Shopify、最新アップデートで出品者のオフライン販売を促進:卸売販売や在庫同期の機能も

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

実店舗での買い物を再開する人々が増えているなか、Shopify(ショッピファイ)は、自社の出品者がより多くの人々とオフラインでつながることを支援するための新しいインフラを構築した。

カナダのテック企業である同社は、この半年間、出品者がオフラインでの小売を簡単にテストできるよう、iPhoneの決済機能であるタップツーペイ(Tap to Pay)や、検索の大手企業であるGoogleとのローカル在庫との同期など、新しい製品機能をテストしてきた。iPhone上のタップツーペイは同社がストライプ(Stripe)とのパートナーシップにより立ち上げるもので、現在は一部のShopify出品者が早期アクセスモードで利用できる。これらの機能は今後数カ月以内に米国全体から完全にアクセス可能になると、同社は語っている。

これらの機能は、Shopifyエディション(Shopify Editions)と呼ぶ、過去6カ月に行ってきた製品のアップデートをすべて集めたものであり、今後も年2回の更新を計画している。実店舗での新機能に加え、同社は卸売機能や、ソーシャルコマースとの統合機能も強調している。これらの新機能は、パンデミックの最中と比較してオンラインでショッピングを行う人々が減少し、収益増加と流通取引総額の鈍化を同社が報告したのと同時に発表された。同社は最新の決算発表レポートで、収益が前年比で22%増加したと報告しているが、これはその前年の110%より大きく減少している。

実店舗でのショッピングへの回帰

これらの新しいプログラムは、eコマースの売上が減速しはじめたのを受けて誕生したものだ。すべての決済手段による店舗内とオンラインでの小売売上高を測定するマスターカード・スペンディングパルス(Mastercard SpendingPulse)によると、4月の小売総売上高は、前年比で7.2%以上、2019年の水準と比べると15.3%以上も増大した。

店舗内での売上高は10%以上増加したのに対して、eコマースの売上高は昨年よりも1.8%減少したことが、データから示されている。

このように、Shopifyの発表の多くは実店舗の小売プログラムに特化したもので、同社はここしばらく、そのためのサービスとプラットフォームを構築してきた。何年にもわたり、Shopifyの出品者であるオールバーズ(Allbirds)やロージーズ(Rothy’s)などの多くが独自の店舗を開設するとともに、Shopifyはこれらの出品者が店舗での売上を伸ばせるよう、POSシステムなど多くの機能をリリースしてきた。同社のPOSシステムは2013年にはじめてリリースされ、何年にもわたって継続的に更新されてきたものだ。

同社は新たにタップツーペイも導入し、出品者がiPhoneとShopifyのPOSアプリを使って、より簡単に支払いを受け付けられるようにした。「当社はタップツーペイについて非常に良好なフィードバックを受け取っている。ほとんどのコメントで、これは魔法のようだと評されている。とにかく使いやすく、面倒なしに動作する」と、同社の製品担当ディレクターを務めるアーパン・ポッドチュリ氏は述べている。

同氏は次のように付け加えている。「当社は、この製品が時間をかけて、さまざまなカテゴリーを破壊する機会になると考えている。見本市やマーケットで販売を行う出品者も使えるだろう。しかし我々は、自社店舗でもシームレスなモバイルのチェックアウトを求める小売店や、Apple Storeと同じような体験を自分の店舗で求める販売店にも利用されるだろうと考えている」。

ローカルの買い手と売り手をつなぐ

Appleは2月、iPhoneのみを使用する出品者向けにタップツーペイを導入する計画であると述べた。すなわち、デジタル決済を受け付けるために売り手にハードウェアを購入させるのではなく、Appleのスマートフォンを使用する米国の出品者向けに対し、Apple Payやほかの非接触支払いを使用可能にすると、テック大手企業である同社は語ったのだ。

「これは支払いを受け付けるための優れた方法で、タップツーペイの採用を促進するだろう。だが、おそらくほとんどの出品者は、顧客がデバイスにタップツーペイ機能をセットアップしていない場合に備え、クレジットカードを処理するため何らかのハードウェアデバイスを依然として必要とするだろう」と、eコマース開発およびデザイン企業であるネタリコ(Netalico)の創設者で最高技術責任者を務めるマーク・ウィリアム・ルイス氏は述べている。

Shopifyは、検索の大手企業であるGoogleとのローカル在庫の同期を開始し、近隣の買い物客と出品者との摩擦を減らすこともめざしている。ローカル在庫の同期により、Shopifyの出品者は、どの店舗にどの商品が存在するかを買い物客に簡単に知らせることができる。

「ウィリアムズバーグ(Williamsburg)のヒップスタージーンズを探している買い手がいるとすると、その買い手はオンラインで注文する必要がなくなる。2分で行ける場所の店舗に必要なサイズの商品があり、すぐ引き取れると知ることができるからだ」と、Shopifyの出品者サービス担当バイスプレジデントを務めるカズ・ネジャシャン氏は述べている。

「Googleのローカル在庫は、ShopifyのPOSシステムを使用している出品者にとって便利だろう。スクエア(Square)などほかのソリューションは実店舗の企業では一般的だが、Shopifyはローカルショッピングへの参入を本当に試みていると、私は考えている」と、ネタリコのルイス氏は述べている。

米モダンリテールとの対談で、ポッドチュリ氏はShopifyの非接触支払い機能がローカルコマースに向けたものだということを強調した。

同氏は次のように述べている。「実店舗は基本的にローカルエンタープライズで、当社が行うことはすべて、ローカルの買い手とローカルの出品者とを結びつけることだ」。

Shopifyの出品者が多くのチャネルで販売を行えるよう支援

Shopifyは多くの発表とともに、新しい卸売機能と、Twitterとの新しいソーシャルコマース統合についても発表した。

Shopifyの商品担当バイスプレジデントを務めるグレン・コーテス氏は、卸売りが出品者にとって、自社ビジネスを成長させる膨大な機会となると語る。

Shopifyの新しい卸売機能により、Shopifyプラス(Shopify Plus)の出品者は、自社の卸売と消費者向けビジネスの両方を、単一のプラットフォームで簡単に管理できるようになる。「これは当社の出品者にとって巨大な販売チャネルで、卸売の提供によって事業の回転はさらに速くなるだろう」とポッドチュリ氏は述べている。

Shopifyの卸売チャネルは何年にもわたって改修を必要としていたと、ルイス氏は語る。「これはShopifyプラス専用の機能だったが、実際には単なるアプリ(以前はハンドシェイク[Handshake]と呼ばれていたもの)で、同社はこのアプリを買収してから更新を止めてしまった」と同氏は述べている。Shopifyは2019年に非公表の金額でハンドシェイクを買収した。「このため、ハンドシェイクの機能はごく限られたもので、ほとんどの出品者は実用的な卸売のオプションとして使用していない」。

また同社は、出品者が新しい買い手を見つけるためのもっとも重要で影響がある方法のひとつがソーシャルコマースであるとの認識から、Twitterでのショッピングを促進する新しいプログラムも発表した。同社はTwitterショップ(Twitter Shops)とショップスポットライト(Shop Spotlight)の2つの新しい販売チャネルを立ち上げ、米国のShopify出品者はいずれも無料で利用できる。

TwitterショップはTwitter上のデジタル店舗で、出品者はこの店舗で最大50の商品を紹介できる。一方でスポットライトの機能は、そのブランドが注目を集めようとしている5つの商品に焦点を合わせるものだと、Shopifyは説明している。

Shopifyは、今年の第1四半期にFacebook、インスタグラム、TikTok、ピンタレスト(Pinterest)からの商品統合により、Shopify出品者に対して行われた注文は前年比で4倍になったと、同社は語っている。

「Twitterのショッピングは、Shopifyの出品者にとって、新しい買い手を見つけ、つながりを作るバザーの現代版のようなものだ」とネジャシャン氏は付け加えている。Shopifyでは、Twitter上のイベントに合わせて、商品ドロップや限定在庫などの形式を検討すると語っている。

Shopifyによる様々な成長への取り組み、つまり、出品者向けの新しいオフライン機能の構築や、Twitterなどのプラットフォームとの統合は、すべて出品者により多くの販売場所を提供するためのものだ。

「今後1年間に、当社が出品者と世界中の人々に認識してもらいたいのは、我々が非常に価値のあるグローバルなコマースインフラを構築したということだ。そして、我々と同じような方法でこれらの部品をつなげたり、パイプを構築したりしている企業はほかにはない」とポッドチュリ氏は述べている。

[原文:Shopify’s latest product updates focus on helping merchants sell more offline]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

Source