「 エピックゲームズ は、イノベーションを生み出すサービスプロバイダーだ」:ティンバーランド CMO ドリーケ・レンクネグト氏

DIGIDAY

ティンバーランド(Timberland)がメタバースに参入した。同ブランドは先ごろ、多面的なアクティベーションとして、フォートナイトクリエイティブ(Fortnite Creative)のインタラクティブ体験「ティンバーランド・パルクール・トレイル(Timberland Parkour Trails)」など、フットウェア分野におけるVRおよびAR技術の利用を模索するプロジェクトを開始した。

このアクティベーションは、ティンバーランドと、フォートナイトの開発元のエピックゲームズ(Epic Games)、デザイナー兼インフルエンサーのダニエル・ベイリー氏が創設したフットウェアサイト「コンセプトキックス(CONCEPTKICKS)」のパートナーシップによるものだ。提携の金銭的な詳細は明らかにされていない。

ティンバーランドがマーケティング目的で仮想空間に進出するのはこれが初めてではないが(最初の試みは、同ブランドが1月に立ち上げたインタラクティブ体験「ティムズトレイルズ(TimbsTrails)」)、これは、メタバースの世界にさらに深く足を踏み入れるというブランドの方針を示す動きであり、またその過程で、ゲーム発信のメタバースという、エピックゲームズが推進するビジョンを実証することとなる。ゲームコミュニティとティンバーランドのメタバース戦略との結びつきをより強固にするため、同ブランドはTwitch(ツイッチ)の人気ストリーマー、アリ・ハッサン氏(通称「サイファーPK」:SypherPK)を起用し、彼のファンに向けてこの体験を宣伝してもらうことにした。

米DIGIDAYは、ティンバーランドのCMOであるドリーケ・レンクネグト氏に、ティンバーランドがメタバースのプラットフォームにフォートナイトを選んだ理由と、近い将来、NFT(非代替性トークン)のゲームに参入する予定があるのかについて話を聞いた。

ティンバーランドのメタバースへの取り組み

  • アクティベーション:フォートナイトクリエイティブの体験「ティンバーランド・パルクール・トレイル」、「ティムズトレイルズ」
  • 戦略:ゲームコミュニティとブランドのメタバース戦略を結びつけ、デジタル製品を使ってフットウェアのイノベーションを推進し、サステナビリティを促し、ブランドを消費者の生活やマインドセットに溶け込ませる

なお、読みやすさを考慮して、以下のインタビューには若干の編集を加えている。

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──ティンバーランドが今回のアクティベーションに際して、ロブロックス(Roblox)やディセントラランド(Decentraland)といったほかのメタバースプラットフォームではなく、エピックゲームズをパートナーに選んだ理由は?

とりわけ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、またとりわけティンバーランドのなかで、デジタル製品の創作が加速している。それは、我々の製品やフットウェアのイノベーション推進を可能にしているというだけでなく、デジタル製品の創作がもたらす利点に目を向けた場合に、我々が課題に掲げるサステナビリティを促しているという点で、現在の我々の本質を表している。

ティンバーランドが考えるパートナーシップとは、パートナーとして協力しあうことで、自分たちだけでは不可能なことを可能にするものだ。我々の見るかぎり、エピックは申し分のないパートナーだった。なぜならエピックは、消費者の目に見える以上の存在だからだ。エピックは、アンリアルエンジン(Unreal Engine)のサービスプロバイダーという側面をもつ。彼らはサービスプロバイダーとして、ブランドがデジタル化をコンセプトから消費者にまで取り入れることを可能にする。求めているのは、人々を集めて互いに交流させ、自らを前進させ、イノベーションを生み出すことだ。

──つまりティンバーランドは、アンリアルエンジンがメタバース構築の基盤になりうると考えているのか?

そうだ。パートナー側の担当者はここにいないが、私は関係者全員を代表して、なかでもデザイン部門の責任者に代わって、そう答えることができると思う。アンリアルエンジンが、市場開拓プロセスの最初から最後までをさらに進化させ、デジタル化する可能性は驚異的で、それもまた、我々が彼らとのパートナーシップを望む理由だ。

──エピックのメタバースに対するビジョンは、プラットフォームにWeb3の要素がなく、ブロックチェーンのインフラを必要としない点で、他の一部企業とは異なっている。NFTではなく、ゲームを基にしたメタバースによるアクティベーションを目指した理由は?

我々は消費者主導のブランドだ。つまり、消費者のマインドセットや生活に寄り添う必要がある。そして、ゲームは間違いなく消費者の生活の一部になっている。我々の考え方は、消費者がいる場所にいて、消費者がいる場所でサービスを提供し、消費者がいる場所で彼らのニーズに応え、彼らのパートナーになることだ。NFTについては、その機会やニーズについて検討していないため、現時点では課題に挙がっていない。

しかし、それは今後も実現しないという意味ではない。それを決めるのは、消費者とのパートナーシップ、消費者が何を必要とし、何を求めているかだが、同時に、我々がブランドとして何を必要としているか、どこから学びを得られるかという問題もある。

──ティンバーランドが今回、ブランドアクティベーションのプロモーションに、ゲームのインフルエンサーであるサイファーPK氏を選んだ理由は?

消費者がいるすべてのプラットフォームを通じて、それがゲーム分野であれ、音楽であれ、エンターテインメントやアートであれ、我々は適切な相手とパートナーシップを結びたいと考えている。サイファーPK氏のような人々とのパートナーシップに対する我々の考えは、シナジーが得られるかどうかだ。そして、このパートナーシップは素晴らしい効果を上げており、彼と一緒に仕事ができたことは我々にとって名誉なことだ。

だからこそ、このプロジェクトはコラボレーションとして非常にユニークといえる。インダストリアルデザイナーから、ダニエル・ベイリー氏、メタビジョン(Metavision)、アンリアルエンジンのスタッフまで、革新をもたらせる人々が集まっている。このような人々をいちどに集めることが、新たな空間を開拓し、自分たちを前進させることにつながる。ティンバーランドでは、デザインのイノベーションだけでなく、ストーリーテリングの面でも、「1+1=3」となることを非常に重要視している。

[原文:‘Epic Games is a service provider’: A Q&A with Timberland CMO Drieke Leenknegt on the brand’s metaverse strategy

Alexander Lee(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:分島翔平)

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