ある日突然、「学校へ行きたくない」と親に相談する子どもはめずらしくありません。文科省の調査によれば、2020年度に不登校した小中学生は約19万人。少子化で子どもの数が減るなか、8年連続で不登校は増え続けて過去最多を更新しました。
しかしそれも氷山の一角です。不登校にはカウントされないものの、学校で苦しんでいたり、教室に入れなかったりする子どもも多いからです。そうした子どもたちは「隠れ不登校」とも呼ばれており、日本財団の調査では中学生の1割、推計33万人いると言われています。
増加の背景には、コロナ禍で生活環境が変わったこと、いじめの低年齢化などが指摘されています。どんな子どもでも、どんな家庭でも、不登校は起きます。子どもから「行きたくない」と言われたときの対応は、親のみならず、先生や祖父母など、子どもが周囲にいる大人たちには知ってほしいことです。
そこで、今回はもしものときに備えて、状況に応じた対応のしかたをお伝えしたいと思います。
「行きたくない」と言われたら
やることは、ただひとつです。「わかった」と言って、その日は休ませてあげてください。逆に子どもを追い詰めてしまうNGワードは「ようすを見てみよう」や「明日だけ、がんばってみよう」です。「行きたくない」と子どもが伝えるときは限界まで我慢したときです。崖から飛び降りるような気持ちであり、命に関わるSOSなのです。親は「休み癖がつくかも」と心配しますが、休ませる勇気が必要です。
多くの子どもの場合、「わかった」と言われれば安心して数日間は休み、また学校へ通い始めます。「疲れたら休もう」と思えれば、心に余裕をもって通えるからです。逆に「休みたい」と言ったタイミングで無理をさせると、子どもは追い詰められてしまいます。
数日間の休みのあいだはどうすればよいのか。「かぜをひいた時と同じように」を心がけてください。家の中で遊んだり、友だちと会うのは問題ありません。勉強は自主的にやる分はさせてもいいですが、勉強を強いると休みが長引きます。ゆっくり休めんでリフレッシュするのが大事だからです。
「行きたくない」と言われる前に親ができること
「行きたくない」と子どもが言う前に、その兆候に気づきたい人は多いはずです。
ところが、それは意外と難しいのです。まず子ども自身は、自分のストレスに気づきづらいです。ただし言葉にはしなくても「体からSOS」が出します。体から出てくるSOSとは、体調不良、食欲不振、不眠、情緒不安など。こうした兆候は、たくさんの種類がありますが、違和感に気づくのは、本人よりも親のほうです。親は生まれたときからその子を見ており、異変に気がつきやすいのです。気になったタイミングで、子どもに声を掛けたり、最近、起きたことをふり返って考えてみましょう。
さらに、ふだんの生活から「雑談」ができてれば、なおよいです。話を聞いてもらうことは、子どもにとって一番の発散になります。ところが、子どもの話を聞く時間を充分に作れる親は少ないはずです。つねに家事や仕事に追われているでしょう。そこで「10分間だけ」と時間を決める。あるいは料理中や就寝前だけ、子どもの話を否定せずに聞く、というのも一つの手です。ふだんから会話を重ねていると、さらに異変に気がつきやすくなります。
なお聞き役もストレスがたまりますから、子どもと離れる時間や趣味の時間など「親の息抜き」も大切にしてください。