50周年。これが何の数字かと言えば、有名チョコメーカーのゴディバが日本に上陸してから経過した年月である。だが正直なところ、筆者とゴディバのあいだにはまだ距離がある。「海外の高級チョコブランド」というイメージが強く、隔たりを感じて手を出し辛いのが現状だ。
そんなゴディバが、なんとこのたびオリジナルの羊羹(ようかん)を発売したらしい。べらぼうに親しみやすい。ゴディバは私の良き隣人である。というわけで、実物を入手したのでレビューしていきたい。
少し説明を足しておくと、件(くだん)の羊羹は、2022年5月11日より順次発売された「サマーコレクション」と呼ばれる夏季シリーズ商品のうちの1つである。日本上陸50周年を記念し、伝統の和菓子とのコラボレーションとして作られたようだ。
味はショコラ味とカカオフルーツ味の2種類が用意されており、5個入り詰め合わせが2160円、10個入りが4320円となっている。やはり値は張るものの、羊羹の親しみやすさの前では小事にすぎないので購入した。
無論、「それがゴディバ製であること」による好奇心も大いに手伝っている。一体どんな味になっているのか。期待を膨らませつつ実食してみたところ、結論から言うと、さすがのクオリティであった。
ただ美味しいというだけではない。そこには新鮮な驚きもあった。まずショコラ味の方だが、これほどまでに滑らかで、しっとりとした口溶けの羊羹を初めて食べた。羊羹にありがちな重いベタつきがなく、濃厚でコク深い甘さを感じさせながら、するりと喉を通っていく。
間違いなく、練り込まれたチョコの成せる業だろう。漂う香ばしさからして、上質なものが用いられているのがわかる。しかし口にすると確かに羊羹でもあるから不思議だ。例えるなら「チョコケーキと羊羹の子」といった仕上がりになっている。
「チョコケーキと羊羹は交配しない」と言われればそれまでなのだが、ついそうやって表してしまうくらい、絶妙な味わいなのだ。東西の甘味が、ゴディバの手腕によって違和感なく、それどころか虜になるほど丁寧に接合されている。
そしてカカオフルーツ味はと言えば、こちらはショコラ味よりさらに口当たりが軽い。油断するとフォークから抜け落ちてしまうくらい瑞々しく、噛んだ瞬間にカカオフルーツの爽やかな甘酸っぱさを弾けさせ、それでいて上品な後味を残していく。
ショコラ味とはまた別物だ。しかしどちらも、食べ心地は羊羹である。新しいものを食べているようで、柔らかな食感が恐ろしく舌に馴染む。高級なスイーツがもたらす贅沢な気分と、落ち着いた憩いに同時に浸れる。絶妙だ。
ただ、これは欠点であり長所でもあるのだが、いずれの羊羹も小豆を含んでいるとはいえ、その風味は薄い。したがって小豆を堪能したい方には物足りないかもしれない。一方で、小豆が苦手で羊羹を敬遠している方には食べやすい可能性が高いと思う。
ともあれ、繰り返し述べているようにクオリティは抜群である。なるべく多くの方に味わってみてもらいたい商品だ。ちなみに「サマーコレクション」とあって、販売は2022年8月23日までの期間限定なので、興味が湧いたら可及的速やかにチェックしてほしい。
個人的な話をさせてもらえば、これらは羊羹としては亜種なのかもしれないが、正直、今まで食べた羊羹の中でトップレベルに美味しい。ゴディバによって羊羹の順位付けを塗り替えられた人間を、今あなたは目の当たりにしているのである。
いやはや、こうなってしまっては、ゴディバと疎遠であったことが悔やまれて仕方ない。これからはこの魅力溢れるチョコメーカーと、甘い蜜月を過ごしていきたい所存だ。