先日、とあるゲームアプリを見つけた。ストアに掲載されている紹介用のスクリーンショットには、でかでかと「夢のマンガ家体験!!」と書いてある。
ふむふむ、チラ見しただけでも「ペン入れ」とか「新人大賞」とか、漫画家を目指したことのある人なら1度は目にしているであろう単語が並んでいるな。もしかして結構しっかり漫画家生活が再現されているのでは?
ありがたいことに現在ロケットニュース24で漫画家としても活動させてもらっている筆者だけど、ここらでひとつ初心に戻ってみるのもいいかもしれない。そんなわけで、漫画家が漫画家を体験するアプリをプレイしてみた!
・再現度が高すぎる……!
ゲームタイトルは『まんが一本道〆』。多数のシミュレーションゲームを世に送り出しているカイロソフトから配信されており、公式サイトを見るとiOS、Androidのほか、PS4、Nintendo Switchにも対応している。
今回はiOS版を購入して730円だったが、PS4やNintendo Switchではまた価格が変わるようだ。
さて、ゲームを始めると、さっそく「まんがを描く」というボタンが表示されたので押してみる。
おぉ、作品について結構細かい設定ができるんだ!
やっぱりデビュー作だからな、自分の好きな組み合わせで描きたいよな。試しに好きなようにポチポチ設定してみると……
こんなメッセージが表示された。
え、いや私は家族がテーマの大海原でのバトル漫画が描きたいんだよ。小さな島を支配しようとする敵、それを止めようとする主人公。しかし敵のラスボスは、実は主人公の兄だった……的な。
何とかなるだろうと「はい」を選択。しかし、これが後々自分の首を絞めることになる。
・順調にステップアップ
制作を開始したら、基本的にプレイヤーにできることは進行状況を見守るのみ。制作期間は体力がゴリゴリ減っていくので、体力がなくならないよう状況に合わせて制作リズムを操作するくらいだ。
見守ること数分、無事原稿が完成。
完成した原稿は、ストック・持ち込み・賞に応募のいずれかに回すことができる。おぉ、持ち込みや賞に応募するのって実際に漫画家デビューするまでにも絶対通る関門じゃん!
とりあえず、直接編集者の意見が聞ける「持ち込み」をしてみよう。ボタンをタップすると……
なんか見覚えのある出版社名出てきた──ッッ!?!? さすがにはっきり明記されているわけじゃないけど、どの名前も漫画好きなら元ネタが分かるのではないだろうか。
う~ん、どの出版社も魅力的だけど……やっぱりここは大手であろう「少額館」かな!
持ち込みです! よろしくお願いします!
あ゛っ…………
バッサリ斬られてしまった。ゲームの中とはいえ、自分の作品にこうもことごとくバツがついている景色はあまり心の健康によくない……。
いや、くよくよしていても仕方ない。気を取り直して次に行ってみよう!
もらった経験値を使って技術をパワーアップさせたり……
取材に行って作品を描くのに必要な「知識」を得たりしつつ……
無事2作目を描き上げ、今度は作戦を変えて「箔千社」に持ち込んでみた。すると……
お……?
おぉ……!!
やった~~~!!!!! なんと持ち込んだ作品が新人大賞を受賞し……
その勢いのまま連載をつかみ取った!! 怒涛の勢いすぎて自分の才能が怖いぜ……!
・転落
二つ返事で連載の話に飛びついた筆者。箔千社の漫画雑誌「コミックOh! タカラ」は週刊誌のようで、締め切りは7日後とのこと。よ~し、任せてください! どんどん傑作を生み出しちゃいますよ!!
今回も自分の好きな組み合わせで内容を決め、さっそく製作に取り掛かる。構想をして、ネームを切って~……
……あれ? な、なんか嫌な予感がする。これ、もしかして間に合わないんじゃ……
やむなく作業ペースを「過酷」に設定。作業時間が延びて1日あたりの作業量が増えるのと同時に体力も一気に削れる諸刃の剣みたいなペースだけど、この際なりふりかまってはいられない。
しかし締め切りは刻々と迫ってきている。やばいやばいやばい、何とかして軌道修正しないと!! 焦りに焦ってギリギリまで粘ろうとした結果……
あ。
無理がたたって入院してしまった。当然作業を進めることはできず、次の話を描くための知識を得るために取材に行くこともできない。
完全に悪循環にはまってしまい、開始直後にも関わらず泣く泣く「連載終了」を選択するほかなかった。うぅ、せっかくの初連載が……
・無理、ダメ絶対
敗因は作品設定の際にボリュームの多い要素を掛け合わせてしまったこと。このせいで作業量が膨れ上がり、製作が追い付かなくなっていたのだ。最初の忠告の意味はこれだったのか……
反省を活かしてボリュームを調整したところ、先ほどまでの苦労が嘘のようにスムーズに作業が進み長期連載賞までもらえてしまった。
何を描きたいかも大事だけど、仕事として描く場合は自分の実力に合わせた作品を描くのも本当に大事ですね……あと無理はダメ絶対。
漫画家生活を忠実に再現した『まんが一本道〆』では、編集者さんからのダメ出しや迫る締め切りなど「あっやめてください!! 覚えがあるシチュエーションすぎて私にクリティカルヒットです!!」と悶絶することも多々あった。
しかしその分自分がまだ経験できていない「アニメ化」「グッズ化」などのイベントで感じる嬉しさも大きく、ついついのめり込んでしまった。
「私も早くこうなりたいな~」とモチベーションにも繋がった気がする。さて、それじゃあ今日も原稿頑張るか……!