1997年に発売された初代「ファイナルファンタジーVII」の3DCGアニメーションを製作するために使用されたコンピューターについて、テクノロジー関連ブログのThe Lunduke Journal of Technologyがまとめています。
The computers used to do 3D animation for Final Fantasy VII… in 1996.
https://lunduke.substack.com/p/the-computers-used-to-do-3d-animation?s=r
ファイナルファンタジーVIIは1997年に発売されたPlayStation向けのゲームで、世界で最も有名なRPGとして全世界を席巻しました。ファイナルファンタジーVIIはシリーズで初めて2Dドット絵ではなく3DCGアニメーションでレンダリングされた映像を採用しており、日本では発売から3日で200万本以上を売り上げ、全世界の累計販売本数は1330万本を超えます。
FF7 果てしない闘争の幕開け – YouTube
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開発元である当時のスクウェアが3DCGアニメーションをゲームで採用したのはファイナルファンタジーVIIが初めてですが、テストはそれ以前から行われています。
スクウェアが3DCGを初めてテストしたのは、デモンストレーション版として開発されていた「ファイナルファンタジーSGI」というタイトル。これは3DCGのファイナルファンタジーVIのキャラクターを使用したプレイアブルのデモンストレーションで、1995年8月に開催されたアメリカ最大のCGコンベンションであるSIGGRAPHで初披露されました。ファイナルファンタジーSGIの映像は以下のムービーでチェックできます。
[N64] Final Fantasy VI: The Interactive CG Game ~ SGI demo [WS] – YouTube
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ゲームメディアのPolygonはファイナルファンタジーSGIのCGスーパーバイザーとして開発に携わった橋本和幸氏にインタビューを行っており、デモ版のタイトルに「SGI」が含まれる理由を「CGをSGIのワークステーションで作成していたため」と説明しています。
具体的には、スクウェアはSGI Onyxを3DCG作成に使用していた模様。SGI Onyxは1993年に発売されたマシンで、マイクロプロセッサーであるMIPS R4400の動作周波数は初期モデルが100~150MHzで、後期モデルは200~250MHzです。メモリ(RAM)は業界標準ではない16MB/64MB/256MBのバリエーションがある独自の200ピンSGI RAMモジュールを採用しており、メモリボードには32個のメモリモジュール用スロットがあるため最大8GBのRAMとして処理可能となっています。さらに、ラックマウントバージョンならば16GBのRAMを実現することもできる模様。これが1990年代半ばのPCのスペックであったことを考えると、「あまりに印象的なスペック」とThe Lunduke Journal of Technologyは記しています。
しかし、SGI Onyxの真に優れた点はグラフィックシステムの「RealityEngine2」であるとThe Lunduke Journal of Technologyは指摘しています。SGI Onyxは12個のIntel i860XPを採用していますが、これはIntel製のx86チップとは完全に異なるRISCアーキテクチャを採用したCPUです。SGIはこの12個のCPUをRealityEngine2のジオメトリ計算に使用しました。
なお、SGI Onyxに採用されているRealityEngine2の前身であるRealityEngineは、SGIの3Dグラフィックスハードウェアアーキテクチャーであり、NINTENDO64のゲーム開発に使用された端末としても知られています。
SGI OnyxはBSD拡張機能を備えたUNIX System VベースのOS・IRIXを搭載しており、ファイナルファンタジーSGIの作成に使用されたのはIRIXのバージョン6.0であるとされています。
以下はIRIXバージョン5.3のスクリーンショット
そんなSGI Onyxの価格は、構成によって異なるものの10万~25万ドル(約1200万~3100万円)にもおよぶとThe Lunduke Journal of Technologyは指摘。
そして、これがファイナルファンタジーVIIの開発現場の写真。
この写真に写り込んでいる左端のモニターの画面をみると、IRIXのバージョン6を実行していることがわかります。写真の中にSGI Onyxが写り込んでいるわけではないため断言することはできませんが、ファイナルファンタジーVIIでもファイナルファンタジーSGI同様に開発にSGI Onyxが使用されていた「可能性が高い」とThe Lunduke Journal of Technologyは指摘。
The Lunduke Journal of TechnologyはSGI Onyx2の可能性もあるとしながら、「ファイナルファンタジーVIIの開発スケジュールと「SGI Onyx2が1996年後半に発売されたという事実を照らし合わせると、使用されていたマシンはSGI Onyxである可能性が最も高い」と指摘しています。
さらに、開発現場に並ぶモニターの真ん中に映し出された映像を見て、The Lunduke Journal of Technologyは「これはGeneraです」と指摘。Generaは1980年代初頭にSymbolicsによって開発された非常に印象的なOS。GeneraはMITで開発されたLISPのフォークで、1982年にはGenera上に3Dに重点を置いたグラフィックソフトウェアを構築するためにSymbolics Graphics Divisionという企業が設立されています。Generaは「スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!」「天才アカデミー」「フリー・ウィリー」といった1980年代から1990年代半ばにかけて多くの映画の製作に使用されたグラフィックツール。そのため、The Lunduke Journal of Technologyは「スクウェアの開発チームがファイナルファンタジーVIIで使用される3Dの開発およびレンダリングにGeneraを搭載したワークステーションを使用したということは、絶対に理にかなったものです」と記しています。
なお、ファイナルファンタジーVIIの開発時期を考えると「Generaのバージョン8.xを搭載するSymbolics XL1201を使用していた可能性が高い」とThe Lunduke Journal of Technologyは指摘。
さらにその隣にあるファイナルファンタジーVIIの起動画面を映し出したモニターは、「FrameThrower」と呼ばれるGenera向けのソフトウェアを実行しています。
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