サブスク事業に野心を抱くも、ガネットの前途は多難か?:USAトゥデイ有料化から数カ月経って

DIGIDAY

ガネット(Gannett)は、2月24日に出した最新の決算報告書のなかで、2021年にいくつかの新しいデジタルサブスクリプション製品の立ち上げの土台作りをしたあと、2022年のデジタルサブスクリプションとデジタル売上全体の両方について強気の見通しを明らかにした。だが、これまでの経過と短期的な軌跡からは、より弱気な見方になるのかもしれない。

第4四半期決算報告書によると、ガネットは2025年までにデジタル版購読者を600万人集めるという目標を掲げている。購読者を増やす原動力となるのはUSAトゥデイ(USA Today)だろう。USAトゥデイは、2021年7月にペイウォール設置によるサイト全体の有料化を開始。その後、クロスワードパズルゲームを購読者限定で提供し、さらにスポーツ専門の「スポーツ+(Sports+)」を提供し始めた。一方、ガネットのデジタル版のみの購読者は、これらのサービス開始以来20万人しか増えていない。

2021年第2四半期の決算報告書によると、ガネットはUSAトゥデイの有料化とバーティカル製品導入の前に、すでに合計約140万人のデジタル版購読者を抱えていた。2021年末には、ガネットのデジタル版購読者の総数は約160万人に達しているが、その大部分はUSAトゥデイではなく200以上あるガネットの地方紙にお金を払っている人たちだという。

デジタル版の購読料収入は、2021年末までに1億ドル(約115億円)に達しているが、これはガネットの2021年の購読料収入全体の8%、全体の売上の3%に過ぎない。これに対し、同社の印刷版購読料収入(印刷版とデジタル版のバンドルを含む)は11億ドル(約1265億円)以上に達し、購読料収入の残りの92%、同社の年間総売上の36%を占めている。

購読者の増加はゆるやかな予測

ガネットの購読者の増加は、2022年もそれほど大きく加速することはなさそうだ。同社は最新の決算報告で、2022年の第1四半期に10万人、その後の3つの四半期でさらに30万から50万人の購読者を追加し、200万から220万人の購読者で今年を終えると予測している。このペースで行くと、2025年末までに少なくとも380万人の購読者を追加する必要がある。つまり、ガネットの購読者増加率は、2022年の60万人台から倍増させる必要があり、2023年、2024年、2025年の年平均で126万人以上が必要となる。

要するに、2022年にかなり急な坂を登らなければ、成長を遂げることはできないのだ。さらに、競合するいくつかのニュースパブリッシャーと比較すると、USAトゥデイは、1996年に有料化したウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)からは25年遅れ、2011年に有料化に踏み切ったニューヨーク・タイムズ(The New York Times)からも10年遅れていることがわかる。またガネットはその競合他社のコンテンツにも注目しているようで、予定の購読者数を獲得するために、競合他社のプレイブックからいくつかのページを引き出すことを期待している。

2021年、ニューヨーク・タイムズは、2025年までに1000万サブスクリプションという目標を4年早く達成した。サブスクリプションの大部分(約92%)は、中核となるニュース、料理、ゲーム、ワイヤーカッター(Wirecutter)などのバーティカル、および新たに買収したスポーツブランド「アスレティック(The Athletic)」のデジタル版のみのサブスクリプションだという。ニューヨーク・タイムズは、デジタル版だけで約7億7400万ドル(約890億円)の売上を得ている。ウォールストリート・ジャーナルは、12月31日に終了した第2四半期について米証券取引委員会(SEC)に提出した最新書類で、デジタル版のみの購読者は290万人で、全購読者の81%を占めていると報告している。ウォールストリート・ジャーナルの親会社であるニューズコープ(News Corp)は、同紙の個別の購読料売上は明らかにしていない。

NYTを踏襲した戦略の是非

ガネットは、USAトゥデイが単に有料化の波に乗り遅れたこと以外にも、主に地域密着型のパブリッシャーであるという課題に直面している。USAトゥデイは全国規模のパブリッシャーだが、地域と全国のニュースを配信するUSAトゥデイ・ネットワーク(USA Today Network)が扱う報道にはローカライズされたアプローチを採用しており、そのことが読者の購読意欲に影響を与える可能性はある。

FTIコンサルティング(FTI Consulting)で通信・メディア・テクノロジー部門のコーポレートファイナンス担当マネージングディレクターを務めるジャスティン・アイゼンバンド氏によると、全国規模のパブリッシャーと大都市や地方都市のパブリッシャーでは、パブリッシャーのデジタル購読者の通過率(ユニークビジター数と有料購読者の比率)は大きく異なる傾向があるという。ニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルのような全国規模のパブリッシャーの通過率が6~8%のあいだで推移し、ボストン・グローブ(Boston Globe)のような大都市部のパブリッシャーの通過率は4~5%となっているのに対し、地方都市のほとんどは1~3%であり、これは地方紙が購読料を払ってもらえる読者のプールが小さいことを示している、とアイゼンバンド氏は述べる。

それだけでなく、トランプ大統領が去ったあとの低迷により、国内ニュースのコンテンツへのトラフィックは落ち込み、過去6カ月の平均で約25%減少したとアイゼンバンド氏は話す。一方、ローカルニュースの減少は20%にとどまっているが、どちらの減少もデジタル購読ビジネスに影響を与えやすく、特に2020年と比較すると、ニュースサイトへの購読は業界全体で50~60%減少したと同氏は語る。

これは、ニューヨーク・タイムズの2021年度通期の最新決算報告書のなかでも見られる状況だ。デジタル版のみの購読料売上は前年同期比29.4%増だった。しかし、ニュース以外のデジタル版のみの商品(ゲーム、料理、ワイヤーカッターなど)の購読料が前年比46%の増加であるのに対し、メインのニュースの成長率は27.7%に過ぎなかった。

「ニューヨーク・タイムズでは、中核となるニュースよりも、こうしたバーティカル製品による成長のほうが大きい。つまり、中核となるニュースはまだ成長しているが、ニュース全体では確実に減速している」とアイゼンバンド氏はいう。

ガネットの戦略は、ニューヨーク・タイムズを踏襲している。同社は、USAトゥデイ・スポーツ+会員やクロスワード会員など、サブスクリプションでもバーティカルに焦点を絞ったアプローチをとっている。ガネットの最高マーケティング責任者(CMO)マユール・グプタ氏は2022年、USAトゥデイの硬派なニュース報道とは別に、エバーグリーンコンテンツを再パッケージ化した、トピック別の有料製品を作ることに投資する予定であり、そのほとんどを読者は無料で利用できるようになるという。

2022年のデジタル購読者数増加の主要戦略として、すべては戦略の実行に帰結するとアイゼンバンド氏は語る。「多くの都市型新聞は、バーティカルを取り上げようとするアプローチを取った。それはあまりうまくいかなかったが、ニューヨーク・タイムズは明らかにうまくいっている。すべては実行にかかっている。主要製品とカニバライズしたくはないからだ」。

メーター制ペイウォールの是非

USAトゥデイにメーター制ペイウォールがないことは、新規購読者の獲得スピードにも影響すると思われる。しかし、同社のデジタル広告とデジタルマーケティングサービスをまとめると総売上の25%になることを考えると、全国および地方メディアのサイトのトラフィックと訪問者数の流れをメーター制で断ち切ることは、マイナスの影響を与える可能性がある。

「これは、サブスクリプションをどれだけ積極的に獲得したいかによって役割を担うものだ。というのも、非購読者の収益化が本当にうまくいっているのであれば、それほど強力に推し進めてはならないからだ」とアイゼンバンド氏は語った。

[原文:Months after putting up USA Today’s paywall, Gannett has big ambitions for digital subscriptions but a long road ahead

KAYLEIGH BARBER(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:猿渡さとみ)

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