コンテンツ制作を インハウス化 するD2Cブランド、その狙い:「チャネルやオーディエンスの特性に合わせて情報発信したい」

DIGIDAY

昨秋、D2Cのシェービングブランドとして知られるハリーズ(Harry’s)は、社内にスタジオを設置し、常勤のフォトグラファーを雇用するなど、社内機能の強化を図った。その理由は、オーガニックソーシャルのコンテンツ制作に費やす時間が増えたからだ。同社は現在、チャネルの特性に合わせてコンテンツを設計している。すべてのチャネルに画一的なコンテンツを配信する代わりに、TikTokにはTikTokにふさわしいコンテンツを、インスタグラムにはインスタグラムに適したコンテンツを投稿している。

ハリーズでクリエイティブとコミュニケーションの責任者を務めるマリナ・キャシュダン氏によると、コンテンツ制作のインハウス化により、「機動性が向上し、コスト削減と品質向上を実現する一方、反復的、繰り返し型のコンテンツ制作も可能になった」という。「すべてのチャネルに同じ商品画像を貼りつけるのではなく、チャネルやオーディエンスに合わせたコンテンツを発信するのが目的だ」。

社内の制作チームは、プロジェクトマネジャー、プロダクション責任者、フォトグラファー、コピーライター、デザイナー、アートディレクターらを揃えたクリエイティブ担当の13人と、コミュニケーション担当の5人で構成される。ハリーズは2012年の創業当初から自前の制作チームを持っている。基本的には、このチームが商品パッケージからオーガニックソーシャル、パートナーシップ、さらにはデジタルマーケティングのコンテンツまで、各種の制作作業を担当するが、必要に応じてエージェンシーやフリーランスを活用することもあるという。

「抜本的かつ目に見える変化」がもたらされた

自前のスタジオを設置して、社内の制作チームにテコ入れした結果、ハリーズには「抜本的かつ目に見える変化」がもたらされたとキャシュダン氏は話す。機動性が向上し、最近行われたパッケージのリニューアルや各種のイノベーションでも、その力量を発揮したという。「社内スタジオのおかげで、アートディレクションのプロセスを反復的に運用できるようになった。ウェブサイトやソーシャル向けにカスタムのコンテンツを制作することも可能になった。どのチャネルにも同じ商品画像を投稿するのではなく、チャネルやオーディエンスの特性に合わせて情報発信したいと考えている」。

ハリーズはこの1年半、ソーシャルプラットフォームに自然となじむオーガニックコンテンツの投稿に注力してきた。その必要性について、キャシュダン氏は「多くの消費者がまっさきにインスタグラムを見に行くから」と説明している。「ウェブサイトよりも、ブランドの個性や価値を表現しやすいというメリットもある」。

スタジオ新設の費用について、ハリーズは具体的な数字を明らかにしていない。オーガニックコンテンツの制作費やメディア予算についても非公開だ。その一方で、「オーガニックソーシャルへの投資を増やしてはいるが、ペイドチャネルへの投資をやめてしまったわけではない」とキャシュダン氏は述べている。しかも、「ペイドからオーガニックへ予算を移し替えているわけでもない」という。

カンター(Kantar)の調べによると、ハリーズは、2022年の第1および第2四半期に、合わせて3060万ドル(約41億円)を広告出稿に投じている。同じくカンターによると、2021年の年間の広告支出は4690万ドル(約63億円)だった。なお、カンターはソーシャルの予算を追跡していないため、この数字にはソーシャルメディアチャネルへの支出は含まれていない。

ブランドの個性を反映した軽快なコンテンツ

戦略に関しては、いつどこでコンテンツを公開するかを定めたコンテンツカレンダーは作成しているが、毎週、同じペースで投稿しているわけではないという。また、内容に関しては、ブランドの活動、商品のリリース、文化的なイベントなどに合わせたコンテンツや、ブランドの個性を反映した軽快なコンテンツに重点を置いている。

「たとえば最近の事例では、プライドパレードに合わせたキャンペーンの舞台裏を、正式なリリースの数日前にインスタグラムで公開した」と、キャシュダン氏は電子メールの取材で述べている。「今後も引き続き、コンテンツの投稿やコメントを通じて、コミュニティとの関わりを深めていきたい」。

成長戦略のコンサルティングを提供するプロフェット(Prophet)の共同経営者で、D2C部門のグローバル責任者を務めるユーニス・シン氏は、「勢いのあるD2Cブランドは、コンテンツ、コミュニティ、コマースに重点を置いている」ため、ハリーズのようなブランドが「社内に自前のスタジオを作り、オーガニックなソーシャルコンテンツに注力することは理に適う」と話している。

「今日のD2Cの世界は、どちらかといえばオンデマンドのアプローチにシフトしている」とシン氏は話す。「だからこそ、コンテンツというエンジンをいつでも動かせるように、クリエイターやフォトグラファーなど、有用な人材を常から配置しておく必要がある。ブランドは常に新しい映像やコンテンツを投稿して、顧客に戻ってきたいと思わせなければならない。代わり映えのしない、マンネリではいけない。常に新鮮で、斬新であることが必要だ。また、パフォーマンスマーケティングに注力するブランドにとって、コンテンツ制作のインハウス化は、ブランドボイスやブランドストーリーの一貫性維持にも有効だ」。

その反面、シン氏はこう警告する。「社内の制作チームがブランドとブランドのコミュニティのために、正しいブランドストーリーを語る能力を持たなければ、このアプローチはうまくいかない。彼らが正しく仕事を遂行し、効果的にブランドストーリーを伝えられないとしたら、それは大いに問題だ。反対に、チームが正しい方向性を理解しているなら、それはすばらしい結果を生むだろう」。

[原文:‘Makes us more nimble’: Why DTC shaving brand Harry’s has bolstered in-house capabilities, is focused on organic social content

Kristina Monllos(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

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