ゲーミングWi-Fiルーターでゲーム環境をパワーアップ! 第2回:スマホのWi-Fiで快適なゲームには5GHz帯! ただしDFSに注意【スッキリ分かるWi-Fiルーター(ASUS編)】

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 ゲーミングWi-Fiルーターについて解説する本連載。第2回はWi-Fiの電波をより安定して受けるためのコツを解説する。ポイントは、「Wi-Fiルーターの設置場所」、「5GHz帯の利用」、「DFS」の3点だ。

 ゲーミングでWi-Fiの話をすると、必ず「有線でやれ」というコメントを多数いただく。通信の品質を考えると、それはその通りだ。有線が使えるPCや据え置きのゲーム機であれば、有線LANで接続するのがいいだろう。

 しかし、Wi-Fiしか接続手段がないスマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機などでも、今やオンラインゲームは当たり前にプレーされている。今回は、これを前提として話を進めていきたい。

今回用いたASUSのゲーミングWi-Fiルーター「TUF-AX3000」

Wi-Fiルーターの設置場所で安定性向上

 当たり前の話だが、Wi-FiルーターとWi-Fi子機の間は、電波で通信をやり取りしている。電波は文字通り『波』であり、空中に電気エネルギーの波を起こして、ほぼ光と同じ速さで端末に届く。

 波の特性として、遠くへ行けば行くほど弱くなり、最後は消えてしまう。壁があれば基本的には跳ね返るが、素材によっては弱まりつつも通り抜けるものもある。

 Wi-Fi通信を安定かつ高速で使うには、この波がより強く伝わる場所で使うことが望ましい。つまり、Wi-FiルーターとWi-Fi子機の距離がなるべく近く、間に壁などの遮へい物がないこと。端末のある位置からWi-Fiルーターの姿が見える状態が理想だ。

 Wi-Fiルーターは、インターネット回線用モデムのそばなどへ設置している方も多いだろう。モデムの位置は電話線や光ファイバーの引き込み箇所や長さに左右され、自由に動かせる範囲は限られていることが多い。このため、Wi-Fiルーターの設置場所が理想的なことは稀だ。

 ならば、モデムからLANケーブルを延ばしてWi-Fiルーターの位置を動かすことになる。位置を後から変えても構わないので、電波にとって理想的で、なるべく使いやすい位置を考えた上、必要な長さのLANケーブルを揃えてやればいい。

 そして、遮へい物をなるべく避けるには、高い位置へと設置するのが手っ取り早い。家具や、人体などに遮られにくく、部屋のどの場所からも見えやすいからだ。ただし、位置の高さばかりを意識すると、有線LANケーブルの取り回しが悪くなるため悩ましい。

 ゲーミングを意識すると、Wi-Fiルーターは少しでも見通しのいい場所に置きたいもの。妥協点としては、戸棚の中や床面には置いたりせず、ほかの家具で遮られない程度の高さで、ゲームプレー時によくいる場所から見える場所へ置くのがいい。

 視界に入りやすいゲーミングWi-Fiルーターに凝った外観のものが多いのは、こういった理由もあるのだ。

TUF-AX3000やTUF-AX5400をはじめ、ASUS製ルーターは外見も特徴的。目に入る場所に置くなら、見た目にもこだわりたい

5GHz帯の利用で電子レンジ問題を回避

 次は5GHz帯の話。こちらも先と同様、波の話だ。

 Wi-Fiでよく言われるのが、電子レンジなどの機器との干渉だ。キッチンで電子レンジを動かした途端、リビングにいる子どもから「ゲームの通信が切れた!」と悲鳴が上がる。電子レンジを使うと、Wi-Fi通信が途切れてしまう事象だ。

 電子レンジは飲食物に強力な電波を浴びせることで温める装置で、使われる電波の出力はWi-Fiよりもはるかに強い。波として考えれば、ものすごく大きい。

 電子レンジで使われる電波は、2.4GHz帯という周波数だ。周波数というのは、波の凸凹がどのくらいの頻度で繰り返されているかを示す数で、2.4GHzであれば1秒間に24億回の波が起こっているというわけだ。多すぎて想像しにくい数字だが、光の速さの世界の話なので、ひとまずそういうものだと思っておいてもらえればいい。

 問題は、この2.4GHz帯はWi-Fiでも使われていること。Wi-Fiに使われる微弱な電波に、電子レンジで使われる強力な電波がぶつかると、Wi-Fiの電波はかき消されてしまう。当然ながら電子レンジも外に電波が漏れないようになっているが、完全に閉じ込めることは難しく、Wi-Fiには微量の漏れが致命的になってしまう。

 このため、電子レンジを使用すると、その近辺にあるWi-Fi通信は途切れたり不安定になったりする。電子レンジの機種や設置場所によって程度の差はあるだろうが、2.4GHz帯を使っている限り、影響は避けられないと思った方がいい。

 この問題を回避するには、5GHz帯を使うことだ。2.4GHzと5GHzでは周波数が異なるため、電子レンジを使って5GHz帯での通信には影響が出ない。以下の記事で実施した電子レンジを使ったテストでは、2.4GHz帯では通信速度の低下や通信切断が見られたが、5GHz帯には影響がないことを確認している。

 Wi-Fiの規格上、5GHz帯は2.4GHz帯に比べて通信速度が速いというメリットがある。電子レンジの問題を抜きにしても、5GHz帯に対応する機器では、5GHz帯を積極的に利用すべきだ。

 唯一の注意点としては、5GHz帯は2.4GHz帯に比べて電波が遠くまで飛びにくいことだ。2.4GHz帯では電波が届いたのに、5GHz帯では届かないこともあり得る。その際は前述のようにWi-Fiルーターの設置位置を変えたり、中継機やメッシュWi-Fiを導入するなどの対応を考えたい。

 周波数帯の設定について、TUF-AX3000を例に説明すれば、通信時に5GHz帯を指定するには、設定で2.4GHz帯と5GHz帯の接続を利用状況に応じてWi-Fiルーターが切り替える「バンドステアリング」の機能をオフにする必要がある。

 バンドステアリングは、ASUSのルーターでは「スマートコネクト」と呼ばれている。Wi-Fi接続に必要なSSIDが1つだけで分かりやすく、遠距離では自動で2.4GHz帯で接続してくれるなど便利な機能だが、5GHz帯に固定して使うには、機能をオフにせねばならない。

「ASUS Router」アプリの初期設定画面。Wi-Fiネットワークを作成する際、「2.4GHzと5GHzを個別に設定する」がオフになっている(バンドステアリングが有効な状態)

「2.4GHzと5GHzを個別に設定する」をオンにすると、2.4GHz帯と5GHz帯のSSIDとパスワードをそれぞれ求められる

2.4GHz帯のSSIDを入力すると、5GHz帯にも自動で「_5G」を追加したSSIDが設定され、パスワードも共通のものが入る。いずれも個別に変更可能だ

 この機能をオフにするには、Wi-Fi設定で「2.4GHzと5GHzを個別に設定する」のチェックをオンにする。その上で2.4GHz帯と5GHz帯にそれぞれ個別のSSIDとパスワードを設定する必要がある。

 「ASUS Router」アプリで設定した場合、2.4GHz帯で設定したSSIDに「_5G」という文字が追加されたSSIDが5GHz帯に割り振られる。SSIDは好みのものに変更しても構わない。またパスワードは2.4GHz帯と5GHz帯で共通のものを使っても構わないし、個別に設定してもいい。

 設定が済んだら、子機側のWi-Fiネットワーク一覧に、先ほどルーターに設定した5GHz帯のSSIDが表示されるはずだ。これを選んでパスワードを入力すれば、5GHz帯だけで接続されるので、電子レンジ問題は解決だ。

DFSによる5GHz帯の切断をW52で回避

 5GHz帯を使っていれば、何も心配はない……といいのだが、実は厄介な問題が潜んでいる。それが「DFS(Dynamic Frequency Selection)」だ。

 5GHz帯は、気象レーダーや航空機レーダーなどのレーダー波としても使用されている。こうしたレーダー波は重要度が高く、Wi-Fiの電波が邪魔をしてはいけない。そこで国内で使われるWi-Fiルーターは、レーダー波を感知すると、その電波帯の使用を30分間停止し、レーダー波への悪影響を防ぐ機能を備えている。

 もし、停止された周波数を使用しているWi-Fi子機があれば、別の周波数帯へと切り替える必要がある。この機能がDFSだ。日本国内で5GHz帯を利用する上では必須の機能なのだが、切り替えによって接続はいったん途切れてしまう。そして、レーダー波がいつ飛んでくるのかは予想できないため、ユーザーからは「急に5GHz帯の接続が切れた」ように見える。

 Wi-Fiの電波が途切れる原因は必ずしもDFSだけではないが、DFSによる場合があるあるのも確かだ。オンラインゲーム中の回線切断は、たとえ一瞬でも絶望的な結果を生みやすいだけに、原因が分かっているなら対策を取っておきたい。

 そして、その方法はただ1つ、W52を使うことだ。Wi-Fiで使用される5GHz帯には、W52、W53、W56という3つの周波数帯に大別できるが、このうちレーダー波で使用されるのはW53とW56で、レーダー波で使われていないW52ではDFSは発生しない。

 つまり、Wi-Fiルーター側で、5GHz帯で使用する周波数帯をW52に固定しておけば、DFSの影響は受けなくなる。単純明快な対応策だ。

 ただし、W52のみを使用するデメリットに、帯域幅は80MHzまでしか使えなくなることが挙げられる。Wi-Fi 6では現在、帯域幅を160MHzとすれば最大2402Mbpsでの通信が可能だが、このためにはW52だけでは足りず、W53やW56の周波数帯を併用する必要がある。この場合には、DFSが発生した際に回線の切断が起こり得る。

 DFSによる切断の回避を重視するなら、通信速度は80MHz幅の最大1201Mbpsで我慢しなければならない。もっとも、有線接続が1Gbpsなのであれば、160MHz幅の最大2402Mbpsはオーバースペックとも言えるので、環境によっては、それほど不満を感じることはないかもしれない。

ASUS製Wi-FiルーターのIPアドレスは、「ASUS Router」のメイン画面にある「LAN IP」の項目に書かれている

 そして、TUF-AX3000にはDFSを回避するための設定が用意されている。ただ、スマートフォン向けの「ASUS Router」アプリには設定項目が見当たらないが、ウェブブラウザーからWi-FiルーターのIPアドレス(「ASUS Router」で確認できる「LAN IP」の値)を入力して、設定画面にログインすれば設定が行える。

 左のメニューから[ワイヤレス]を選んで[全般]タブを開き、[バンド]で[5GHz]を選択し、チャンネル帯域の[160MHzを有効化]のチェックを外す(最初から外れていればそのままでいい)。続いて[チャンネル]の項目で[DFSを含むチャンネルの自動選択]のチェックを外す。

[ワイヤレス]の[全般]画面。初期設定では160MHzが有効で、DFSを含むチャンネルも選択することになっている

[160MHzを有効化]と[DFSを含むチャンネルの自動選択]のチェックを外す。これでDFS問題を回避できる

手動設定するなら、[160MHzを有効化]のチェックを外し、[チャンネル]を[36]にする

 ちなみにこのDFS回避設定は、ASUSの公式ウェブサイトにあるFAQにも説明がある。「TUF-AX3000」のみならず、ASUS製Wi-Fiルーターなら、この設定がおおむね使えるはずだ。

 DFS回避の設定がないWi-Fiルーターでは、5GHz帯で使用するチャンネルをW52または36chとし、使用する帯域幅を80MHz以下にする。TUF-AX3000であえて手動設定するなら、チャンネル帯域の項目にある[160MHzを有効化]のチェックを外し、[チャンネル]の項目で[36]を選ぼう。

 動作や設定項目はメーカーや製品によって異なるので、この通りにすれば絶対にDFSの影響を受けないとは言い切れない。可能な範囲での対応方法として、理解していただければ幸いだ。

「Wi-Fiはつながって当たり前」ではない

 こうして見ていくと、Wi-Fiは意外と切断される要因があることに気付くはず。家にWi-Fiルーターを設置したから大丈夫だと思っていたら、いつの間にかWi-Fiが切れていて、携帯電話のパケット通信で大容量ダウンロードを仕掛けてしまっていた……ということもあり得る。

 家にWi-Fiルーターがすでにあるのなら、適切に使用してより安定したWi-Fi環境を実現したいものだ。「うちは大丈夫」とか「切断が気になったことはない」という方も、Wi-Fiルーターの設定を見直してみてはいかがだろうか。

(協力:ASUS JAPAN株式会社)

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