美しすぎるスマートウォッチ「Grit X Pro」で、生き物としてちょっと強くなれました

GIZMODO

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ポラール(POLAR)のスポーツウォッチの中でも最強にタフな「Grit X Pro」モデルをお借りしました。レベル的には「アウトドアスポーツ上級〜中級者向け」と位置付けられているだけあり、アウトドアアクティビティに特化した機能がギッシリ詰め込まれています。

初心者のわたしにはオーバースペックかも…?と思いながらもランニングのトレーニングに使ってみたら、徐々に耐久力が向上して、生き物としてちょっと強くなれました

もっと鍛えたい。そんなときに出会いは訪れた

コロナが流行し始めてから、以前より健康に気を使うようになりました。まあ、巣ごもり生活が続いて太ってしまったのが運動を始める直接のモチベーションだったんですけどね。そこで、6年前ぐらいに一時期ハマっていたランニングを再開しました。

始めた当初は走行距離を記録するだけで満足していたんですが、走り慣れてくると今度は「速く走りたい」とか「遠くまで走りたい」とか、だんだん欲が出てくるんですね。ちょうどそんなステップアップしたい段階に差し掛かっていた矢先に、ポラールのGrit X Proを試す機会に恵まれました。

わたしがGrit X Proを手放せなくなったポイントは、

  • ・光学式心拍センサーの精度が高い
  • ・データに基づいて生産的なトレーニングオプションを提案してくれる
  • ・「Polar Flow」アプリでトレーニングの成果と身体能力を俯瞰できる

この3つです。

ゆるすぎず、ハードすぎない適切なトレーニングをする→たっぷり寝る→次の日の生産的なトレーニングにつなげる、という正の連鎖を6週間ぐらい繰り返した結果、心肺機能を強化でき、ランニングも前よりもずっと楽にこなせるようになりました。

以下、詳しくお伝えします。

POLAR Grit X Pro

これは何?:ポラール(POLAR)のGPSアウトドアスポーツウォッチ

価格:73,700円(税込)

好きなところ:美麗なデザイン。バッテリーが長持ちで、充電も速い。5種類のパフォーマンステストで自分の体力を客観視できる。GPSがすぐつながって途切れない。音と振動の組み合わせによって、直感的なトレーニング指導や道案内をしてくれる。

好きじゃないところ:ケースサイズが47mmの一択…。小さめバージョンがあればもっと良かったな。

とにかくデザインが美しい

ステンレススチール製べゼルはラグ(ベルトと繋がっている部分)と一体化したデザイン。美しいし、堅牢性が高い

数多あるスポーツウォッチの中で、なぜGrit X Proがよかったのか?正直なところ、わたしはまずこのデザインと色に惹かれました。ラギッドとシンプルモダンの絶妙な融合。ベゼルに方位が刻印してあるのもかっこいい。3種類のカラーバリエーションも素晴らしくて、どれを選ぶか真剣に迷ってしまうほどです。

ディスプレイには傷や衝撃に強いサファイアガラス、ベゼルにはステンレススチールを使い、ミルスペックの堅牢性を実現しています。水深100mまで沈めてもOKだし、使用温度条件は-20°~50°Cで、エクストリームな環境にも対応しています。

夜明け(空が白み始める時間)と日の出、日の入と夕暮れ(日没後のトワイライトタイム)の時間を確認できます。季節の移ろいをデータから感じ取れるのは新鮮。カラータッチディスプレイは常時ONで、薄暗くても見やすさはバッチリ

半透明メモリインピクセル(MIP)ディスプレイは、太陽光の下でも見やすいです。左:アークティックゴールド、右:ノルディックカッパー

物理ボタンは左に2つ、右に3つ。運動中に便利だし、直感的な操作が可能。赤印の中央ボタンはスタート/決定

毎日どれだけ体を動かしたかを可視化してくれます。目標を100%達成するとやっぱり嬉しいですし、「今日はあんまり動いてないから途中下車して一駅分歩いてみるか」みたいな行動変容を促してくれます

内蔵GPSは4つの衛星測位(GPS, GLONASS, Galileo, みちびき)に対応。山の中でも問題なくつながり、途切れませんでした

個人的に刺さったのは新しいルートナビゲーション機能。「Komoot」アプリで作成したルートをスマートウォッチ上に読み込んでおくと、曲がる方向を矢印で示してくれます。方向オンチでも、左右盲でも、地図が読めなくても迷子にならない!

最新モデルだけあって、バッテリー寿命はポラール製品では最長の100時間(省電力モード時)です。わたしはほぼ毎日何らかのアクティビティをトラッキングし、ディスプレイも常時ONにしっぱなしでしたが、それでも充電は週1回で事足りました。充電時間も短縮されていて、バッテリー残量9%からフル充電までにかかった時間は有線充電で1時間20分。速いので、うっかり電池切れになりそうになっても手早くチャージできてストレスフリーでした。

中身はパーソナルトレーナー

ハード面は申し分なし。ではソフト面は?

そもそも「ランニングのレベルを上げたい」と思っていた矢先だったので、オンラインランニングプログラムに参加したり、ジムに入会したりといろいろランニングアクティビティの裾野を広げてきてはいたんですが、具体的に日々どんなトレーニングをするかは自分の惰性と直感に頼っていました。

その点、Grit X Proは健康状態をトラッキングして、5種類のパフォーマンステストを通じて身体能力を測定してくれます。さらに、その健康状態とパフォーマンスレベルに応じて効果的なトレーニングメニューを提案してくれます。ベースにしている健康指数は、心拍数です。

すべては心拍数から始まる

ポラールって日本ではあまり認知されていないかもですが、1977年にフィンランドの科学者が創業した心拍計メーカーの草分けです。

Grit X Proのバックカバーの中央に埋め込まれている10個のLEDライトが光学式心拍センサーです。3色使われていて、緑・赤・黄の光の異なる波長がそれぞれ異なる深度で皮膚下の血管のサイズを計測するので、より精度の高い心拍計測を可能にしているそうなんですね。

実際にGrit X Proを使ってみて、心拍数の変化に素早く反応すると感じました。たとえば、ジムで「ゾーンロック機能」を試した時のこと。特定の心拍数の閾値(この場合は140〜160bpm)を超えないようにトレッドミルで走ったんですが、ところどころ心拍数がスパイクしてる部分が見て取れますよね。これ、隣のトレッドミルにすごい速そうな人が乗ってきてドキドキした時、または時計を見上げて「時間が足りない!」と焦った時などの反応が顕著に現れているんです。

また、野外で同じコースを同じシューズで走ってみても寝不足だと心拍数が高めに出たりしたので、心拍センサーの精度はかなり高いと感じました

長距離ランニングの際のPFC消費の割り合い

Grit X Proにはこの光学式心拍センサーのほかにもGPS、気圧式高度計と加速度センサーが備わっています。それらのセンサーが測定するデータは多岐に渡り、歩数・アクティブ時間・睡眠時間・消費カロリーなどベーシックなところはもちろんのこと、運動時に消費したカロリーのうち三大栄養素(PFC=タンパク質、脂肪、炭水化物)が占める割合いまで教えてくれます。

無料で使えるPolar Flowアプリ(ウェブ版iOS版Android版)がこれらのデータを見やすくまとめてくれるほか、週単位と月単位でレポートも作成してくれます。

酒好きが(あまり)飲まなくなった理由

さらに、寝ている間に自律神経系がどれぐらい回復したかを「Nightly Recharge」という機能で数値化してくれるんですね。これがとても的確で、毎朝起きたら必ずチェックするほどハマりました。

左がよく眠れた夜、中央と右がワインを飲みすぎてグダグダだった夜。実際の睡眠時間は左の方が少なかったのに…。

お酒大好きなわたしがワインを飲みすぎた翌朝、「Nightly Recharge」を確認したら上の通りグダグダでした。心拍変動数とは、心拍数のゆらぎ。このゆらぎが大きければ大きいほど安らいでいる状態なのだそうですが、右下のグラフで確認できるかぎりはあんまり安らげてなかったですね(特に前半)。実際に体調もグダグダでしたし。ここまで体調不良がデータとして可視化されると、さすがに毎晩飲んじゃえ〜というわけにもいかなくなり、自然と晩酌を自粛するようになりました。

自分を知る機能が満載

今回Grit X Proの機能で最も重宝したのが、毎日2~4種類のトレーニングオプションを提案してくれる「FitSpark」。有酸素トレーニング筋力トレーニング体幹トレーニングの3つの大まかなグループに分けられていて、トレーニングの内容はWHO(世界保健機関)が推奨する成人の一週間当たりの運動量をベースにしているそうです。体にどのぐらいの負荷をかければ生産的なのか?という匙加減は素人にとってなかなか難しいので、まさにパーソナルトレーナーにアドバイスをもらっているかんじ!

たとえば本日のおすすめメニューは「短めの有酸素運動」30分、「モビリティを高めるエクササイズ」6種、または「ストレッチエクササイズ」5種。Nightly Rechargeによる回復スコアや最近のトレーニング履歴によって、おすすめメニューがよりハードなものになったりします。

実際FitSparkの提案どおりにトレーニングを行った結果、だんだん耐久力(水色の折れ線)が鍛えられてきて、数値で言えば2月8日時点で76点だった耐久力が3月9日時点で84点まで上昇しました。

上のグラフでオレンジ色が「オーバートレーニング」のゾーン

ここで大事だと感じたのは、オーバートレーニングに気づけること。トレーニングがハードすぎると怪我のリスクが高まりますが、限度を見極めるのが難しいんですよね。その点、ポラール先生はトレーニングのデータをもとに「今日はやり過ぎだったよ」と諭してくれるので、自分の限界を知る上でも非常に有用です

ほかにも限界を知る方法として5種類のパフォーマンステストも用意されており、自分の身体能力やコンディションを数値化できます。ランニングパフォーマンステスト、サイクリングパフォーマンステスト、脚力回復度テスト、起立試験、フィットネステストといろいろ用意されているのですが…、筆者はまだすべてのテストをしてません。もうちょっとトレーニングしてから、かな。

まとめ:Grit X Proは自分の実力を底上げしたい人にオススメ

今回Grit X Proを使ってみて感じたのは、そのストイックさ。日々何かしらのトレーニングを積むことがまず前提としてあるんですよね。これは単なるフィットネストラッカーではなく、トラッキングしたデータを分析して、身体能力を向上させるアドバイスにつなげてくれるパーソナルトレーニングガジェットです。

ですから、目標を掲げて継続的に運動をしている人にとっては最強のツールだと思いました。目標が高ければ高いほど、トレーニング期間が長くなりますし、途中で怪我や不調に悩まされるリスクも大きいですよね。だからこそGrit X Proをうまく活用すれば、マンネリになりがちなトレーニングに新しい選択肢を与えてくれたり、トレーニングをしすぎないように体の状態をトレーニング中だけでなくトレーニング後にも継続して分析し、回復度を数値化してくれます。また、蓄積されたデータから自分の傾向と弱点(たとえば深夜の晩酌)を読み取って生活習慣の向上につなげられるのもいいなと思いました。

わたしは「遠くまで行ってみよう」とGrit X Proに促されるまま、初めてのトレイルランニングに挑戦したりと、かなりアクティブな6週間を過ごしました。そのうちに同じ距離を走っても平均心拍数がだんだん低くなってきて、キツく感じなくなってきました。

「Polar Flow」アプリからアクティビティをSNSに投稿すると、こんな感じに

Grit X Proは、自分の体力と時間を有効に使って、どれだけ生産的な毎日を過ごせるかを教えてくれます。7万3,700円という価格は決してお安くはないですが、もっと強い自分を目指して地道にトレーニングを積んでいきたい人にとって、Grit X Proは最強の相棒になると思います。

Reference: POLAR (1, 2, 3)
Photos: 山田ちとら