新型コロナオミクロン株「BA.4」「BA.5」は過去の感染からの免疫で防げるのか?

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新型コロナウイルスオミクロン株の亜型である「BA.4」と「BA.5」は、以前のどの亜型よりも人の免疫防御をすり抜けられることが知られており、日本の新規感染は2022年8月までにほぼ全てこれらの亜型に置き換えられるとされています。最近の研究により、新型コロナウイルスのアルファ株やベータ株などにかかっていると「BA.4/5」への再感染からある程度保護されることや、オミクロン株に感染したことがあればより強力な保護効果が得られることが分かりました。

Prior Omicron infection protects against BA.4 and BA.5 variants
https://doi.org/10.1038/d41586-022-01950-2


カタールの研究機関・Weill Cornell Medicine-Qatarの感染症学者であるLaith Abu-Raddad氏らは、過去の感染歴が「BA.4」と「BA.5」に対してどの程度の保護効果を持つのかを調べるため、カタールでこれらの亜型が確認された2022年5月7日から7月4日までの感染記録と患者らの過去の感染歴を調べる研究を行いました。

研究チームがデータを分析した結果、「オミクロン株より前の変異株」への感染が症候性のBA.4/5感染に対してもたらす有効性は15.1%、症状の有無を問わない場合は28.3%でした。また、「オミクロン株」の感染歴が症候性のBA.4/5感染に対してもたらす有効性は76.1%、症状の有無を問わない場合は79.7%でした。

東京大学の佐藤佳氏は、Natureの取材に対して「これはいい研究です」とコメントした上で、最初の感染と2回目の感染の間の時間が結果に影響を与える可能性を指摘しました。アルファ株やベータ株といった初期の変異株は、2021年後半に出現したばかりのオミクロン株よりも長く存在しています。いくつかの研究で新型コロナウイルスに対する自然免疫力が時間とともに低下することが示されていることから、最初の感染から2回目の感染までの時間の長さが有効性の差となって表れている可能性があります。

また、アフリカ健康研究所のウイルス学者であるAlex Sigal氏も、「最初の感染からの時間的な間隔はオミクロン株の方がはるかに短いので、公平な比較とは言いがたいものがあります」と述べました。Sigal氏はまた、研究対象となった人たちが感染したのはワクチン接種の前か後も重要ですが、今回の研究には加味されていないことを指摘しています。


Abu-Raddad氏によると、そもそもこの研究の目的は特定の変異株に対する自然免疫の有効性を調べることではなく、最も再感染しやすい人はどんな人かを特定することにあったとのこと。研究チームはワクチン接種の有無を調整した分析も行っていますが、その結果は上記の結論と一致していたそうです。

こうした点を踏まえて、Sigal氏は今回得られた知見について「オミクロン株への感染によって得られる免疫は、確かに他のオミクロン株の亜型からある程度身を守ることにつながります」と話しました。一方佐藤氏は、「新型コロナウイルス感染症はどこにでもあります。簡単に新しい変異種に進化することができます」と述べて警鐘を鳴らしました。

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2022年07月27日 06時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1l_ks

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