今年もすごい文房具見放題の夏が来たよ!
お待たせ!文房具の!夏フェスが!やってきたぞー!(強めのエコー)
というわけで今年もISOT(国際文具・紙製品展)2022が開催されました。7月6~8日の3Days、in 東京ビッグサイト東ホール。
正直なところ、以前と比べるともうかなり規模が縮小しちゃってるんですが…それでも注目の最新文房具を探すなら、足を運ばないわけにはいくまいって感じ。
そういうことで、今年もなんかいろいろ紹介していくぜオー!
ISOTとはなにか? という年に一度の説明です
改めて説明しておくと、毎年7月に開催される文房具と紙製品の展示会が、ISOTこと“国際文具・紙製品展”である。ちなみに今年で33回目の開催。
基本的には、その年の秋冬以降に発売される文房具の新製品を並べて「こんなの出ますけど、どうすか?」と文房具の卸や小売業者にアピールするイベントなので、一般人は基本的に立ち入り禁止!
…と言いつつ、サイトから事前登録しておけば何の問題もなく入れちゃうんだけど。(なので、興味のある人は来年ぜひどうぞ)
ちなみに昨年はコロナ禍やら東京オリンピックやらがあったため、海外ブースがゼロという寂しい状況だった。
今年は中国・韓国・ベトナムといった海外勢も復帰したため、昨年よりはやや賑わってたかなー、という印象である。
ISOT最カワ大賞は昭和レトロ文具シリーズ
文房具は「機能性!便利!効率化!」という辺りが大事なんだけど、とはいえどっこい、かわいさだって重要だ。
ということでまず紹介したいのが、ISOT2022における最カワ大賞間違いなしのファンシー文具「タイムスリッぷ」シリーズ(エポックケミカル)である。
テーマは「昭和レトロ」ということで、とくにアラフォー以降の世代には刺さりまくるビジュアル揃い。
ペン後端にハート型のロケットチャームがついてるシャーペンは「こういうやつ、自宅のペン立てにささってたわ!」と声に出して突っ込むレベルの懐かしさである。
中でも特筆すべきは、このプラケースに入ったカードメモ…というかカセットテープケースだろう。
これ、数十年前に実際にカセットテープケースを生産していた本物の金型を転用して作られたものなのだ。
なんせエポックケミカルというメーカー、実はプラスチックの射出成形が本業の会社である。昭和時代はカセットテープのケースを作りまくっていたとのこと。
なので、ケース金型のデッドストックが社内に転がっており、それをまんま転用したという次第(リールのゆるみ止めなどのパーツは省いてある)。
ちなみに金型は見つけた時点で錆びまくってボロボロだったため、もう増産は難しいという話も。
カセットテープメモが気になる人は、見つけたら即ゲットしておこう。
塗り終わるまで数ヶ月!? 7mの超ロング塗り絵
広島県の印刷会社 新生が出展していたのが、世界最大級という全長7mのロング塗り絵「ぬっテコ!」だ。
そもそも「7mの塗り絵」ってどういう意味だ?と思ったけど、実物を見たら疑問を差し挟むスキもなく、ただ単に横幅が7mある塗り絵だった。
ちなみに上写真のは「不思議の国のアリス」のお話を塗り絵にしたもので、ウサギを追いかけて穴に落ちるところから女王の裁判でなんやかんやあって目を覚ますまでが絵巻物のように続いている。
そんな無茶なボリュームに加えて、絵柄も大人が繊細に塗る用に細かくなっているため、これを塗りきろうとしたらかなりの労力が必要になりそうだ。
新生ブースの方いわく「仕事の合間にちょいちょい塗ってたんですが、けっきょく7ヶ月かかりました」とのことで、単品のホビーとしてはかなり遊び応えがあるんじゃないか。
他にも7mで都市の観光スポットを巡れるシリーズや、鉄道の沿線風景を描くシリーズなどがあるんだけど、とにかく元絵作りが大変で、新たに描いてくれる人を探すのも一苦労とのこと。
うーん、そりゃそうだろうな。7mだし。
九谷焼はマステやカードになっても美しい
印刷会社の文房具でもうひとつ興味深かったのが、金沢市の印刷会社nakabiが展開する文房具ブランド「KASHIKO」だ。
こちらは金沢の名産品である磁器の九谷焼をモチーフにした絵柄入りのメッセージカードやマスキングテープ、ペーパークリップである。
そしてこのデザイン、実際に九谷焼の絵付けをしている作家さんの手によるものなのだ。
九谷焼の作家モノなんて、「へー、きれいだなー」とは思っても、お値段的になかなか気軽には買いづらい。飾るにしても場所を取るし。
だったらそれをカードぐらいの気軽に使えるものに印刷しちゃえばいいじゃん?というのは、なるほど盲点だった。「え、それで良かったの?」みたいな気もするけど。
なにより、こういった紙製品きっかけで、絵付けした作家さんに興味をもつ人もいるんじゃないだろうか。
「文房具と伝統工芸のコラボ」ってここ10年ぐらいでわりと増えてきたムーブメントなんだけど、特にこれはかなり良いアイデアだと思う。
なによりすごいきれいだし。
今年のISOTはホワイトボードの展示会だったかも①
……と言い切っちゃうのもアレだけど、いやでも会場あちこち、妙にホワイトボードが多かったような気がするのである。なんかブーム来てるのか、ホワイトボード。
実際、ISOT初日に発表される業界最大のアワード「日本文具大賞」でデザイン部門グランプリに輝いたwemo「paper flip board」も、ホワイトボードだし。
ホワイトボードにしてはちょっと珍しい正方形フォルムは、web会議で自分の顔とボードが一緒に写り込んだときに、バランスが取れるように作られているそうだ。
あと、ダンボールにフィルムコートして作られているので、サイズ感と比べてめちゃくちゃ軽い! 96gしかないので、web会議でずっと手に持ってても疲れにくいのである。
もうひとつのポイントが「とにかくめちゃ消える」ということ。
ホワイトボード用マーカーのインクは、筆跡が塗膜となってボード表面に残るので、こすって塗膜を取れば消せる。これがホワイトボードの仕組みだ。
しかしこの塗膜、時間が経つとボードに定着してしまい、取れにくくなってしまうことも多い。だいたい48時間も経つと、消すのに一苦労するほど。
ところが「paper flip board」は、表面の特殊コーティングによってインク塗膜の定着を防ぎ、96時間経った筆跡もスルーッと消せるようになっている。
体感的には、ホーロータイプのボード(業務用に多い高級なホワイトボード)に近い消し性能で、これはかなり優秀だと思う。
今年のISOTはホワイトボードの展示会だったかも②
もうひとつ注目のホワイトボードが、機能性ホワイトボード「WIPE」(第一合成)だ。
もともとは昨年にクラウドファンディングで展開した製品(達成率1000%超)なんだけど、いよいよもうすぐ一般発売も開始予定だそう。
こちらもポイントは「消える」という部分。
といっても重要なのはボードそのものではなく、表面にかかっているカバーの部分である。
例えばボードに書いた内容を全消ししたい場合、いちいちボードイレイザーで全域をゴシゴシこするのは面倒くさい。
なので、ボードにカバーをかぶせて、上から軽く抑えてザザーッと拭うと……この通り。あっという間にボード面がリセットされるのである。
カバーの裏面がフェルトになっているので、つまりこれが巨大なイレイザーとして機能するという仕組み。
なるほど、カバー全体で一気に拭き取れば、そりゃあっという間に消えるのは当たり前だ。これはなかなか面白い。
ちなみにカバー裏がインクのカスで汚れてきたときは、掃除機で軽く吸うか、パンパンと手で払ってやればキレイになるそうだ。
学校に持って行ける“匂わせ”系キャラクター鉛筆
お子さんのいる方ならご存知かもしれないが、実は昨今、小学校に持って行ける鉛筆に関して、制限がかなり厳しくなっている。
例えば軸にアニメなどのキャラクター絵が入ってるなどは言語道断。ワンポイントで動物の絵が入ってる程度でも規制される場合があるとかで、うーん、今の子どもは大変だなー、と思ってしまう。
もちろん、学校側からしても「鉛筆の柄に気を取られて勉強に集中できないから」とか「友達同士でやり取りしてトラブルになる可能性がある」など禁止する理由はあるので、それはそれでごもっともな感じなんだけど。
とは言え、子どもが欲しがるのはやはり人気のキャラもの。文房具メーカーとしても、売れ筋を逃したくないという気持ちはあるだろう。
そこでアイボール鉛筆が提案するのが、“匂わせ”系キャラクター鉛筆である。
直接的にキャラクターは入ってないけど「まぁホラ分かんだろ?アレだよアレ」と言わんばかりの柄展開。完全に匂わせである。
これはさすがに、なるほど、そういうグレーゾーンで来たか!とヒザを打ってしまった。校則の抜け道を突く裏ワザだな。あとまぁライセンス的な部分でもグレーゾーンかも。
書き味が危険なほどクセになるボールペン
冒頭でも述べたとおり、一昨年・昨年とコロナ禍で参加できなかった海外ブースが復活!というのが、今ISOTでのおめでたいトピックだ。
日本とは発想の方向性が違ったり、問題の解決法にお国柄のようなものが垣間見えたりするので、海外の最新文房具も見逃せないのである。
そんな海外勢の中でひときわ賑わっていたのが、韓国ゼロジーテク社のブース。
展示製品は、ペン先が鳥のクチバシかコンコルドのようにグニッと曲がっている特殊ボールペン「ZERO G ball」である。
油性ボールペンは、ペン先の小さなボールを転がすことでインクが紙に付着して書ける構造だ。しかし、ペン自体が紙に対して寝る…というか角度が浅くなると、ボールが引っかかって筆記不良が起きやすくなる。
ところが「ZERO G ball」であれば、かなり寝かせてペン軸を握っても、曲がったペン先がしっかり角度をつけて接地してくれる。つまり、どう握ってもスルスルサラサラと書けてしまうというわけだ。
……というようなアピールを片言の日本語で話しているのが、俺が勝手に「ゼロジーおじさん」と名付けた男性である。
ゼロジーおじさん、たぶん同社の代表だと思うんだけど、このアピールがちょっと不穏。
「このペンね、一度書くと手放せなくなります。なのでこれ、麻薬ペンと言われてますね」
「この書きやすさはクセになるでしょ。ヒロポンペンと呼ぶ人もいますよ」
うーん、誰かゼロジーおじさんに「それはダメなネーミングじゃないかな」って言ってあげるべきかも。
アートペンはゴッホのタッチもペン軸で再現
ラストはISOTじゃなくて、ビックサイト内で同時開催だった「サステナブルグッズEXPO」で見つけたかっこいいペンを紹介したい。
森林認証木材の木軸+プラ製リフィルのリサイクル、というサステナブルなボールペンで話題のPENONの新製品「ART PEN」は、六角軸にUVプリントで名画を再現する、というコンセプト。
フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」やら、ロートレックの「ディヴァン・ジャポネ」、国芳の「猫飼好五十三疋」など、お馴染み過ぎるぐらいの絵が、かなりの再現度でプリントされている。
なによりすごいのが、油彩のシリーズ。例えばゴッホの「星月夜」がコレなんだけど…。ゴッホのあのグリグリという強烈なタッチが、ペン軸に立体的に再現されているではないか。おそらく、絵を3Dスキャンしたデータを元に再現してるんだと思う。
もちろん今までにも「名画を印刷したボールペン」って普通にあったけど、それにしたってこのクオリティはちょっとありえないぞ。
ちなみにPENONの人に、「ART PEN」を作る際の苦労話をいろいろ聞かせてもらったんだけど、ちょっと生々しすぎて書けないレベルだった。
おそらくミュージアムショップなんかに並ぶと、爆売れ間違いなしだと思う。
今年の秋には発売予定とのことで、見つけたらまずは手にとって見てほしい。マジで感心するから。
うーん、一昔前と比べるとさすがに寂しくなった感は否めないが、それでも、ちょっと見て回るだけで気になる文房具が山ほど見つかるわけで。やはりISOT、見逃せない。
来年ももちろん行きますよ。
毎年ISOTで密かに楽しみにしているのが、大阪シーリング印刷のサンプル出展。
ここは印刷会社なので、直接的な商品ではなくて「ウチならOEMでこういうのが作れますんで、ご相談ください」というサンプルを展示しているのである。
で、それがなんか常に「どういう発想?」と疑問に感じるものばかり。
今年のOEMサンプルは、レスラー型のふせんが注目である。これ、どこの企業がOEMで作るだろうと想定して作ったの?