Apple Watchよりも先に登場したスマートウォッチの先駆けである「Pebble」について、開発者のエリック・ミギコフスキー氏がその成功と失敗について語っています。
Success and Failure at Pebble. We launched Pebble on Kickstarter 10… | by Eric Migicovsky | Apr, 2022 | Medium
https://medium.com/@ericmigi/why-pebble-failed-d7be937c6232
ミギコフスキー氏がスマートウォッチ開発スタートアップのPebbleを始めたのは、2008年のこと。ウォータールー大学の友人とPebbleを始め、当初はスマートウォッチに取り組んだ最初の企業だったそうです。着信やメッセージの受信を振動で通知したり、スマートフォンの音楽をコントロールしたり、運動や睡眠を追跡したり、ウォッチフェイス(文字盤)をカスタマイズしたりといった、既存のスマートウォッチにとって当たり前の機能はすべてPebbleが定義したものです。
その後、Pebbleは2012年にクラウドファンディングサイトのKickstarterで出資を募集し、世界中の6万8000人から1000万ドル(12億5000万円)以上を調達することに成功。これについてミギコフスキー氏は「これは我々にとって最初のブレイクスルーでした」と語っています。その後の数年間でPebbleは200万台のスマートウォッチを販売し、2億3000万ドル(約290億円)以上の売上を達成しており、数字だけ見れば順調な成功を収めているように思えます。
ミギコフスキー氏は「Pebbleはスマートウォッチという全く新しい製品カテゴリーの発明に成功しました。また、Pebbleの製品自体は今も素晴らしいものであり、一部の人は今でもPebbleのスマートウォッチを使用しています。実際、私も毎日Pebble 2HRを使用しており、市場に出回っている他のスマートウォッチと交換することはありません」と語っており、製品の出来は現行のスマートウォッチにも劣らないとしました。
ミギコフスキー氏は、自分たちのミスは「持続可能で収益性の高いビジネスを生み出すことができなかったこと」と述べており、その結果として、Pebbleは事業の一部を2016年末にFitbitに売却せざるを得なくなりました。
ミギコフスキー氏が考えるPebbleが失敗した理由は以下の通り。
・2015年に発表した「Pebble Time」の売上は予測以下で、在庫過多により現金ひっ迫に陥ることとなりました。(目標売上は1億ドル(約130億円)だったものの、実際の売上は8200万ドル(約1億円)程度でした)
・Pebble Timeは巨大な成長を求め、アーリーアダプターを超えてユーザー層を拡大しようとしました。しかし、最初は生産性を向上させるためのデバイスとして、次にフィットネス向けのデバイスとしてPebble Timeを再定義することができなかったため、「成功することができなかった」「あとから考えるとこれは明らかに愚かな考えであり、100%私の過ちでした」とミギコフスキー氏は記しています。当時はまだApple Watch発表前のタイミングであったため、生産性の高いスマートウォッチの市場が存在するかどうかは明らかになっておらず、Pebbleはスマートウォッチの中核となる機能を実現することができるフィットネス会社でもありませんでした。
・Pebble Timeのベゼルが大きすぎた点も問題だとミギコフスキー氏は考えています。ミギコフスキー氏は心の中でベゼルが大きすぎる点が問題であると気付いていたそうですが、プロジェクト全体の進捗が遅れていたため、それを変更する勇気がなかったそうです。
・2015年当時、Pebbleは将来の成長を見越して営業費用を2倍にしました。これに加えて、2015年のPebbleのラインナップには多くのテクノロジーを詰め込もうとしたため、同社の粗利益が減少し、収益性が失われてしまいました。2013年時点でのPebbleの純利益は900万ドルありましたが、2014年には収支均衡は破綻します。
その結果、Pebbleは2016年にはコストの削減・チームの維持・別製品の開発・資金調達などに奔走する羽目となり、最終的には事業を売却する事態に陥っています。ミギコフスキー氏は「根本的な問題は、『みんなが欲しいと思っているもの』を作るのではなく、『みんなが欲しいと願っているであろうもの』という不明瞭なものを作るようになってしまったことです」と語りました。さらに、ミギコフスキー氏はPebbleのCEOとして、Kickstarterを開始した当時は企業の目標を明確に説明できたものの、数年後には長期的なビジョンを持てなくなっていたとコメント。
そして、ミギコフスキー氏はスタートアップ創業者の教訓として、「長期的なビジョンを定義しながら話すことを忘れないでください。物事がうまくいっている時、その流れに巻き込まれることは簡単です。しかし、長期的ビジョンはスタートアップの創業者が困難な時期を乗り越えるために必要なものとなります」「振り返ってみると、より強力な事業計画がなければ積極的に会社を成長させるべきではなかったということでしょう。我々の場合、自分たちが市場について最もよく理解していると固執し、ハッカーのための風変わりで楽しいスマートウォッチを作り続けるべきということから目をそらしてしまいました。Pebbleの製品自体は今もなお素晴らしいものです。5年前に発売されたモデルですが、Pebble 2 HRは私がやりたいことのすべてを実現しています」と語っています。
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