Shopify が大きな賭けに:フルフィルメントの高速化で期待外れだった利益の回復を目指す

DIGIDAY

5月5日に発表されたShopifyの第1四半期決算は投資家の予想を下回り、株価はこの2年間でもっとも低い水準となった。このeコマース企業の一株当たりの当期純利益は予想された64セント(約83円)ではなく、20セント(約26円)となった。しかし四半期利益は増加している。

CEOのトビアス・リュトケ氏によると、同社は現在、損失を補填するための努力の一環として、配送とフルフィルメントを引き受けるという大きな賭けに出ている。

物流スタートアップと提携しシンプルで強力なプラットフォームに

Shopifyの四半期収益が10億ドル(約1300億円)を上回るという話のなかで、リュトケ氏は同社が配送物流のスタートアップであるデリバー(Deliverr)を20億ドル(約2600億円)以上で買収することを明らかにした。デリバーは全米に倉庫を持っており、Shopifyブランドはそこから出荷することが可能になる。また、需要に応じて在庫を地域ごとに割り振るというデリバーのバックエンド技術も利用できる。

「今年デリバーを追加することは2022年の収益性に影響を及ぼすが、[Shopifyの既存の配送や物流プログラムであるShopifyフルフィルメント・ネットワーク(Shopify Fulfillment Network)に関する]我々の野心を加速させるだけの価値は十分にある」とリュトケ氏は決算報告会で述べた。買収前のShopifyは最速のオプションとして2日配送を提供していたが、今後は1日配送のオプションも提供することになる。

この買収で1日配送と2日配送のサービスを変動料金で提供できるようになれば、Shopifyは多くのブランドが直面しているサプライチェーンとフルフィルメントに関する現在も進行中の課題を有利に活用し、パートナー企業に業務の多くをShopifyに委ねるよう促す機会を得ることになる。リュトケ氏によれば、目指すは「断片化したサプライチェーン・マネジメントの複雑さを解消すること」だという。

「我々の目標は、インディペンデントな企業に均等な機会を与えるだけでなく、そうした企業が有利になるように傾け、(ブランドの)規模と敏捷性を強大な力へと変化させることである」とリュトケ氏は買収に関するブログ記事を投稿した。「Shopifyフルフィルメント・ネットワーク(SFN)はデリバーとともに、何百万もの成長企業にシンプルで強力な物流プラットフォームへのアクセスを提供し、それによって顧客を何度となく幸せにすることができるようになるだろう」。

より速い配送への消費者の期待が高まっている

デリバーとShopifyがすでに有しているSFNの目標は、Shopifyのすべてのパートナーに対して1日配送と2日配送のオプションを可能にすることだ。サプライチェーンの遅延がブランドにとって大きな痛手となるのは、より速い配送に対する消費者の期待が同時に高まっているのが理由のひとつでもある。たとえばスキムス(Skims)、トッドスナイダー(Todd Snyder)、アンタックイット(Untuckit)、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)は最近、即日出荷を開始した。

「より速い配送は必需品へと急速に進化している」と、D2Cブランドに即日配送を提供する即日配送フルフィルメントのスタートアップ、オヒー(Ohi)のCTOで共同創業者であるニック・ブランシェ氏は語る。「小規模なブランドであれば出荷時間に余裕があるが、より多くのブランドに購入後のこうしたプレミアムな体験を提供するようプレッシャーがかかっている」。

しかし小規模な企業には、UPSのような運送業者と契約をまとめたり、より速い物流のために追加料金を支払ったりするだけの力やリソースがないことが多い。Shopifyはこうしたすでに存在するプレッシャーを見込んで、2019年に倉庫自動化のスタートアップであるシックスリバーシステムズ(6 River Systems)を買収するなど、フルフィルメントオプションを拡大させており、それらを活用するようブランドを後押ししている。2020年以降、Shopifyはすでに100万近い業者のフルフィルメントを扱っている。デリバーも100万以上の顧客を抱えているため、Shopifyのフルフィルメント事業は実質的に倍増している。

「今年デリバーを加えることで2022年の収益性には影響が出るものの、SFNに関する我々の野望を軌道に載せるという点で十分に価値があることだ」とリュトケ氏は述べている。

[原文:Shopify aims to make up for disappointing profits with faster fulfillment]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

Source