睡眠と健康に関する研究は数多く行われており、これまでに「睡眠不足が続くと集中力が低下する」「睡眠時間を1時間減らすとガンや糖尿病に関連する遺伝子が活性化する」といったことが明らかになっています。新たにヘルシンキ大学が実施した調査によって「不眠症の症状が長引くと学習能力および集中力が低下する」ということが判明しました。
Trajectories of Insomnia Symptoms Among Aging Employees and Their Associations With Memory, Learning Ability, and Concentration After Retirement – A Prospective Cohort Study (2000–2017) – 2022
https://doi.org/10.1177/08982643221078740
Insomnia in midlife may manifest as cognitive problems in retirement age | University of Helsinki
https://www.helsinki.fi/en/news/sleep/insomnia-midlife-may-manifest-cognitive-problems-retirement-age
「夜中にゲームや作業に没頭してしまい、ついつい睡眠時間を削ってしまう」という人は多いはず。しかし、これまでの研究で睡眠時間の減少が「ストレスホルモンレベルの上昇」「ブドウ糖をエネルギーに変える力の現推移」「体温維持機能の低下」といった身体的な悪影響に加えて「ポジティブな感情を実感しにくくなる」「集中力が低下する」といった精神的な悪影響を引き起こすことが明らかとなっています。
睡眠不足を甘く見てはいけない、睡眠不足から来る悪影響はこれだけある – GIGAZINE
しかし、上記の研究は短期間の調査による結果であり、10年を超えるような長い追跡調査を行った研究は多くありません。そこでヘルシンキ大学の研究チームは3748人の被験者を対象に睡眠と認知機能の関連を2000年~2017年の18年間にわたって追跡調査しました。
調査の結果、定年退職を迎えた被験者には「定年前から定年後にかけて不眠症の症状が悪化する(黒い破線)」「不眠症の症状が常に良好」「定年前から定年後にかけて不眠症の症状が改善する(緑の破線)」という3種類の不眠症パターンが存在することが判明。さらに不眠症の症状が悪化したグループは良好だったグループと比べて記憶力・学習能力・集中力のスコアが低いことも判明しました。一方で、症状が改善したグループでは悪化したグループと比べて各能力のスコアが高いことも明らかになりました。
研究チームは研究結果をもとに「長期間にわたる不眠症の症状」が認知機能低下の危険因子であると結論付け、不眠症の早期治療や睡眠リズムの改善を行うように推奨しています。
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