タトゥー が、次の大きなビューティカテゴリーに:投資や買収の動きが加速

DIGIDAY

タトゥーが急速にビューティ業界のイノベーションとアドプションの次の最前線になりつつある。

2021年半ば以降、タトゥーが投資家や戦略的買収者から注目を集めている。2021年7月、エフェメラル(Ephemeral)という半永久的なタトゥーブランドが、ローンチから4カ月で2000万ドル(約23億7500万円)の資金を調達した。同ブランドではおよそ1年程度でタトゥーが消えるという、体が代謝する独自のタトゥーインクを提供している。続いて1月19日には、ライターやカミソリ、ペンなどの使い捨て消費財メーカーであるビック(Bic)が、同じく半永久的なタトゥーブランドのインクボックス(Inkbox)を買収した。そして2月には、タトゥーメンテナンス用スキンケアブランド、マッドラビット(Mad Rabbit)が400万ドル(約4億7500万円)のシードラウンドを契約している。

タトゥーを取り込むビューティ業界

ウェルネスの場合もそうだが、ビューティ業界はカテゴリーを取り入れてビジネスの提案として美化することに長けている。タトゥーもその一例だ。マイクロブレーディングやリップブラッシングのような半永久的なタトゥーがビューティサービスであることを考えれば、それは多くの点で理にかなっている。また自分の名を冠したビューティブランドを作り、KVDビューティ(KVD Beauty)としてリローンチしたもっとも有名なキャット・ヴォン・D氏といったタトゥーアーティストだけでなく、タトゥー自体がひとつの芸術の形態とみなされることが多い。

「私たちは、永久的なメイクアップを専門とするスタジオに参入している。それは私たちのビジネスと私たちが対象とするオーディエンスにとって、ますます重要な部分になりつつある」と語るのは、マッドラビットの共同創業者であるオリバー・ザック氏だ。マッドラビットではタトゥーを入れた直後の数週間の治癒過程を向上させ、色を保持するための、デイリーボディローションや日焼け止め、ボディウォッシュなども提供している。

タトゥーに対する偏見の払拭

マッドラビットなどのブランドは、成長中のセグメントをうまく活用している。たとえば、イエルプ(Yelp)の2022年ビューティトレンド予測レポートによると、2021年1月から2021年10月の間にリップブラッシングの検索は前年比130%増加した。2015年の市場調査会社ハリス・ポール(Harris Poll)の調査によると、タトゥーを入れるアメリカ人が増えており、29%が当時少なくともひとつはタトゥーを入れていた。タトゥーをひとつ入れている人はX世代では36%強に対し、ミレニアル世代では47%となっている。かつては、過去に投獄された人、バイク乗り、肉体労働者といった人々の間だけで人気のある身体改造と考えられていたものが、現在ではあらゆる階層の人々の間で流動的に用いられるものとなり、悪いイメージが払拭されつつある。マイアミ大学と西オーストラリア大学ビジネススクールの研究者らが発表した2018年の研究では、調査対象となった米国のタトゥーあり・なしの参加者の間で、収入や雇用水準に統計的な差は見られなかった。

ビックのCEOゴンザルヴ・ビック氏は、インクボックス買収に関するプレスリリースで、「今日の消費者は新しさを渇望し、クリエイティブな自由を求めていて、本物を体現している」と述べている。「インクボックスのテンポラリータトゥーやマーカーは、個人が常に進化し、流動的な自分自身でいられるような力を与えてくれる。今回の買収は本当の自分を見せることを恐れない人に、より革新的で高品質なツールをもたらす」。

6500万ドル(約75億1300万円)のインクボックスの買収は、すでにテンポラリータトゥーマーカーのブランドであるボディマーク・バイ・ビック(BodyMark by Bic)が含まれている同社のスキンクリエイティブのポートフォリオを拡大するものだ。インクボックスの半永久的なタトゥーは、肌に安全で簡単に施すことができ、最長で2週間ほど持つ。自分でカスタムデザインを作ることもできるし、アーティストがデザインした1万点のタトゥーから選ぶこともできる。インクボックスは、タイラー・ハンドリー氏とブレイデン・ハンドリー氏の兄弟が2015年に創業した企業だ。

多様でインクルーシブな文化の象徴

マッドラビットは共同創業者のオリバー・ザック氏とセロム・アグビトール氏が600ドル(約7万円)を投資してローンチし、ビジネスリアリティ番組「Shark Tank(シャークタンク)」に出演するまでは自力で運営していたが、番組出演によってマーク・キューバン氏が50万ドル(約5900万円)を出資して12%の株式を取得した。キューバン氏は直近のシードラウンドを含め、その後の資金調達ラウンドでさらに投資を行った。この投資は、広告、コンテンツ制作、そしてマーケティング・シニアバイスプレジデントのエリン・マレー氏といったシニアリーダーの雇用に充てられている。マッドラビットは2022年に売上を300%成長させることを見込んでいるが、マレー氏いわく、小売店との提携の可能性は含まれていないとのこと。またマレー氏によれば、マッドラビットの主要顧客は25歳から45歳の間の男女ほぼ同数で、顧客の80%が1~5個のタトゥーを入れている。

またマレー氏は、タトゥーを入れている人の幅広さは、タトゥーが多様でインクルーシブな文化であることを意味しており、インクルーシブなコミュニティやライフスタイルのブランディングをめぐる今日のビューティのテーマとうまく交差している、とも指摘している。

「タトゥーを我々のブランドへの入り口にして、毎日のスキンケアという(ボディケアの)分野に参入し、展開していきたいと考えている」とザック氏は述べた。

[原文:A flurry of investments and acquisitions position tattoos as the next big beauty category]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:黒田千聖)

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