「相棒」脚本家 放送内容に異議 – 女性自身

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昨年1月中旬、『相棒』のロケに励む水谷と反町

《今、苦しい立場で闘っておられる方々を傷つけたのではないかと思うと、とても申し訳なく思います。どのような場においても、社会の中で声を上げていく人々に冷笑や揶揄の目が向けられないようにと願います》

自身のブログにこうつづったのは、1月1日に放送されたドラマ『相棒 season20』(テレビ朝日系)のスペシャル版『二人』で脚本を手がけた太田愛氏。太田氏がブログで唱えた“異議“に注目が集まっている。

問題となっているのは、同回での主人公の杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)が捜査の一環で、駅の売店を運営する企業『デイリーハピネス』の本社に向かうシークエンス。2人が同社を出たところ、「非正規差別NG」と書かれたビラやプラカードを持つ、ピンク色の鉢巻を巻いたデモ隊が待ち構えている。

すると1人の女性が右京たちに“デイリーハピネス社の劣悪な労働環境”について唐突に話し始め、興奮気味に「同社で働く人の多くが非正規雇用で賃金は安く、15年以上働いても退職金がゼロ」と説明。さらに、デモ隊は裁判で同社を訴えることを明かした。突然の出来事に戸惑う右京たちだったが、女性らは2人を囲むと『格差をなくせ!』と拡声器を使ってシュプレヒコール。そして、右京たちは逃げるようにその場を去った。

しかし、太田氏は一連のシーンに異論を唱えた。ブログで《プラカードを掲げた人々に取り囲まれるというシーンは脚本では存在しませんでした。デイリーハピネス本社の男性平社員二名が、駅売店の店員さんたちが裁判に訴えた経緯を、思いを込めて語るシーンでした》と明かし、こう訂正した。

《非正規社員というだけで、正社員と同じ仕事をしても基本給は低いまま、退職金もゼロ。しかも店員の大半が非正規社員という状況の中、子会社の平社員達も、裁判に踏み切った店舗のおばさんたちに肩入れし、大いに応援しているという場面でした》

さらに太田氏は当事者の声を聞いたりいくつものルポを読んだりして同シーンを書き上げたといい、《訴訟を起こした当事者である非正規の店舗のおばさんたちが、あのようにいきり立ったヒステリックな人々として描かれるとは思ってもいませんでした》とし、冒頭のように“願い”をつづった。

Twitterでは「右京の発言と乖離していた」という指摘も

思いを込めて書き上げたシーンを、意に沿わない形で再現されたと明かした太田氏。その行動に、ネットでは《ドラマで描かれた内容は残念なことだったのですが、一方で「相棒」の脚本を書いている方はこんなことを考えながら執筆されている方なんだと知れて、私はうれしくなりました》《相棒の例の部分の演出には私も大いに幻滅したが、それに対し早急にコメントを出した作家太田愛さんの株は寧ろ上がったな》と称える声が上がっている。

また同回の終盤では、右京が「低賃金で働く労働者にも大事な家族や生活がある」「12歳の少年が何もかも受け入れて、諦めて、この世は自己責任だと言う。困ったときに、助けを求めることすら恥ずかしいことだと思い込まされている。それが豊かな国と言えるでしょうか。公正な社会と言えるでしょうか」と政治家に熱を込めて説くシーンがあった。

そんな労働者や社会的弱者を想うメッセージのいっぽうで、デモ隊は“ひたすら騒々しい人々”として描かれていた。そのことについて「ストーリーの整合性が取れていないのでは」と違和感を覚えた人も多くいた様子。Twitterには制作陣への批判がこう上がっている。

《元日の「相棒」見た。非正規の人達のデモをヒステリックに描くの、全体のテーマからも右京さんの最後の台詞からも確かに整合性が取れてない》

《太田愛さんの脚本無視の件、問題提起等を置いといても、元通りの方が作品として整合性が取れた気がします。『貧しくとも虐げられようとも矜持を持って生きている市井の人々』を描写して、それに共感できてこそ、ラストも活きる。キャラも物語も良いのに勿体ない》

《後半の右京氏の言葉を考えると確かにデモのシーンは太田氏の脚本通りにした方が良かった》

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