた空が思ったより広くて、水を差すなよと呟いた。

カズタカ

二度寝中の夢くらい冗談めいてる。

井沢

この日陰を出たら、この日陰の良さが分かるだろうか。

キキ

「号外号外」と叫び街中を走る。新聞はない。

ベランダ

心の一切こもらない「ごめんね」をあと何回この人に言うのかな。

ヒライス

夜道を歩きながら考える。私は、もう自分のためだけに生きてはいけなくなってしまったんだな。

小野芋子

女の形に空間がない。

正夢の3人目

そして、理科室のホルマリン漬けがまたひとつ増えた。

えむけい

「わたし」が溶けゆく、あなたの胃酸の中。

さくさく

産まれたばかりの赤ん坊の、思い出し笑いが止まらない。

いちもくれん

黒く痩せた向日葵が並んで斬首を待っている。

xissa

知らない人が、わたしの墓に手を合わせている。

昼行灯

話し方だけ怖かった。

g-udon

天井裏には、赤鉛筆で作られた小さな鳥居があった。

住民パワー

吊り革に握られる。

みよおぶ

這い出て来たのはセミだけではないようだった。

寂寥

ビンゴカードの開いた穴に蛹が詰まっている。

はらけん

クレイマーは僕だったのか。

いそうろう

マグロじゃない解体ショーが始まる。

人馬一体勘

アンパンマンが子供を見て笑う本当の理由を知っているか。

藤谷コール

古い日記を開くと、そこには自分の未来が書かれていた。

七世

全然君が落ちてこないからさ、心配して来ちゃったよ。

モンゴノグノム

実家に帰ると母が真っ青な顔で出迎えた。ああ、やっぱり僕は死んだんだ。

ぴすとる

目的地に誘導したいカーナビと崖から突き落としたい悪霊の声が喧嘩を始めた。

あの

「ピザって10回言って」「ピザピザピザピザ…」「じゃあ、お前の後ろに立ってるのは？」

ぼる予備校

細くて硬いゴールテープは、１位の私を真っ二つに切り裂いた。

ハリハリポッタ

枕元から聞こえる妙なリズムは、父が一度も出来なかったスキップと同じ音だった。

不璽王

母さんのから揚げはおいしくて、母さんの味がした。作ってくれてありがとう、父さん。

セクシーバンクシー

このシーン見たことある。また僕が横断歩道に横たわっている。

ビールおかわり