ホテルの使用済み石けんはどのようにリサイクルされるのか?

GIGAZINE
2022年04月27日 23時00分
メモ



ホテルや旅館などの宿泊施設を選ぶ際には、石けん・シャンプー・歯磨きセットなどのアメニティグッズの質も気になるという人は多いはず。こうしたアメニティの中でも最もよく使われる「石けん」がどのように処理されているのかという疑問について、テクノロジー系ニュースメディアのThe Hustleが石けんのリサイクル問題に取り組んでいる企業を中心に解説しています。

The surprising afterlife of used hotel soap
https://thehustle.co/the-surprising-afterlife-of-used-hotel-soap/

アメリカ・マサチューセッツ州のボストン大学のホスピタリティ管理学科が2019年に行った調査によると、宿泊者が最も使用するアメニティは石けんです。1~2日間という短期宿泊者を対象にした「どのアメニティを使用しましたか?」というアンケート調査では、被験者の86%が「石けん」と回答しており、2位以下はテレビ(84%)、クローゼット(81%)、机(70%)、ヘアドライヤー(61%)、コーヒーメーカー(44%)、金庫(43%)、アイロン(41%)という結果です。


アメニティが気になるという声に応えてアメニティにこだわる宿泊施設も多い一方、こうしたアメニティは「まだたくさん残っているのに捨てられる」という問題がつきもの。アメリカ単体で見た場合でも、1年間に廃棄される固形石けんなどのアメニティは4400億ポンド(約2億トン)に達すると推計されています。

大量に廃棄され続けているアメニティの石けんのリサイクルについて、2008年から取り組んでいるのがショーン・サイプラー氏。当時テクノロジー企業の重役だったサイプラー氏は年間150日も出張でホテルに泊まるという生活を続けていましたが、あるときホテルが利用者が使い切らなかった石けんをどのように処理しているのかについて疑問を抱いたとのこと。宿泊していたホテルのフロントに質問したサイプラー氏が得た回答は、「石けんは全て廃棄しています」というものでした。

この問題を何とかしようと決心したサイプラー氏は、フロリダ州オーランドに帰郷して宿泊施設を巡り、友人たちと一緒に利用者が使い切らなかった石けんを全て回収。ガレージに集めた石けんを、ジャガイモの皮むき器で表面を削ってミートミンサーで粉砕し、スロークッカーで溶かして成形し直す…… という作業を続けました。


こうしてホテルから無料で引き取った石けんから大量の石けんを再生産したサイプラー氏は、「世界では毎日約9000人もの子どもたちが衛生関連の病気で命を落としており、こうした衛生関連の病気は手洗いによって半減できる」という研究結果から、困窮している子どもたちにリサイクルした石けんを届ける「Clean the World」という民間団体を立ち上げました。

Clean the World – Recycling Soap. Saving Lives.
https://cleantheworld.org/


Clean the Worldの収益化にあたり、サイプラー氏は「1部屋あたり1月0.5~1ドル(約64~128円)で石けんを引き取る」というプランをホテルに提案。このプランはホテル側にメリットがないように思えますが、ゴミ問題に取り組みサステナブルな社会に貢献しているというアピールができるというメリットがあることから加盟するホテルは順調に増えているとのことで、2022年時点でClean the Worldと契約を結んだホテルは8000棟に達したそうです。

2008年にはサイプラー氏が手作業でリサイクルしていた石けんも、今では大型の精製機で汚れや髪の毛を取り除き、ミキサーで細かく砕いている間に漂白剤で殺菌。成形し直してから刻印して箱詰めし、衛生問題を抱えている子どもたちの元に届けられているとのことです。


サイプラー氏の設立したClean the Worldなどの貢献によって、衛生関連の病気によって命を落とす子どもたちの数は年々減少しています。


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