ペーパーレス経費精算システムや、請求書オンライン受領・処理サービスを提供しているTOKIUM(旧BEARTAIL)は4月19日、第三者割当増資により、約35億円の資金調達を実施したことを公表した。引受先はJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、インキュベイトファンド、ジャフコ グループなど。
TOKIUMは「BEARTAIL」として2012年に創業。これまでに個人向け家計簿アプリや法人向け経費精算システム、請求書受領サービスと、一貫して支出管理業務を軸に事業を展開している。2022年3月31日付で、社名を「株式会社TOKIUM」へと変更。ペーパーレス経費精算システム「RECEIPT POST(レシートポスト)」および請求書オンライン受領・処理サービス「INVOICE POST(インボイスポスト)」を、法人の支出管理クラウド「TOKIUM」としてブランドイメージを統合した。
社名の変更やブランドイメージの統合について、TOKIUM代表取締役である黒﨑賢一氏は「無駄な時間を減らして豊かな時間を創るという、時間に関する価値を訴求してきた。これは『時を生む』ということ。顧客に向けて、お約束する価値をブランド名にしたほうがいいという判断をした」と語る。
約35億円の資金調達により、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度への対応、また働き方改革やDXの推進といった、近年急速に顕在化した法人の支出管理業務における課題を解決するサービス開発、企業のSDGs(持続可能な開発目標)達成をサポートする新サービスの研究開発における投資、それにともなう採用およびマーケティング活動に充当するとしている。
黒﨑氏はこれまで事業を展開していくなかで、転換点が2つあったと振り返る。創業時に展開した個人向け家計簿アプリをリリースし、100万人以上ユーザーが付いたにも関わらず収益化がうまくいかず、事業をBtoCからBtoBに転換したことを挙げる。その一方で、BtoB向けの事業を展開するなかで、UIなどに優れたサービスが乏しく、BtoCで培ったノウハウが活用できると感じていたという。
もうひとつはBtoB向けに展開するなかで、撮影したレシートを自動でデータ化するソフトウェアの展開は苦戦し、しばらくは顧客が増えなかったが、「Dr.経費精算 ペーパーレスプラン」(現在のTOKIUM経費精算)として、スマホで撮影したあとに残ったレシートを、専用ポストに投函するシステムにしたことを挙げる。数字を間違うことが許されない領域で、テクノロジと人の力で組み合わせるサービスにたどり着いたことで、そこから急激に伸びたと振り返る。
直近では、電子帳簿保存法(電帳法)とインボイス制度という、大きな環境変化にともなう企業課題に寄り添って対応していくことに注力。支出管理にまつわる作業が全てTOKIUMで完結する状態を目指し、それをメリットとして打ち出していくという。そのうえで、経費精算から請求書支払いにまつわるデータを全てTOKIUM上で蓄積することで、データを活用した支出の最適化ということも提供していきたいという。
この支出の最適化を掘り下げて提供していくことは、ほかにはないサービスの強みになっていくのではないかと考えていると語る。特化型の支出管理クラウドを通じて、会計ソフトでは難しいとされる支出のリアルタイムでの効率化や最適化を目指していくトレンドは、すでに海外から顕在化しつつあると指摘。支出管理クラウドのサービスについて、米国ですでに展開されているが、日本独特の商習慣やローカルルールに対応することに障壁もあって参入することは難しいと考えているとし、TOKIUMとして国内における支出管理クラウドのリーダーシップを目指すとしている。
さらにその先として、グリーントランスフォーメーション(GX)にも着目。カーボンの“見える化”ができなければどれぐらいの環境影響があるかわからないなかで、経費精算を通じて支出だけではなく、カーボンの支出も記録されていると考えているという。今後企業でも開示が求められていくカーボンフットプリントの自動計算機能など、企業のカーボンニュートラルに向けたサポートしていきたいとし、まずはカーボンの見える化に取り組む考えを示した。