クリス・コリンズ氏は、2020年3月にパンデミックが始まった時点では美容師として働いていた。そして、ほかの多くの人と同様、パンデミックによって仕事を失った。しかし、すぐにTikTokにコンテンツを投稿することで苦境における楽しみを見つけた。彼女のコンテンツは自分自身を、そして急成長する彼女のオーディエンスを笑わせるような内容だ。
その年の7月1日にはすでに、彼女のページ(@KallMeKris)のフォロワー数は100万人に達した。その数が400万へと四倍になったとき、彼女はオーディエンスを多様化しファンにより長尺のコンテンツを与えるために、YouTubeも始めることにした。
コリンズ氏はDIGIDAYポッドキャストの最新エピソードで「最初に100万人に到達した時は、(フォロワー数は)止まるだろうと思ったが、そのまま続いた。TikTokでフォロワーが1000万人を超えるまでは、ずっと自分でも信じられてなかった状態だったと思う」と語った。
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現在、コリンズ氏はTikTokで4300万人以上のフォロワーがおり、YouTubeでは570万人、インスタグラムでは200万人近くのフォロワーがいる。同氏は、(カナダ人であるため)TikTokが米国のクリエイター向けに提供していた資金援助プロジェクトであるクリエイターファンド(Creator Fund)の資格を得ることなくフォロワーを集めていため、3つのプラットフォームすべてでブランドと直接取引することが、切迫したニーズだった。
今ではブランドとの直接取引が主な収入源となっているが、彼女はどれだけ稼いでいるかを明らかにしなかった。しかし、どのブランドと仕事をするか、週に何件のスポンサー投稿をするか、よく計算して検討する理由を説明してくれた。また、TikTokがスターダムへの飛躍に貢献したか、ブランドコンテンツとオリジナルコンテンツのバランスをどうやって戦略的に取っているのか、TikTokのトレンドに乗ることだけがオーディエンスを獲得する方法ではない、という点についても語った。
以下は会話のハイライトで、読みやすくするために少し編集して要約してある。
TikTokに特化した戦略の作成
私はいつもTikTokのために事前にシナリオ、少なくともラフなシナリオを書く。これはTikTokではスケッチ(コント)形式の動画が多いからだ。スケッチ動画が1分であれ3分のものであれ、シナリオを書く。大抵はある程度の制作期間を決めていて、間隔を空けてスケジュールを調整するようにしている。というのも、私は(コント動画で演じる)キャラクターが30から35個ほどあり、それぞれが違うストーリーを持っているからだ。
たとえば、キャラクターの1人にライリーという名前のキャラクターがいる。ライリーを演じてTikTok動画を投稿すれば、次のキャラクターはライリーではなく、別のキャラクターになる。そして1週間から2週間後にライリーをやる。
シナリオ作業ではたくさんのブレインストーミングをする。ボイスメモやポストイットにランダムに思いついたアイデアを書き留めるのだけれど、その数は自分でも把握できてない。自分の部屋には「靴下」とだけ書かれたポストイットがひとつ貼ってあるが、今ではそれが何を意味しているのかわからない。通常は、スケッチの「オチ」になるジョークやひとつの「ネタ』を出発点にしてシナリオを作り、そこから発展させる。考えている間はテレビを見たり何かを聴くことさえできないので、座ってただ壁を見ていることが多い。
コメント欄でアイデアをクラウドソーシングする
(TikTokクリエイターとなる)前は美容師をしていたので、いろんな人が店にやってきた。その経験は確かに私にキャラクターのアイデアを与えてくれた。しかし今では、コメントをくれる人々からもアイデアをもらう。私は毎日コメントをチェックして、人が(自分のコンテンツの)何が好きなのか、何を好きではないのか、何を求めているのか、どうすれば色んな人々を体現できるかをチェックしている。
私のキャラクターの半分は、オーディエンスの提案から生まれていると言える。「兄貴キャラ作るべき!」と提案をされてキャラクターを作る、といった具合だ。私のオーディエンスたちは、キャラクター開発の非常に大きな助けになっており、彼らのおかげで今の状況が達成できた。
TikTokを使わないTikTokユーザー
私は(TikTokの)トレンドをあまりしない。通常は完全にオリジナルのコンテンツに集中している。自分に合うと思うトレンドがある場合や、紹介してデュエットしたいクリエイターがいる場合は、私がする意味がある。何かオリジナルのひねりを加えれるのであば、やる。
でも正直なところ、こんなことを言うと怒られるかもしれないが、私はTikTokをあまり見ていない。なぜなら、TikTokは今や私の仕事であり、常にやっていることだからだ。TikTokの画面をスクロールしているのは、文字通り何もすることがないときか、夜中か、コメントを読んでいるときか、誰かから何か送られてきたときだけだ。
友人たちには感謝している。彼らは今のトレンドをシェアしてくれるからだ。しかし、TikTokでは(動画がアルゴリズムによって次々と提案される)穴に入り切ってしまうし、その穴が健全ではないことを知っている。
一部のブランドは依然としてTikTokよりもYouTubeを選んでいる
ブランドが依頼してくる仕事の中では、TikTokのコンテンツを求める上で、それに追加で短いYouTubeでの短い動画を求めていたり、60秒のYouTubeでのインテグレーション広告を求めていたり、さらにはストーリーズでの3つのフレームとインスタグラム投稿をひとつ求められる、といった内容も多い。そうやってある種、すべてをカバーする形だ。しかし、ただ60秒のYouTubeインテグレーションを依頼してきて、それ以降もそれに慣れたので同様のYouTubeインテグレーションだけを依頼してくるブランドもいる。
多くのブランドはTikTokやインスタグラムさえ試していない。多くのブランドはYouTubeの方に魅力を感じている。でも、私はTikTokの広告を作るのが一番好きだ。なぜなら、私はいつもTikTokでは完全なクリエイティブな自由を求めていて、基本的には広告を自分のスケッチのひとつにしてしまうからだ。YouTubeのほうが少し難しいのだが、こちらではキャラクターを使って遊んでいないので、(コントに頼らない)何らかの方法で動画に仕上げる必要があるからだ。
Kayleigh Barber(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)