「気にしたらダメだ。ストリーミングを続けること」:「 ヘイト・レイド 」を受け続ける、あるストリーマーの告白

DIGIDAY

この1年間、Twitch(ツイッチ)のストリーミングサービスは、匿名ユーザーによる「ヘイト・レイド(hate raids)」攻撃の増加に対処しなければならなかった。ヘイト・レイドとは、女性や有色人種など社会的に周縁化された人々を標的にして、匿名のユーザーが侮辱や嫌がらせのコメントでストリームチャットを埋め尽くす行為だ。同社は今年に入って安全とプライバシーに関するツールとポリシーを刷新し、強化した。

ヘイト・レイドは、社会的地位の低いゲームクリエイターが直面する、特有な課題を浮き彫りにしたが、それは氷山の一角にすぎない。ゲームやeスポーツの世界では、女性のクリエイターや有色人種のクリエイターたちは長いあいだ、オーディエンスの偏見や先入観に晒されながら、立ち振る舞わなければならなかった。

匿名を条件に赤裸々に業界の裏事情を語ってもらう「告白」シリーズ。今回はTwitchストリーマーとTikTokクリエイターとして有名なマイノリティの女性に取材をし、プラットフォームが提供するツールと彼女のコミュニティからのサポートの両方を通じて、どのようにヘイト・レイドに対処しているのかを話してもらった。

以下の会話は、わかりやすくするために編集および要約されている。

◆ ◆ ◆

――Twitchでのヘイト・レイドの最初の経験について教えてほしい

ヘイト・レイドが一般的な話題になる前に、ほかのストリーマーたちから嫌がらせ攻撃を受けたことがあるので、Twitchではこういった攻撃が普通のことだと思っていた。これが新しいことだとは知らなかった。昨夜、2時間ライブストリーミングをしていて、5回もヘイト・レイドを受けた。(そのひとつは)ストリームを開始する前、スタート画面に入る前に受けた。

同じメッセージが繰り返され、チャットを埋め尽くすスパム行為のヘイト・レイドを受けたことが一度あった。今ではそれが発生した場合は常に、フォロワーのみのモードまたはサブスクライバーのみのモードにするようにしている。相手は(ストリーマーが)嫌がることをわかっており、こちらもやはり心理的に影響がある。そのためストリームを停止するまで向こうはヘイト・レイドを止めない。その結果ストリーミングを停めたクリエイターたちが何人もいる。ストリーミングを完全に止めた人々がいる。

――コミュニティはどのように反応したか?

気にしたらダメだ、ストリーミングを続けること。自分に言い聞かせようとした。私がストリーミングをしているときは、オーディエンス全員が楽しい時間を過ごし、ストリームを楽しんでもらうことが私の目標であり、もし私がヘイト・レイドを心配していたら、それはできない。私にはとても優秀で、最高のモデレーターたちもいる。彼らは本当に迅速に対処してくれ、対応を助けてくれる。その点では私はとても幸運だ。私のモデレーターたちは本当に素晴らしい(モデレーターとは通常、オーディエンスコミュニティのメンバーであり、ストリーマーによって権限を与えられる)。

――オンラインハラスメントと戦うためのツールには他に何かあるか?

TikTokとYouTubeでは、見たくない言葉をキーワードとして入れることができる。Twitchもそうだと思う。TikTokでは、誰かがその(事前登録された)キーワードを使うと、自動的にコメントをブロックする仕様になっている。私が最初に同プラットフォームで注目を集めたとき、多くの若いユーザーたちが「ストリームで5ドルせがんでた女の子じゃない?」とコメントしてきた。なのでこの「5ドル」「あのストリームの女の子じゃない?」を禁止フレーズとして登録した。YouTubeも同じだ。YouTubeは、やや攻撃的すぎると思われるコメントを表示させず、それらを「レビュー中」としてキープする。

TikTokとYouTubeでは、誰かがコメント内で大量の記号を使っていると、自動的にレビューのために保留される。しかしTwitchでは、誰かがひどい単語を隠すために記号を混ぜて入力すると、それがモデレーションのためのボットを通過してしまう。だから、ヘイターたちが別の方法で綴ってくるだけなので、(キーワードは)あまり役に立たない。

――ヘイト・レイドの背後に誰がいるか心当たりは

私が観測するところでは、これは巨大なボットで、ストリーマーたちを攻撃するようにプログラムされているだけだと思う。そしてクレイジーなのは、私がストリームで自分のアイデンティティについて話していた瞬間に、3回のヘイト・レイドが連続して襲ってきた。ちょうど自分のアイデンティティについて語った直後に。しかし、それが理由なのかどうかはわからない。理由は何にでもあり得ると思う。

――これらのヘイト・レイド以外で、オンラインハラスメントを経験したことはあるか

私が大きなトーナメントに出場しているときには(これらは私が直接経験してきたことだが)、トーナメント側はチャットのモデレーション(抑制や調整)をしない。大物の女性選手や有色人種の選手たちがカメラに映ると、ライブチャットでは即座にヘイトの言説が語られる。私はいつも疑問に思っていた、なぜ(トーナメント主催者たちは)これを調整しないのか。クリエイターをストリームに招待し、イベントの可視性を高めてもらいながら、ストリーム上ではこれらのクリエイターについてどんな発言も許可している。

――プラットフォームはクリエイターをこの種の嫌がらせから守るためにもっと努力すべきか? なぜ彼らはまだ対処法を見つけていないのか?

Twitchはこれらのイベントをちゃんと運営・管理する方法を見つける必要がある。無視しても状況は改善されないからだ。彼らは解決策を考え出そうとしていると思うが、状況はこれまでになかった特有なものだ。サイト全体で多数のモデレーターにチャットの調整をさせる以外に、彼らがこの問題の解決策を見つける方法がわからないし、一度にストリーミングする人があまりにも多いので(モデレーターによる解決は)不可能かもしれない。

[原文:‘Don’t let it bother you, just continue streaming’: Confessions of a Twitch streamer who received ‘hate raids’

Alexander Lee(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

Source