オープンソースソフトウェアコミュニティのために活動している非営利団体・Software Freedom Conservancyが、「GitHub」の利用をやめて他プラットフォームへの移行支援を行う長期計画を発表しました。以前からGitHubを避けるようにという呼びかけは行ってきましたが、あまり効果がないため、より強い行動に出た形です。
Give Up GitHub: The Time Has Come! – Conservancy Blog – Software Freedom Conservancy
https://sfconservancy.org/blog/2022/jun/30/give-up-github-launch/
Give up GitHub: The time has come | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=31932250
Software Freedom Conservancyが特に強く懸念しているのは、2021年6月に発表されたコード自動入力AI「GitHub Copilot」です。
GitHubにソースコードの「続き」を自動で補完する機能「GitHub Copilot」が登場、OpenAIの協力により – GIGAZINE
Software Freedom Conservancyは、2021年7月にMicrosoftやGitHubの担当者とビデオチャットを行って、Copilotに関する疑問をいくつかぶつけたものの、「(今の時点では答えられないが)すぐに答える」と回答を保留されました。
しかし、6カ月にわたり回答がなかったため、2022年2月に「If Software is My Copilot, Who Programmed My Software?」と題したコラムを発表し、疑問を公表しました。
If Software is My Copilot, Who Programmed My Software? – Conservancy Blog – Software Freedom Conservancy
https://sfconservancy.org/blog/2022/feb/03/github-copilot-copyleft-gpl/
それでもなお反応がなかったため、Software Freedom Conservancyは「AI支援ソフトウェアの道徳的意味を考える専門家委員会」を立ち上げ、公開討論会も開催しました。討論会にはMicrosoftとGitHubを招待したものの、もちろん両者とも現れませんでした。
そして1週間前、改めてMicrosoftとGitHubに「1年間回答を待っている懸案の質問について」と「このテーマに関する公開討論への参加を拒否している」ことのリマインドを送ったところ、「(AI支援ソフトウェアの倫理に関する)幅広い話し合いをしたとして、Software Freedom Conservancyの姿勢は変わりそうにありません。そのため、我々はあなた方の詳細な質問には回答しません」という旨の返答があったとのこと。
Software Freedom Conservancyによると、正式に回答を拒否された質問は以下のような内容だったとのこと。
1:GitHubの当時のCEOによる「(1)公共データでMLシステムのトレーニングを行うことはフェアユースであり、(2)出力はコンパイラと同様にオペレーターに帰属する」という主張は、どういった判例を参考にしたものなのでしょうか?FOSSコミュニティの透明性の尊重のため、この主張を真実であると信じる、Microsoft/GitHubの完全な法的分析もコミュニティに提供してください。
2:もしMicrosoft/GitHubの主張するように、どんなコードをモデルにトレーニングしてもライセンス条項に拘束されないことが許されるなら、なぜCopilotのモデルをFOSSだけでトレーニングすることにしたのですか?たとえば、なぜWindowsやOfficeのコードベースはトレーニングセットに含まれないのですか?
3:Copilotで使用したトレーニングセットに含まれるライセンスの一覧(著作権者名やGitリポジトリなど)を提供してください。提供できない場合、なぜこの情報をコミュニティに公開しないのですか?
これまでSoftware Freedom ConservancyがCopilotに関する質問の返答がなくても放置していたのは、案件の優先度がそれほど高くないと考えていたからですが、2022年6月末、GitHubがCopilotの商用化、営利目的製品としての展開を発表したことで見過ごせなくなり、すべてのFOSS開発者に対してGitHubを離れるよう呼びかけるに至ったというわけです。
Give Up GitHub – Software Freedom Conservancy
https://sfconservancy.org/GiveUpGitHub/
Software Freedom Conservancyは今後数週間で、GitHubからの移行ガイドと、移行先のホスティングオプションを用意していく予定だとのこと。
なお、Software Freedom Conservancyは、FOSSプロジェクトの人気ホスティングサイトが利用されなくなった例として「SourceForge」の名を挙げ、「SourceForgeのときの教訓を、もう一度学ぶ必要がある」と述べています。
オープンソースソフトウェアの老舗サイト「SourceForge」はいかにして堕ちていったのか – GIGAZINE
by PughPugh
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