福島第一原発の事故から11年が経った。具体的な廃炉作業は進んでおらず、人材育成が課題になっている。そんな中、パイプの中を進み、小さな物体を拾う『廃炉ロボット』を作る高専生たちがいる。
福島第一原発の“廃炉作業”をモデルに企画されたコンテスト「廃炉創造ロボコン」。ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、コンテストを立ち上げた福島高専・機械システム工学科の鈴木茂和准教授に話を聞いた。
「2015年から福島高専が文部科学省から委託を受けた『廃炉に関する人材育成の事業』の中でスタートしたコンテストです。福島第一の“廃炉”は、日本だけでなく世界的な問題になっています。一人でも多くの若い学生に廃炉について興味を持ってもらって、廃炉と向き合ってもらいたい」
鈴木准教授のそんな思いから始まった同コンテストでは、放射線量が多く、人が立ち入れない困難な環境での廃炉作業を想定。参加者たちは燃料などが固まった“デブリ”を回収するという、高いハードルに挑んだ。
第5回の優勝作品に輝いたのが、地元福島高専の作品『メヒカリ』だ。制作に携わった武田匠さんに話を聞いた。
「当時9歳で被災して、その後すぐに原発事故が起きて…。地震の恐怖と一緒に『原発事故』というほんとにワケの分からない事故が生活の中にありました」
被災当時は9歳だった武田さん。生まれ故郷で起きた原発事故が一向に収束しない状況とともに育ってきたという。
「原発事故ってどうしたら終息するんだろうとか、どうやったらこれ終わらせられるんだろうって考えた時に、『そもそも原発ってなんだろう?』とか『放射線ってなんだ?どうすれば影響が少なくできるのか』ということを知りたいなと思いました」
原発事故にどう向き合って行くのか。鈴木准教授は「避けては通れない課題だ」と語る。
「“廃炉”っていうと、福島第一の事故を起こした場所の後片付け、事故対応ということで、マイナスなイメージを持っている人が多いと思います。ただ、福島第一の廃炉を『そのまま放置しておけばいいか』というと、決してそういうわけにはいかない、誰かがやらないといけない」
生徒たちに“廃炉”について教える中で、鈴木准教授が大事にしているのが「自分の目で見て考える」ことだ。
「自分の目で見て、肌で感じて、自分の耳で『1F(=福島第一原子力発電所)』で働いている人の話を聞いてもらいたい。人材育成の一環で、廃炉創造ロボコンに参加する学生は、夏休みにサマースクールで福島第一の視察に行ってもらってます」
サマースクール中、学生たちはロボットを作るだけでなく、廃炉や放射線について多くのカリキュラムを体験する。廃炉の技術的ハードルが高いからこそ、必要とされる技術は「最先端」だ。
「『“未知の世界”に遠隔操作でチャレンジする』。これって“宇宙開発”と関連した内容になってくるんです。『1F』の廃炉で使われた技術、開発された技術が、もしかすると宇宙開発に使われるかもしれません」
最先端の技術を学ぶ中で、高専に通う学生たちの間では 原発や廃炉へのイメージも少しずつ変化しつつあるという。
「“技術”って、やればやるほど実際に使われているものは凄いなと感じますし、自分たちが創ったものも全然粗削りで、『まだまだ成長できる』と思ってます」
より高度な技術者を目指して。武田さんによると、“最先端の技術”に興味を持って、廃炉ロボットの開発に携わっている学生もいるという。
「僕と一緒に研究をしているメンバーの2人は、廃炉の問題というよりは、その環境で動作する廃炉ロボットの技術的なところに興味を持ったという人たちです。日常世界とかけ離れている環境で、『どうすれば動作できるのか』とか『どうすれば成果が出せるか』という“技術”に興味を持った人たちですね」
新しい世代が、廃炉に向けた新しい時代を切り開いていくのかもしれない。(『ABEMAヒルズ』より)
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