カエルの病気が流行すると人間も病気になる、一体なぜ?

GIGAZINE



気候変動の悪化で58%の感染症が激化していることが示されるなど、地球環境や生態系と人類の健康は切っても切り離せない問題です。新たな研究により、カエルの減少とマラリアの流行の間には密接な関係があることが判明しました。

Amphibian collapses increased malaria incidence in Central America – IOPscience
https://doi.org/10.1088/1748-9326/AC8E1D

The Frogs Vanished, Then People Got Sick. This Was No Harmless Coincidence. : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/the-frogs-vanished-then-people-got-sick-this-was-no-harmless-coincidence

Malaria: Amphibian deaths in parts of Central America may have caused the infection to surge | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2338764-amphibian-deaths-in-central-america-led-to-malarial-mosquito-surge/

1980年代、中央アメリカに位置するコスタリカやパナマの生態学者たちは、野生のカエルやサンショウウオなどの個体数が着実に減少していることに気がつきました。これは、両生類にとって致命的な真菌感染症であるカエルツボカビ症が主な原因です。

by Forrest Brem

カエルツボカビ症が世界の両生類に与えた打撃は壊滅的で、1980年代からの40年間で200種のカエルが真菌感染症で絶滅したとされているほか、アジアと南米だけで少なくとも501種が数を大きく減らし、90種が絶滅したとする報告もあります。そのため、研究者の中にはカエルツボカビ症を「病気による生物多様性の損失としては最悪のケース」と位置づける人もいます。

ある特定の生き物が急激に減少したり絶滅したりしてしまうと、生態系が乱れて環境に大きな影響が出ますが、両生類の激減も例外ではありません。特に、オタマジャクシやサンショウウオの幼生はエサとして蚊の幼虫であるボウフラを大量に消費するため、カエルが減ってしまうと蚊が増えてマラリアなど蚊に媒介される感染症がまん延する可能性があります。

今回、カリフォルニア大学デービス校の環境学者であるマイケル・スプリングボーン氏らの研究チームは、南米でカエルツボカビ症が流行した時期と、この地域でマラリアの発生率が急増した時期が重なっていることを突き止めました。

以下は、コスタリカとパナマにおけるカエルツボカビ症の広がりを示す地図です。コスタリカでは1980年代から1990年代にかけて、パナマでは2000年代にかけて両生類の個体数の大きな減少が記録されました。


次に、以下は年間総マラリア患者数の推移を表すグラフです。青線で示されたコスタリカの線グラフと黄土色の破線で示されたパナマの線グラフを見ると、両生類が大きく減少してから数年後のタイミングでマラリアの患者が急増していることが分かります。


研究チームが回帰分析モデルを使って両生類の減少と感染症増加の因果関係を分析したところ、コスタリカとパナマで増えたマラリア発生件数のうち2分の1から3分の2は両生類の減少によるものであるとの結果が得られました。マラリアを流行させたその他の要因としては、洪水の影響も挙げられるとのことです。

なお、カエルツボカビ症が流行してから両生類の数はあまり回復していませんが、コスタリカやパナマでのマラリア発生件数はピーク時に比べてかなりの落ち着きを見せています。これは、殺虫剤の散布といったマラリア対策の効果だと研究チームは考えています。

しかし、マラリアの流行が落ち着いただけでは安心できません。研究チームは論文の中で「科学者や意思決定者がこうした過去の出来事の影響を考えない限り、規制が十分に行われないまま生き物が取引されて両生類の新しい感染症が世界中に広がるといった、さらなる災害が起きる危険性があります」と述べて、さらなるリスクについて警鐘を鳴らしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました