ニューヨークに生きる独身女性の恋愛や性生活を赤裸々に描いて世界的人気を博したSATCこと『セックス・アンド・ザ・シティ』。
その続編『AND JUST LIKE THAT… / セックス・アンド・ザ・シティ新章』が日本でもU-NEXTで完結した。なにを隠そう今作のためだけに速攻でU-NEXTを契約した筆者。全話を見終えたいま、AJLTを振り返りたい!
・喪失から始まる物語
以下は過去シリーズを含めて最終話まで視聴済みであることを前提に執筆している。またキャストの発言など、作品の「裏側」についても触れるので苦手な方はブラウザバックしていただきたい。
テレビシリーズから17年、劇場版から11年ぶりの続編。かつてはNYを風のように闊歩(かっぽ)するキャリアウーマン、ファッションリーダーであった登場人物たちも50代。孫がいてもおかしくないような年齢になっている。
いったいどんな展開になるのかと思ったら衝撃の第1話。本作は喪失から始まる物語なのだ。
そしてそれは「50代のリアル」として胸に迫るものがある。50代ともなれば、だれしも親を亡くしたり、ときにはパートナーを亡くしたり、美や健康や体力を失ったりする。
キャリアなり財産なり新しい家族なり、なにかを得ていくのが前半生だとすれば、少しずつなにかを失っていくのが人生の晩秋。「ハッピーエンドのその先」を描いたのが今作であったといえる。
ゆかりの場所、見覚えのあるファッション、成長した子どもたちなど、前作とのつながりがしっかり表現され、それぞれの家族の暮らしが積み重なってきたことがわかるのは単純にうれしい。
とくに思春期を迎えた子ども世代には、両親の “なれそめ” まで知っているだけに「大きくなったなぁ」と親戚のおばちゃん状態である。
いまさらニューヨーカーの恋愛事情でもないだろうに、どうやって続きを作るんだろうと思っていたら、見事に前作を昇華させていたと思う。全体としてはとてもおもしろかった!
・サマンサ不在の影響
多くのファンを落胆させたのが、恋多き女性サマンサ・ジョーンズを演じたキム・キャトラルの不在。キャスト同士の不仲を指摘する記事や、復帰についての憶測記事などが断続的に出され、注目度の高さが際立っていた。
外野にはわからない「大人の事情」で出演しなかったのだから、その理由をいつまでも詮索するのはヤボだと個人的には思う。
しかし多くの人が、サマンサの不在を残念に思ったことは事実だ。ストーリー面でも影響は大きかったと思う。
ときにはカフェレストラン、ときにはパーティー、ときにはバーで親友4人がテーブルを囲む定番のシーン。ひとつの出来事に対して、まったく違う4通りの解釈が繰り広げられる。
とりわけ常識に縛られない自由奔放なサマンサの発言は、ぶっ飛んではいるが、「そんな見方もあるよね」と視聴者をラクにしてくれた。
それが3人になることで、意見の相違が深刻になりすぎてツライ場面もあった。固定観念や先入観を笑い飛ばしてくれるサマンサが懐かしい。
キム・キャトラルの続投はかなわなかったが、制作陣がコメントしてるとおり、サマンサ・ジョーンズというキャラクターは大事にされている。全10話を通してサマンサの存在が感じられるエピソードが随所に挟まれる。
・ミランダの行動への賛否
人種や性的マイノリティの扱いについての前作の反省から、多様性の尊重が今作のテーマともされている。
その中でミランダの行動には賛否両論あったと思う。筆者も非常~~~にモヤモヤした。
ミランダ役のシンシア・ニクソンのもとには「ミランダが変わってしまった」という意見も届いたという。それに対してシンシアは「ミランダはもともと冷静な人物ではない」と反論。
たしかに前作では自分の性的魅力を証明するために3Pの相手を探したり、上司に気に入られるためにレズビアンのふりをするなど、ちょっと突拍子のない行動も。
かつ作品全体としては、今回のミランダの行動を全肯定しているわけではない。
視聴者にスティーブの本心を見せ、犠牲になるキャリアを見せ、批判に過敏に反応するミランダの罪悪感のようなものを見せている。
情熱に身を任せた行動の結末を、今作では「描ききれていない」感があるのでぜひ続編が見たい。
・残念なニュースもあったけれど……
スタンフォード役のウィリー・ガーソン逝去、エイダン役のジョン・コーベットの謎の出演宣言(実際には出演していない)、そしてミスター・ビッグ役のクリス・ノースの性的暴行疑惑など残念なニュースもあった。
クリス・ノースに関しては、収録済みの出演シーンがカットされたという。
シャーロット役のクリスティン・デイヴィスらが、容姿にばかり注目されることへの怒りをコメントしたりもした。
たしかにキャストは年齢を重ね、肌や髪質や体型の変化が見てとれる。しかしそれは自然なことであり、筆者には文句なく輝いて見えた。
人気作になればなるほど「こんなの○○じゃない!」「制作陣は作品を理解していない!」といった不満も生まれる。しかし筆者は十分に続編として楽しめた。
50代の女性の喪失と悲哀と強さを描き、ほのかな希望を感じさせるラスト。「作ってくれてありがとう」と言いたい!
次にファンが期待するのはシーズン2が制作されるのかどうか。
3月9日には作品の裏側に迫る特別番組『AND JUST LIKE THAT… / ザ・ドキュメンタリー』がU-NEXTの見放題にて独占配信開始。イメージが壊れるから裏側は見たくない……という人もいると思うので万人にはお勧めしないが、興味があればぜひ!
参考リンク:PR TIMES
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES
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