満開の梅の花?いいえ、ポップコーンです。
宇宙旅行や車の自動運転など、科学の進歩はどんどんSFに追いついている。
一方で、昔話の世界で起こっていることにはまだまだ分からないことが多い。なぜ桃太郎は桃から生まれてきたのか。なぜ浦島太郎は酸素ボンベなしで海にもぐり続けられたのか。
そして、なぜ花咲かじいさんは灰をまいただけで枯れ木に花を咲かせられたのか。
2022年時点でのその答えは、ポップコーンでした。
ポップコーンで梅の枯れ木が満開に
花咲かじいさんが枯れ木に咲かせた花はポップコーン。
僕としてはおとぎばなしの不思議を解明したつもりだが、もしかしたらもっと分からなくなってしまった人もいるかもしれない。
いったいどういうことなのか、まずはこちらをご覧いただきたい。
ここまではお話のなかで描かれている部分。でもこの花をよく見てみると、
そう、これが花咲かじいさんの真実。枯れ木にポップコーンをつけると、満開の梅の花のように見えるのだ。
ポップコーンで枯れ木を満開にできること、お分かりいただけたかと思います。
そして思ったことでしょう。私も咲かせたいと。
その夢、叶えましょう。あなたも花咲かじいさんになれるのです。
どうすれば咲かせられるのか、詳しく説明しますね。
枯れ木はどこにある?
ポップコーンで花を咲かせるためには、まず枯れ木を用意する必要がある。でもそれってどこで手に入るのか?考えてみると意外と難しい。
【花を咲かせられる枯れ木の難しさ】
・小さい枯れ枝はよく落ちているけど、「満開にする」には枝ぶりがもの足りない
・そもそも枯れ木は切られてしまうのであんまり残っていない
・もし生えていたとしてもそれは誰かの枯れ木。「枝にポップコーンつけていいですか?」と確認しないといけない
あたり一面が山だった花咲かじいさんの時代には簡単なことだったかもしれない。でも2022年の今、「花を咲かせられる枯れ木」はすごくレアなのだ。
「頓挫」の2文字が頭をよぎる。まさか花を咲かせる前の段階でこんなに苦戦するとは。
しかしここで、まるで昔話のような偶然が起こる。たまたま近所で木の剪定をしているところに出くわし、切った木をいただくことができたのだ。
なんというラッキー!昔話では、欲深いおじいさんが宝の山だと思って飛びついたものが実は泥やガラクタだったというパターンがよくある。でもこのいただいた枯れ木は、僕にとっては本物の宝だ。
よし、これで花咲かじいさんに一歩ちかづいたぞ!
How to 枯れ木に花を咲かせましょう
無事に枯れ木が手に入ったので、花を咲かせていこう。
木にくっつけたポップコーンは思っていた以上に梅の花で、特に最初の一輪を咲かせたときは、興奮してしばらく家の中をウロウロしてしまった。
ちなみにこのサイズで、すべての枝にポップコーンをつけるのに3時間ぐらいかかった。パッと灰をまいて一気に咲かせるイメージがあった花咲かじいさんだけど、影ではこういう地道な作業をしていたのかもしれない。
町に春を告げるポップコーン
さて、この満開になった枯れ木。家の中にとどめておくのはもったいない。せっかくだから外でも咲かせてあげよう。
外に持っていってみると、ポップコーンは自然の一部としてとけこみ、よりいっそう梅の花に見えた。普通ポップコーンが外で木にくっついていることはないので、脳が自動的に梅だと判断してくれているのかもしれない。
この日はちょうど数日前にふった雪が残っていたこともあって、他の木々より一足はやく満開になったポップコーン梅は、町に春の訪れを告げているようだった。
梅の花とのご対面
しかし、試練のときがやってきた。先ほどの神社で、本物の梅が咲いていたのだ。
ここまでは僕1人で盛りあがっていたこのポップコーンが、実際のところどのぐらい梅の花にみえるのか。緊張するがさけては通れない道だろう。
恐る恐るポップコーンの花を置いてみると、
まったく違和感なし!むしろ、うっとりしてしまうぐらいきれいな紅白梅の競宴だ。
これで確信した。枯れ木につけたポップコーンは梅の花なのだ。
もっと大きな枯れ木を咲かせたい
こうして、盆栽サイズの枯れ木は見事に花を咲かせることができた。
めでたしめでたし。かと思いきや、おじいさんには新たな野望が生まれていた。
そう、昔話のように、人の背丈より大きな枯れ木に花を咲かせたくなっていたのだ。
そして、
おじいさんは見事に満開にしました。
でも、3時間かかった先ほどの盆栽よりもっと大きなサイズの枯れ木、本当におじいさん1人で満開にすることができたのでしょうか?
村人たちの協力あっての満開
実はここに、花咲かじいさんのもう1つの真実があった。
おじいさんの花咲かの影には、たくさんの村人(友人)たちの協力があったのだ。
このとき何を思っていたのか、あとから村人たちに話を聞いてみると、こんなことを言っていた。
・少しでもたくさん花を咲かせたくて、無心で作業に集中していた
・きれいに花を咲かせるために、自分なりのベストなやり方を模索していた
・より多くの花を咲かせるために「ポップコーンに穴をあける」「ごはん粒をつめる」「木にくっつける」の分業制を提案したかったけど、そういう近代的な考えかたは花咲かじいさんの世界観にあわないと思って我慢した。
村人たちは、作業にのめりこんでいた。
命を失った枯れ木にみずからの手で花を咲かせる。それは村人たちを高揚させ、もっときれいに、たくさんの花を咲かせたいと「花咲かハイ」になっていたのだ。
この日は、寒さに加えて途中から雨もふってきた。
村人たちが風邪をひいてしまってはいけないので、おじいさんは何度も「この辺で終わりにしよう」と声をかけたのですが、
昔の農村では、農作物の収穫や屋根のふき替えなどのときは、村人たちが総出で協力しあっていた。それと同じように、枯れ木に花を咲かせることも村をあげての作業だったのだ。
なぜ花咲かじいさんは灰をまいただけで枯れ木に花を咲かせられたのか。2022年時点でのその答えは「村人たちが全面的に協力して枝にポップコーンをくっつけたから」でした。
もっともっと花を咲かせたい
最後に登場した村人たちは「花咲かハイ」になっていたが、その気持ちはすごくよく分かる。
僕も今回やってみて以来、まだ花が咲いていない枝ぶりのいい木を無意識にさがしてしまい、見つけるたびに「咲かせがいのある木だな~」という目で見ている。
花咲かじいさんも同じ快感を味わったことだろう。無欲さがとりえだったおじいさんだが、花を咲かせることについてはものすごく強欲になっているかもしれない。