日本のイスは多すぎる…!(某CM風に)
良い椅子、欲しいですよね。長時間すわっても体が痛くなりづらく、見た目も好みで、なるべくお財布に優しい、そんな仕事用の椅子があったらいいなと思いつづけて、コロナ禍も早3年目。
今回は自分に合った椅子を見つける旅の第一章として、まずはいろんなブランドのことを知るところから始めてみませんか?という提案です。
というのも、僕たちがガジェットにハマったときって、そのブランドに憧れを抱いたときだったと思うんです。AppleのMacBook、ソニーのウォークマン、キヤノンのEOS。憧れのブランドができることで、ガジェット選びって一気に楽しくなりませんか?
今回は、デスクチェアの代表的な6ブランドに簡単なインタビューをしてみました。それぞれ見比べながら、ぜひ好きなブランドを見つけてみてください。
オカムラ
1.ブランドのはじまりは「飛行機・自動車開発」
国産飛行機「N-52(1953年)」や、日本初のFFオートマチック車「ミカサ(1955)」の開発。乗り物の外装に用いられたスチールの板金技術を応用することで、オフィス家具の開発にシフトしてきました。
2.在宅ワークにイチオシのイスは?
・「パラベル チェア」
・「コンテッサ セコンダ」
・「シルフィー」
・「シナーラ」
(オカムラ 髙橋卓也さん推薦)
3.ほかのブランドにはないもの、ブランドとして大切にしていること
・自社で国内に工場を持っており、製造までオカムラが行なっているところ(製造は外注している場合が多いそう)。
・「よい品は結局おトクです」というモットー。低廉でそこそこ良いものも製造できるが、長く付き合うことを考えた設計にしているところ。
・多くのモデルで「異硬度クッション」を採用していること。硬さの異なる3種類のウレタンを一体成型した座面で、前方は太ももを圧迫しない柔らかいクッション、後方はお尻をしっかりサポートする硬いクッションになっています。オカムラといえば「異硬度クッション」と言える特徴的なクッション。
4.お話を聞いて思ったこと
もしデスクチェアの教科書があれば、1ページ目で紹介されるのがハーマンミラーの「アーロンチェア」と、オカムラの「コンテッサ」シリーズだと思います。「コンテッサ セコンド」は約20万円と少々びびってしまうお値段ですが、そのノウハウを詰め込みつつ手が届く価格になった「シルフィー」もあり、たくさんの選択肢から選びやすい印象です。
「パラベル チェア」は、最近の在宅勤務に合わせたデスクチェアっぽくないデザイン。そして、「シナーラ」はチェア自体がものすごく軽く、移動しやすいのが特徴。椅子が移動しやすいだけでこんなにストレスが少なくなるんだと感動しました。
Fellowes(フェローズ)
1.ブランドのはじまりは「バンカーズボックス」
アメリカではバンカー(銀行員)が書類を保存するために木箱が使われていましたが、それを置き換える段ボール製の箱を作ったところからスタート。
2.在宅ワークにイチオシのチェアは?
(Fellowes 茅野和輝さん推薦)
3.ほかのブランドにはないもの、ブランドとして大切にしていること
・家具専門のブランドではないからこそ、奇抜な挑戦ができること。
・バンカーボックスが木箱を置き換えたように、いま世の中にあるものを違う角度から見て新しい製品を作ること。アイデアの転換力。
4.お話を聞いて思ったこと
バンカーボックスを生み出したFellowesによるデスクチェア「Elea-J」は、なんと座面が浮いていて、ゆりかごのようにゆらゆらと腰が動く設計。これによって、背面にもたれかかってもお尻が前に滑ることがなく、常に気持ちいい姿勢で仕事ができます。専門のオフィス家具メーカーにはなかなかできない、まったく新しいデザインがFellowesらしい。
コクヨ
1.ブランドのはじまりは「文房具・オフィス用品」
1905年に紙製品の製造からスタート。コクヨといえば「キャンパスノート」は誰もが一度は使ったことあるはずです。快適に仕事ができるペンやノートの開発、そしてそれらを収納するキャビネットなどの製作から派生し、今は仕事用チェアも開発しています。
2.在宅ワークにイチオシの製品は?
・「Any(エニー)」
(コクヨ 大寺博之さん推薦)
3.ほかのブランドにはないもの、ブランドとして大切にしていること
・文房具メーカーとして、仕事や学びにコミットして成長してきたメーカー。2000年代には輸入家具のインテリアショップACTUS(アクタス)を子会社化し、オフィスとホームの両方の知見があるところ。
・“座り続けるのが体にとって悪”なのではなく、“座り続けて体を動かさないことが悪”という発想があるところ。ingシリーズは、座りながら体を動かすという相反する動作を両立したチェア。
4.お話を聞いて思ったこと
コクヨの最新製品「Any」は、座面にモールドウレタンが使われており、細い見た目にもかかわらず、デスク作業が捗りそうな座り心地が特徴。コロナ禍によって、ホームはオフィスに、オフィスはホームに近づき、お互いの境界線が曖昧になったタイミングで考えられたのがこのAny。見た目の圧迫感が少なく、自宅のようなカジュアルな空間にも合うのが好印象でした。
PLUS
1.ブランドのはじまりは「事務用品」
1948年に東京で生まれた事務用品メーカー。スティックのりの「Pritt」や、消しゴムの「AIR-IN(エアイン)」などPLUSの製品は事務や学校で目にする機会が多い。
2.在宅ワークにイチオシの製品は?
・「BeneS(ベネス)」
(PLUS 岡本祐介さん推薦)
3.ほかのブランドにはないもの、ブランドとして大切にしていること
・単に「座っていて楽」ということよりも、姿勢に悩む人に向けて「良い姿勢をキープできるチェア作り」を心がけているところ。
・最小限な機能のチェアを好む人が相対的に多くなってきた。PLUSは特徴的な機能を押さえたコストパフォーマンスが良いチェアを作るようにしていること。
4.お話を聞いて思ったこと
PLUSには3万円台から買える本格的なチェアもあり、「とりあえず安価なもので1台試してみたい」というニーズを叶えやすいブランド。チェアひとつで10万円がザラな世界に対してコスパを意識する姿勢は、家具メーカーというよりは事務用品メーカーならではの考え方だと思います。
HÅG(ホーグ)PLUSが輸入・販売
1.ブランドのはじまり
HÅGは60年前にノルウェー生まれたチェアブランド。有名なベビー用チェア「トリップトラップ」や、膝立ちで使う「バランス・チェア」をデザインしたピーター・オプスヴィックなど、有名な工業製品デザイナーが深く関わっています。アートピース的に楽しめる高機能チェアが多い。
2.在宅ワークにイチオシのチェアは?
・「Capisco」
・「Tion」
(PLUS 中川大さん推薦)
3.ほかのブランドにはないもの、ブランドとして大切にしていること
・「人間の体は座るようにできていない」という考えのもと、アクティブに座るチェアをデザインしていること。
4.お話を聞いて思ったこと
ひときわ目を引くデザインの「Capisco」は、前後左右どの向きでも座れるデスクチェア。“どの向きでも座れることでこまめに姿勢を動かし、結果的に体が凝り固まらない”というコンセプトは、短時間でも充分に魅力を感じられました。
とくに背面が十字になっていることで座ったまま肩を回すことができるのは大きなポイント。北欧の家具の雰囲気を感じましたが、まさか「バランス・チェア」を作ったデザイナーとは…。美しい見た目と革新的な座り心地は、相反する要素のようで、実は同じことなのではと感じた感動の一台でした。
Photo: 山本勇磨