[再]いくらでも時間が潰せる離島の事典「シマダス」の最新版が15年ぶりに出た

デイリーポータルZ

「公益財団法人 日本離島センター」という団体が作っている『SHIMADAS(シマダス)』という本がある。

すごい厚さで、北から南まで日本の離島についてのデータがぎっしり詰まっている。私はこれを過去に古書店の通販で買い、本棚の手の取りやすい場所に置いている。パラパラめくっては知らない島の情報を読んで想像を膨らませる。

その本がアップデートされ、大幅に内容を追加して2019年末に刊行された。前版から数えて15年ぶりのことだという。なんだかすごいことな気がする。そして、これはこの本を作っている人に話を聞く絶好のタイミングじゃないか。逃すわけにはいかない。

私が持っている「シマダス」を見てください

さてその「SHIMADAS(シマダス)」、正式には「日本の島ガイド『SHIMADAS(シマダス)』」というタイトルなのだが、これから文中に何度もタイトルが出てくることになるので、ここでは「シマダス」という表記に統一させていただきたいと思う。

シマダスは1993年に初めて作られ、その後、改訂版が数冊出ている。私の部屋にあるのがこれ。1998年版だ。

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1998年に刊行されたシマダス。1,152ページある。
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150ページぐらいの文庫と比べてみる。デカい

ズシッと重たいこの1998年版シマダスには850もの島の情報が掲載されている。試しに適当に本を開いてみると、山口県の離島である大津島(おおづしま)のページだ。

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今この瞬間まで知らなかった島

面積や人口、交通経路といったデータ的な情報だけでなく「みどころ」の一つとして、この島に戦時中、人間魚雷「回天」の訓練基地が置かれていたこと、「島じまん」の一つとして、長崎の対馬から伝わったその名も「つしま」という郷土料理があることなどが記載されている。

代表的な方言などについても書かれていて、「きまい(来なさい)」、「じょーに(沢山)」といった言葉があることがわかったりする。島の祭り、言い伝え、珍しい動植物、この島出身の著名人などがあればそれも書いてある。

「へー」と思いながら眺め、また別のページをめくる。特に気になった島についてはインターネットで検索してさらに詳しく知ってみる。そんな風にすると、これはもう、いくらでも時間が潰せるのである。

15年ぶりに出た新しいやつ!

私が持っている1998年版のシマダスが出た6年後、2004年にそのアップデート版が出版されている。

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これがそれ。表紙が緑になっている。

2004年版はページ数が増えて1,327ページ。細かいデータが更新され、掲載されている島も1,100島以上に増加している(ちなみに私はいつかこの2004年版も買おうと思いつつ、未購入だった)。

この2004年版シマダスが長らくの間“最新版”だったのだが、冒頭で述べた通り、昨年2019年11月末にさらに新しいバージョンが刊行されたのである。15年ぶりに現れた新作。「スターウォーズ」の最初の三部作が完結した16年後に「エピソード1」が公開されて世間が驚いたのと同じレベルで驚いていいことである。

しかもその2019年版には1,750の島のデータが収録されているという。前版から一気に600島以上も増加!総ページ数は1,712ページ。400ページぐらい増えている。この数字だけ見ても、15年ぶりというだけあって大幅なアップデートであることがわかるだろう。ただならぬものを感じ、大急ぎで購入した。

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1998年版と2019年版を比べてみる

並べてみると厚さがあまり変わっていないのがわかる。2019年版の方が600ページほど増えているのに、紙が辞書の紙みたいに薄くなっていて、厚みが抑えられている。

今回新たに増加した島の多くが無人島。無人島についての記載は青地の囲みになっており、見た目にもわかりやすくなっている。

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誰も住んでない島がこんなにあるんだなと思う

新旧シマダスを使った私の楽しみ方

こうして、1998年版と2019年版の2冊のシマダスがうちの本棚に並ぶことになったのだが、2冊あると古い版と新しい版を比べるという楽しみが増える。

同じ島について見比べてみると、20年以上の間にデータが色々と変わっているのがわかるのである。

例えば、長崎県五島市の黒島(くろしま)という島を1998年版と2019年版シマダスで見比べると、古い方では26人だった人口が2人になっている。1998年版には島民の平均年齢が73.5歳だと書かれており、時の流れを感じる。

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黒島の約20年間の変化を一挙に比較できる

また一方、兵庫県姫路市の坊勢島は、1998年~2019年の間に人口こそ減少しているものの、年間の来島者数が3,000人から72,900人へと桁違いに増加している。この坊勢島のことを私はテレビのロケ番組で見たことがある。姫路から30分ほどで行けて海の幸が堪能できる場所として、観光スポットとして紹介されていた。このような観光分野のPRによる結果が来島者数の増加に現れているのだろう。

と、こんな風に読んでいるとあっという間に日が暮れるのだ。シマダス、なんて奥深い読み物なんだろうか。

シマダスを作っている人に会いに行く

前版から15年という時間をかけて大幅にアップデートされたシマダス。それがどんな人の手によって、どんな風に行われてきたのか知りたい。

シマダスは公益財団法人日本離島センターというところが作っている。公益財団法人っていうのは行政から公益性を認められた法人で、そう簡単に取材を受けてはくれないんじゃないかと思っていたのだが、予想外にOKが出た。

日本離島センターは永田町の全国町村会館西館というビルの一室にある。立派なビルを、緊張しつつ見上げた。

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中で何が行われているのか想像できないビル

エレベーターで日本離島センターのあるフロアに伺い、応接間に通してもらった。

こちらが今回シマダスに関するお話しを聞かせてくれる日本離島センターの森田朋有(もりたともあり)さん。

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森田さんが優しそうでホッとしました

私が大阪から持ってきた2冊のシマダスを見て、「他のものもお持ちしますね」と、これまでに出たシマダスを書庫から持ってきてくれた。

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私が持っている2冊以外にもこんなにある

1993年から1995年まで毎年出ており、新しいのも含め全部で6冊。

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1993年版が一番最初に出たシマダス。縦30cmもある電話帳サイズで分厚い
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裏表紙はほのぼのタッチのイラストだ

最初のシマダスの地図は手描きだった

これまでに出版されたシマダスのシリーズをずらりと並べつつお話を聞いた。

――創刊号の実物を初めて見ました!ネットのオークションではちらほら見かけたんですが、大きいんですね。

「私が編集に関わったのは今回の新版からなのですが、1993年に1冊目のシマダスが出まして、それから1995年まで3年連続で出していたんです。ちなみに、シマダスの意味なんですけど、島(SHIMA)のデータ(Data)の“アニュアル(Annual)”なシリーズ(Series)で、その頭文字を取ってシマダスなんです」

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アニュアルは「年1回の」みたいな意味らしい。つまり年1回刊行するものとしてスタートしたわけか

――このボリュームを年一回作るってすごいですね!

「1冊目には332島の情報が掲載されているんですが、この時は島の地図も手描きなんですよ」

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創刊から3冊目までは地図が手描きだった

――うわ!本当ですね。これはこれで味がありますね。

「この頃は無人島などは載せてないんです。日本離島センターは、主に離島振興関係4法の指定有人島を有する市町村が会員となって作られた団体なんです。ですので、そもそものシマダスのコンセプトして、その会員の皆様に『ここ島はこんな島で、島全体ではこういう取り組みが行われていますよ』といった情報交換のために作っていったのが始まりと聞いています」

――なるほど、会員の方同士で情報交換をしたり連携していく上で作られたと。じゃあ一般の方が手にする本っていう感じは想定されていなかったですか。

「最初のコンセプトとしてはそうですね。しかし、こういうものがあると知った一般の方からも欲しいという声をいただき、それを受けて一般向けにも販売するようにしたようです」

――そうだったのかー!

「前版までのシマダスの作り方は、各島を所管している市町村の島の担当の方々からの情報をベースに、編集部で内容を付け加えていくという形でした。

ただ、平成の市町村合併(1999年から政府主導でスタートした大規模な市町村合併のこと)を経て、島だけで自治体を作っている市町村が減少していったんですね。本土の市町村の中の一部として島があるっていうようなケースが増えたんです。そうなると、島の担当者ではあるんだけど、島にこれまで関わってこられたわけではなく、島出身者でもないので、あまり島のことについて詳しくないという方も増えてきました。これまでと同じやり方では、人口や面積など基本的なデータのチェックのみで返されるようなことが想定されるようになってきました」

――そういう要因もあるんですね。島の情報の変化をずっと管理しているような方がいないと正確な情報が掲載できないですもんね。

「それで今回(2019年版)は、日本離島センターがまずすべての情報を更新したほぼ完成形を作って、それを『この情報は合っていますか?』という形にして、各自治体に確認してもらうようにしたんです。最低限の情報はこちらで揃えて、『この情報は正しいですか?』『その他に掲載すべき情報はありませんか?』と確認するような感じです」

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15年間の地道な作業にぼーっとする

「行くことはできないので、市町村史や自治体広報誌などいわゆる公的なものや、新聞などある程度信頼性が担保されていると思われるものを基礎資料にして情報を更新し、必要に応じて地元の方にも聞いてみるという流れです」

――なんという大変そうな作業……前版から15年かかったその間はそういう地道な作業を続けておられたと

「そうなんですよ」

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気が遠くなるような作業である

――終わりのない作業という感じですね……。シマダスは何名ぐらいで作っているんですか?

「メインは広報部の3人です。もちろん他に無人島の調査や校正等で協力してくれいた方々もいますが」

――えー!3人で!それでそのような地道な作業を続けてこられたんですね。

「シマダスに関する作業だけをやってるわけじゃないんです。その他、(日本離島センターの広報誌である)季刊『しま』の編集もしていますし、次世代の島おこしを担っていくような人材を作ろうと研修事業も行っています。島の方々が一堂に会するアイランダーというイベントの開催や島の特産品の販路拡大を支援するしまづくりキャラバンという事業も実施しています。」

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シマダスを作ってくれたありがたい人の一人が森田さんだ

――なんと忙しい。シマダスに避ける時間はちょっとずつなわけですね。今さらなのですが、そもそも日本離島センターはどういう目的を持った団体なんでしょうか

「まず全国離島振興協議会という組織が1953年にできまして、日本にある島々で連携して、例えば離島振興関係法という法律の改正・延長の実現や、離島の市町村の意向を反映した島の振興事業の予算を確保などを国に対して要望しています。この団体を母体に、広報や各種の調査でその活動を支援するといった目的で1966年に日本離島センターが作られているんです」

――島の暮らしとか制度をよりよいものにしていくためにということですね。職員の方には、どういう人が集まっているんでしょうか?島に住んでいたとかではないんですか。

「そういうわけではないです。島の出身者もいますが、地域おこしに興味があって入って来た人もいますし、一概には言えません。でも、島をはじめどこかへ行くのが嫌いな人にはなかなかやれない仕事ですね」

――みなさん島好きであることは間違いないんでしょうね。そしてその日本離島センターの活動の一つとしてシマダスを作っていて、バラバラに存在する島々の情報を統括するという意味があると

「観光などのために使うことはもちろん、私たち職員や国、自治体の皆さんが資料として使うなど、幅広い用途をもった島の総合案内書的な位置づけだと思っています」

――信頼性の高い資料としての価値もあるという。一方で私のような普通の人が買うということも多いですか?この前も大阪の書店でシマダスを買っていく人を見たんですが。

「もちろんそういう方もいらっしゃいます。先ほど名前を出した国土交通省と日本離島センターが主催する『アイランダー』というイベントには日本離島センターのブースもあるのですが、いつも『まだ出ないんですか?』と言われて(笑)『もう少し待っていてください』と言い続けてきました。今年は、ようやく『やっと出ました!』と言えました」

まだまだ日本には島がある

――しかし、お話を聞くとますます今回のような大幅なボリュームアップがよくできたなと思います。情報のアップデート版でもよかったのに、600も島が増えている

「日本を構成する島の数については、政府の発表で6852っていう数字が出てるんですけど、シマダスに収録している島の数もできる限りその数字に近づけていきたいという思いがあるんです。ただその6852っていうのは関係する最大縮尺海図などを用い、周囲が0.1km以上ある島、埋立地は除外などの基準にもとづいてカウントしたもので、具体的にどこの島とどこの島がカウントされているかという内訳は一切出てないんですよ。かつ、滋賀県の琵琶湖内にある沖島みたいに湖や沼の中の島とかは入ってないわけなんです」

――「これが日本のすべての島です!」みたいにはっきりとしたものはないんですね。島の全容を網羅するのにはまだまだ遠いという。

「新版のシマダスの掲載島は約1,750島。6,852島まであと5,000ぐらいはありますから(笑)」

――次もまた作られるんでしょうか?

「それはまだわからないですね。まだ刊行したばかりですし、今回のシマダスがどういうふうに世間に受け入れられていくのかっていうのもまだみえませんからね」

――シマダス2019年版のここがすごいというところはありますか?

「見た目の上で変わったなっていうのが、有人島の地図に段彩がついたんです。これで島の凹凸がわかるんです。例えば(と、2004年版と2019年版のシマダスを適当に開く)あっ、ちょうど同じ父島です」

――こういう奇跡があるんですね(笑)

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偶然が引き寄せたダブル父島

「この段彩の部分は結構変わった点ですね」

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2004年版では平面的だったのが
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2019年版では立体的に!
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最初期の頃を思うとすごい進化である

「あとは、なるべく読みやすいように、大きな島では観光的な見どころをエリアで分けるなど工夫したところもあります」

――巻末にカラーページができましたね。

「そうですね。巻末地図は索引用として今回初めてつけました。地図は等深線を入れることで、島の海からの立ち上がりが分かるようになっていますし、青と赤の色分けで有人島か無人島判別でき、航路も載せているっていう。瀬戸内海などは島数が多く混み合っており、多少見にくいところではありますけど(笑)」

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巻末にある地図には航路までびっしり
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島の変化と森田さんの好きな島

――私はシマダスの旧版と新版で同じ島の情報を見比べるのが好きなんですが、どこも島の人口は減っているように見えます。15年間で島についての大きな変化というのは感じられますか?

「人口は減少しているところも確かに多いんですけど、中にはプラスになっているところもあります。昔は無人島だったけど有人化した島もあります。僕が作りながら感じたのは、学校の統廃合が進んだなと。一方で、学校をなくさないために島外から人を呼ぶ、例えば東京のお子さんが島の里親さんのもとやや寮などから島の学校に通うというケースも増えているんです。島の自然や島のコミュニティの中で育っていく、そういう『離島留学』のような取り組みが増えてきたなっていうのも感じました」

――森田さんの思う島の魅力ってどんなものですか?

「どこの島が面白いかというと実はどこの島も面白い。すべての有人島はもちろん、無人島を含め、シマダスに載せている島は、書くべきことがある島なんです。すべての島に歴史や人の営み、人との関わり合いなどがあって、そういうことを知るとどの島にも行ってみたくなります。この島ではこんな特産品が作られてたんだとか、こんなロケが行われてたんだとか、こんな人が出身者でいるんだとか、知れば知るほど面白いです」

――森田さんは出張などで頻繁に島に行かれてるんですか?

「もちろんシマダスに載っているすべての島にではないですけど、出張でも行きますし、プライベートでも行ければ行くようにしています」

――やっぱり島がお好きなんですね?

「もちろん好きです」

――「どの島も面白い」というお話があったのに野暮なのですが、お気に入りの島ってあったりしますか?

「ありますよ。僕が好きなのは天草の湯島ですね。人口は300人ほどなんですけど、猫がたくさんいて、最近は『猫の島』としても人気が出てきまして」

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森田さんのおすすめは熊本県上天草市の湯島だという

――そこで森田さんは何をして過ごすんですか?

「『きく』という旅館があるんですけど、夕食のときなどは住民の方が集まってきてくれそこでお話しをしたりとか、歩いて一周できるような島なので散歩をしたりとかですね。天草四郎が一揆を起こす時に、天草側と島原側のちょうど真ん中あたりにある島なので、ここで談合をしたという碑が残っていたりとか」

――シマダスで湯島のページを見ると「大根ステーキ」という郷土料理があると書いてあります

「そう、湯島大根っていうのが有名でして、湯島って台形の形をした島なんですけど、その上底部分で大根が作られているんです。そしてそこで作るとなぜかすごく大根が大きく成長するんです」

――ちなみに「湯島大根畑」という写真が載っているんですが、この写真は?

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各ページにはこんな風に写真が載っていたりする

「これに関しては僕が撮っています。シマダスに載っている写真は、市町村にご提供いたたいたものをメインに、職員が撮ったものなどを使っている場合もあります」

――わー、それもまた地道ですね

「読みやすい本にする上でも写真の点数は増やすようにしていますね」

島と偶然出会わせてくれるのがシマダス

――まだ発売からそれほど日が経っていないですが、反響はありますか?

「『出してくれてよかった』っていう御意見と、あとは『電子化してください!』っていう意見が多いですね。旅先に持っていって見たいということもあるのでしょうね。やはり、重いので(笑)」

――確かに。島へ行くのにシマダスを持っていくのはなかなか大変かもしれない。電子書籍化は検討中ですか?

「今のところは予定してないんです。これは個人的な思いかもしれないんですけど、電子化されると、知りたい情報までの読者のアクセスがピンポイントになると思うんです。けど、紙が持っているパッと開いた時にたまたま気になる島に巡り会うといった運命的な出会いとか、幸運な出会いといった、セレンディピティ的なものが減ってくると思うんですよね」

――さっきもパッと昔のシマダスと最新のシマダスを開いたら同じ島だったりしましたもんね。

「そのような、パッと開いて出会う偶然、たまたま開いたページの島が自分にとってかけがえないのない島になるみたいなことが、電子書籍ですと、無いとは言えないまでも減ってくると思うんです」

――それは本当にそうだと思います。じゃあ私が部屋でパラパラ見ているのもシマダスの正統派な楽しみ方だったのか。間違ってなかった!

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パッとめくってサッと読む。それもシマダスの楽しみ方と聞いて安心

初心者におすすめの島も聞いた

――これからシマダスを参照して島に旅に行きたいという人向けに、初心者として行きやすい島ってありますか?

「うーん、それは、その人の興味や関心によるところが大きいですね。キーワードをもらえば助かるんですけど、なかなか万人におすすめっていうのは難しくてですね。例えば猫がたくさんいる島に行ってみたいというなら、東京から行くなら宮城県の田代島が有名です。ウサギがお好きなら瀬戸内海には大久野島というウサギの島があります」

――ちなみに今、パッと答えて下さいましたけど、そういうデータは森田さんの頭の中に入ってるんですか?

「全部は入ってないですけど、有人島であればある程度は」

――すごい。例えば食べ物が美味しいところだとどうですか? 

「今、小豆島でハモのブランド化を進めているのでおすすめですね。鈴木さんは大阪にお住まいということですし、神戸から航路的にも行きやすいですし」

――小豆島のハモ、美味しそうです。島の文化についても色々と特徴のある場所が多いんでしょうね

「独自のものが島には残っていますね。島ならではの盆行事が見てみたいということであれば、有名なところでいうとトカラ列島の悪石島のボゼとか、子どもがキツネの格好をする姫島の盆踊りですとか。巻頭のカラーページを見ていただくと、原生林だったり、史跡関係とか、伝統の食文化などのテーマに分けて写真が載っていますので、これを参照してもらうのもいいかもしれないですね。あとはシマダスの中に『SHIMA―あ・ら・かると』というコラムページのようなコーナーを設けていまして、そこでも島の無形民俗文化財や世界・日本遺産などを取り上げています」

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巻頭のカラーページから自分の興味をひく島を探すのもおすすめとのこと
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姫島の盆踊り、見てみたいな

――シマダスを参考にして島に出かけてみます!ちなみに、島に実際に行くための航路ってどうですか?減ってきていたりしませんか?

「離島の航路は、島の方々の生活を担う非常に重要な役割を果たしています。しかし、船会社単独では採算がとれない航路もあり、そういったところでは国の補助金などを受けながら、住民生活を守っています。地元からは便数を増やして利便性を高めたいといった声もあり、もちろんそうなれば良いのですが、事業の採算面などもあり、そう簡単にはいかないところもあります。あとは島への航路はあっても、その船が出る港まで行くバスが減っているとか、船とバスの時間が連携していないとか。そういう問題もありますね」

――そこら辺は事前にできるだけ調べて行くべきなんでしょうね。でもそれを乗り越えて島に行く人が増えていけば交通の便もよくなるかもしれない。

「そうなると良いですね。多くの方が島に興味を持っていただいて、行ける場所であれば足を運んでいただければ嬉しいです」

――今日はたくさんのお話、ありがとうございました!

と、シマダスを作った人に目の前で島に関して色々と教えていただき、また、自分のシマダスの楽しみ方が森田さんの思うところと違ってなかったこともあって、とても嬉しい取材のひとときだった。

これだけ知らない島があるのだ。あちこち行ってみるしかない!シマダスの重さを感じながら改めてそう思う。

シマダスはちょっと特殊な本なので大きな本屋さんでないと見つかりにくいかもしれない。だがもし並んでいなくても書店で注文して取り寄せることが可能だし、通販サイトでも購入できる。税別4,000円というとちょっと尻込みする方もいるかもしれないが、こんなに読み込める本はそうそうないと思う。

何より物体としての手ごたえがいい。自分の知らない島がこの日本にすらこれだけある(しかもここに載っていない島もまだある)ということを絶えず感じさせてくれる物としての迫力。「日本ってさー!」とか「〇〇県ってさー!」とかすぐに適当にくくってしまおうとする自分を、本棚の並ぶ青い背表紙がいつも謙虚な気持ちにさせてくれる。

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日本離島センターの前でパシャリ

ちなみに森田さんの写真を撮らせていただいた時、背後にあるポスターの「離島甲子園」という催しが気になった。聞けば、「全国の離島球児たちが一堂に集まる中学生野球大会」なんだそう。毎年日本のどこかの島で開催され、2020年は小豆島で行われるらしい。忘れないで行くためにここにメモさせていただきます。

取材協力:日本離島センター
http://www.nijinet.or.jp/

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