即時配達アプリ、対面ショッピングに活路:倉庫の「食料品店化」進む

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一部の市場では、即時配達アプリが従来型の食料品店に近いものになりつつある。

オンデマンド配達はここ数年のうちに大都市圏で開始されたものだが、注文された品を約15分以内に顧客に届けることで知られるようになった。しかし、それらの多くは現地、特にニューヨーク市でのガイドラインに従うため、店舗内でのショッピングや店頭での注文受け取りにも対応している。

明暗分かれる配達アプリたち

一方で、これらのアプリは対面ショッピングのプロモーションも行っており、店頭受け取りも次第に増えつつある。たとえば、ゴーパフ(Gopuff)のスポークスパーソンは米モダンリテールに、昨年ニューヨーク市で操業を開始して以来、同社のトライベッカ店においては現在、店頭受け取りが取引の半分以上を占めていると語った。また、即時配達アプリのゴリラズ(Gorillas)は2022年初頭、マンハッタンのダウンタウンにある店舗を改装し、より快適に店内を回りやすいようにした。

これらはすべて、即時配送部門が全体として売上に苦しんでいることから起きたものだ。この分野は最初こそ投資家の関心を集めて投資が一気に流入したものの、これらの新興企業が低価格で高速な配達を行い、しかも利益を上げることが可能なのかという点について、一部のベンチャーキャピタリストが不信を抱き、この分野を忌避するようになった。その結果、ここ数カ月にフリッジノーモア(Fridge No More)やバイク(Buyk)などの業者は廃業した。

その一方で、ゴーパフ、ゴリラズ、ゲティール(Getir)など残されたプレイヤーたちは、より持続的に成長するためコスト削減に動いた。ゴーパフは4月に全世界の従業員の3%をレイオフし業績の悪い倉庫の閉鎖を検討した。ゴリラズとゲティールも5月下旬、レイオフを発表した

これらの業者は現在、アプリ内のバナーや店舗の看板など、何らかの形での対面ショッピングのプロモーションもしている。たとえばゴリラズは、アプリのトップページで買い物可能な店舗を目立つように表示している。

最大の市場はニューヨーク

これらのプロモーションの多くは、これらのアプリの多くにとって米国で最大の市場であり、声高に批判する人たちがいるニューヨーク市で行われている。ニューヨーク市では、市議会議員のゲイル・ブルーワー氏などの現地の政治家が、これらのアプリがおもに倉庫として設計されており、小売店舗ではないことから、区画関連法に違反していると主張してきた。しかしこれらのアプリの広報担当者は、ニューヨーク市にある自社の店舗はすべて、常に対面でのショッピングが可能であると述べている。

昨年ニューヨーク市で操業を開始したゴーパフは、現在同市の全域で買い物可能な倉庫を合計20施設運営している。広報担当者は、同社がいくつかの新しい拠点で店舗のレイアウトやデザインもテストしていると語っている。

同社のもっとも目立つ拠点はトライベッカにあり、店舗内を見て回るよう勧める注目すべき特徴が設計に組み込まれている。店舗の正面にゴーパフキッチン(Gopuff Kitchen)があり、食料品店や、注文の受け取り専用の場所も用意されている。

そのほかの場所でも、同社は間接的に小売店舗を運営している。同社は最近ベブモ!(BevMo!)を買収し、昨年リカーバーン(Liquor Barn)を買い取ったことで、これらのチームの小売オペレーターを社内に組み込んだ。これらの買収の結果、同社は現在、全国で180以上のベブモ!およびリカーバーンの小売店舗を運営している。

ドイツ企業流生存戦略

ゴリラズもまた、少し前から実店舗での買い物に対応している高速配達の新興企業だ。ただし同社は、実店舗の使用について大々的なプロモートは行っていない。

ドイツの企業である同社によれば、昨年夏に米国で操業を開始して以来、同社の店舗はすべて一般に公開されており、店舗内での注文や受け取りが可能だった。同社は現在、ニューヨーク市に6店舗を保有している。しかし、同社は2022年の初頭、自社のダウンタウンマンハッタンの店舗を、フルフィルメントセンターではなく従来型の食料品店に見えるよう改修することを決定した。一新されたこれらの店舗は通路が広くなり、より開けたフロアプランを使用し、食料品のセクションが明確に割り当てられた。ローワーイーストサイドの店舗では、顧客がアプリを使用して在庫のある品物を購入し、デジタルでチェックアウトを行って、配達料を節約できる(同社の米国での配送料は注文あたり1.80ドル[約236円])。

ゴリラズの米国運用ディレクターを務めるアダム・ワセンスキー氏は、「当社は食料品配達業者として、自社が操業する場所において小売業を営むための要件を理解し、遵守している」と、メールで米モダンリテールに語った。同氏は、現地のガイドラインと法に応じて、同社の店舗は「それぞれの市から発行された有効な許諾を保有している」と注釈した。

「ニューヨーク市の場合、顧客が店舗内に立ち入ることを許可し、注文した品が準備されて対面で渡されるのを待つための場所を設置するという条件がガイドラインに存在する」。同氏は、同社の目標はすべての店舗で利益を上げられるようにすることだと、米モダンリテールに以前語った

一方、トルコを拠点とするゲティールは、自社のニューヨーク市の店舗に設置した看板によって、店舗内での買い物を促進してきた。同社は、店舗内ショッピングのプロモーションを行うため、ほかのどのような方法を使用しているかについての質問に回答していない。

持続性の厳しいビジネスモデル

カーニー(Kearney)の消費者プラクティスのパートナーであるキャサリン・ブラック氏は、高速配達の分野は急激に成長しているものの、依然として小規模で非常に断片的な市場であり、利幅も小さいと語っている。これは特に、新規顧客の獲得にかかる負担やコストが増えていることで、それが証明されている。

「非常にニッチな市場やニーズに対しての価値提案は極めて強い」と同氏は述べている。「残念ながら、そのために繰り返し利用できる持続可能なビジネスモデルを構築することが難しくなっている」。

コアサイトリサーチ(Coresight Research)の調査および顧問担当プレジデントを務めるケン・フェンヨー氏は、従来型の小売への移行は「自社の中核である配達ビジネスと干渉しないなら、良い考えに思える」と述べている。同氏は、これらの都市部にある小規模な店舗は理論上、トラフィックを引き入れ、配達アプリのコスト削減に役立つととともに、独自の商品の品揃えを提供できると言及している。

即時配達サービスは拡大に苦闘しているが、明るい見通しもある。アップトピア(Apptopia)の最新のデータによれば、超高速配達アプリは、登録数でほかの食料品アプリをしのいでいる。このレポートには、このカテゴリーにおける上位10社のサービスが、ゴーパフやゲティールも含めて、2022年の第1四半期に前年比で127%成長したことが示されている。

小売データ分析企業の1010データ(1010data)で最高生産責任者を務めるジョナ・エリン氏によれば、このトレンドは顧客が店舗内での受け取りを求めていることも示しているという。「たしかに配達や配送よりも安価ということもあるが、BOPIS(オンラインで注文し、店舗で受け取ること)は、オンラインでの購入と、自分で受け取りタイミングを選べることを両立するという点において、買い物客にとって利便性が高い」。

同氏は、これらのサービスは注文された品物を数分以内に配達することをポイントとしているが、地元の食料品店や大都市のボデガに売上を奪われるリスクを背負っていると説明する。現在すでに、昨年このカテゴリーが爆発的に成長した頃と比べて、高速配達の目新しさは失われてきている。これに対して各サービスは、オムニチャネルの方式を採用することで適応しつつある。

「物事には必要性と欲求が存在する。即時配達は必要性よりも欲求の面が強くなる傾向がある。我々は、AI主導の品揃えをもってしても、これらのビジネスの大半は、利益を出すのは難しいだろうと思われる」。

[原文:How instant delivery apps promote in-person shopping]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
Image via Gorillas

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