プーチン氏とスターリンの共通点 – ABEMA TIMES

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ウクライナの人々がなぜロシアに屈することなく抵抗を続けるのか。その一端が理解できるウクライナの過去を描いた映画が注目を集めている。

【映像】ウクライナの大飢餓“ホロドモール”が生んだ分断

 2020年に公開された映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』。旧ソ連の統治下にあったウクライナで起きた大飢饉“ホロドモール”を実話をもとに映像化した作品となっている。1930年代の世界的な大恐慌の中で、なぜソ連だけが経済成長を遂げているのか。実在したイギリス人ジャーナリストのガレス・ジョーンズがスターリン政権下で起きていたウクライナの惨状を目の当たりにし、世界にその情報を発信しようとする姿が描かれている。

 当時のソ連にとって、ウクライナで収穫される小麦は貴重な外貨獲得の手段だった。重工業化を進めるスターリンは、ウクライナのコルホーズ(集団農業)に過剰な量の穀物徴収を課した。その結果、現地の農民が食べるものは残らず、大飢饉によって約400万人(※ウクライナ化学アカデミー推計)もの人々が死亡したとされている。

 その後、ソ連は長らくこの大飢饉、ホロドモールをタブー視していたものの、1980年代に入ってようやく事実を認めた。オレンジ革命によってユシチェンコ大統領が誕生すると、ウクライナは2006年、「ホロドモールはジェノサイド」とする法律を制定した。ウクライナの人々にとって忘れられないロシアとの歴史となった。

 今回の軍事衝突を受け、両国の歴史を振り返ろうと『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』を見る人が急増している。この映画を見た人からは、「ウクライナ人が命を懸けて国を守ろうとする理由がよく分かりました」「昔の話でもこれと似たことは起こりうるのではないかと思ってしまう」などのコメントが上がっていた。

 ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、本来のウクライナをよく知る、神戸学院大学教授でウクライナ研究の第一人者である岡部芳彦氏に話を伺った。

――ホロドモールはなぜ起きたのか

「最後にソ連に入ったのはウクライナだった。なので、最後まで社会主義の体制に取り込まれるのに抵抗していたし、独立を望んでいた。1920〜30年代はソ連は国を発展させるための資金調達として、ウクライナの穀物を輸出した。ただ、そこにいる約400万人が食べるものが無くなるほど過剰輸出してしまったと言われている」

――ホロドモールによって、ロシアとウクライナの関係性はどのように変化したのか

「二つあって、まずウクライナ人からするとモスクワの人がやったことだという印象がすごく強い。もう一つは、議論がまだ続いているのだが、ウクライナではジェノサイド(大量虐殺)が計画されたものだという説も認められつつある。実はロシアでは2008年にこれの国会決議が行われてていて、その時はウクライナだけでなくその付近に住んでいる全ての人たちも犠牲になっていた。現状、解釈をめぐってもなかなか難しい」

――ウクライナの人たちはロシアの人たちに対して、ホロドモールは負の歴史として色濃く残っているのか

「それは残っている。ウクライナはソ連の一部だったというのもあるので、ロシアの人たち、ソ連政府に酷いことをされた意識がかなり強いのは事実」

――スターリン政権とプーチン政権の共通点は?

「一つ大きなことがあって、プーチン大統領は『今のウクライナの政権はナチスだから非ナチ化しないといけない』と頻繁に言っている。スターリンもその当時は『ナチス的な要素を取り除く』と戦後もずっと言い続けていて、そこはプーチン大統領と共通している。また、“非ナチ化”はロシア人にとってはかなりのパワーワードだが、ゼレンスキー大統領はユダヤ系のユダヤ人なのでナチスだというのは無理がある。そして、ロシア人にとってナチスを倒したというのはソ連の時代から非常に誇りであり、悪人に対しても『ナチだ』という表現が使われる」

――ロシアが軍事的政権を果たすことができた場合、どんな世界が待っていると予測できるか

「歴史的に独裁者が倒れるときは、自分で起こした戦争のことが多い。例えば、第二次世界大戦を起こしたヒトラーも、最初は調子良かったが最後は負けてしまった。すごく力を持った人が始めるというのは、もしかすると終わりの始まりだという可能性がある。ただ、第二次世界大戦は長く続いたので、(ウクライナ侵攻も)すぐに終わるものではないかもしれない」

(『ABEMAヒルズ』より)

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