気づけば「何もない」40代の悲劇 – PRESIDENT Online

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仕事、子育て、介護……40代は公私ともに忙しくストレスが多くなる。どのように過ごすのが理想なのか。作家の本田健さんは「20、30代は比較的ポジティブな時間が多いですが、40代になると、仕事や家族が“モンスター”となって自分の人生や時間を奪われてしまう人が多い。何にノーと言い、イエスと言うかを決めるべき」という――。

※本稿は、本田健『40代にとって大切な17のこと』(きずな出版)の一部を再編集したものです。

疲れ切ってパソコンの前に座るビジネスマン
※写真はイメージです – iStock.com/shironosov

愛する人たちが“モンスター”になり、あなたの人生を呑み込んでしまう

「40代」になって、ストレスが増えたと感じる人も多いのではないでしょうか。

介護のやり方や遺産相続の問題で、親や兄弟姉妹と、気まずくなったということが起き始めたりします。「20代」「30代」では、人生は、比較的ポジティブなサイドに移動するのですが、そこに影が差し込んでくるのが、「40代」という年代だと僕は思っています。気をつけておかないと、知らないあいだに「自分」を失うことになります。

たとえば、

・「仕事」に自分を失う
・「家族の役割」に自分を失う
・「子育て」に自分を失う

というような状態に陥りやすくなります。

「失う」は、「呑み込まれる」という言葉に置き換えてもいいでしょう。

仕事や家族が「モンスター」となって、あなたを呑み込んでしまうのです。自分が好きなこと、愛する人たちのためにしていたことが、気がつけば、悩みや不機嫌のタネになって、なぜ自分はそれをしているのか、なぜ自分はここにいるのか、ということもわからなくなっていきます。自分を失う、とは、人生の目的はおろか、自分が存在しているかどうかさえ、実感できなくなっていくことです。

仕事が忙しくなると、家族との時間が削られるようになります。一緒にいたいから結婚したのに、一緒にいる時間がない、ということになるわけです。

パートナーや家族のためにがんばっているのに、そのパートナーや家族から無視されてしまう、感謝もされない、どんどん距離ができていく、ということもあります。

また40代に入ると、体力が落ちてきたのを感じたり、痩やせにくくなったり、髪が薄くなったり、といった外見的な変化も出てきます。

20代、30代の頃には、飲み会や合コンなどに行けば、けっこうモテていたのに、40代になった途端に声をかけられなくなった、と寂しい気持ちになったりします。さすがに40代で「老い」を感じる人は少ないと思いますが、けれども、「老い」に向かっていることが、チラッと見え隠れするようになります。

「30代」では、そんなふうに感じることはまったくなかったはずですが、「40代」では、それが始まるのです。「50代」になると、「老い」や「人生の終わり」というものが、よりリアルに感じるようになります。大きな病気でもすれば、自分の死というものが、決して遠くないところにあることを知るのです。

それに比べれば、「40代」は、まだまだ人生の途中で、「終わり」を意識する人は少ないでしょう。けれども、ふと、自分が誰だかわからなくなって、「一瞬の絶望」に襲われ、魔が差して自らの命を絶(た)つ人もいます。

仕事、子育て、介護…気がついたら「何もない」という悲劇も

英語で「Mini-van Mama(ミニバンママ)」という言葉があります。

小さなファミリーカーで、子どもの学校や習い事、サッカー教室やバレエ教室、親の通院のために、送りに行ったり、迎えに行ったりで「忙しいママ」の意味で使われます。

日本でも「Mini-van Mama」「Mini-van Papa」は多いでしょう。実際に、ミニバンを運転しているあいだに40代を過ぎてしまった、と思うほど、家庭のことにエネルギーをとられていたという50代の人もいました。

子育てや介護となると、どちらかといえば女性が担当することが多いと思いますが、それこそ、何事も子ども優先、介護される人優先で毎日がまわっていきます。仕事にエネルギーが向いている人は、生活のすべてが仕事中心になりがちです。

仕事にかける人生に充実感を得られる人もいれば、ミニバンを運転しながら、子どもの成長を見たり、親の面倒を見られたりすることに幸せを感じる人もいます。

けれども、どちらかと言えば、それは少数派で、家族や会社にこき使われているように感じて、自分がどんどん消耗していくことに、犠牲感を募らせてしまう人がほとんどと言ってもいいでしょう。

人生の後半を決める大切な10年であるにもかかわらず、気をゆるめていると、仕事や子育て、介護などで、時間をとられてしまうのです。時間をとられる活動は、自分を消費することにつながっています。

それが悪いことではありませんが、消費するだけでは、気がついたら「何もない」ということもあるわけです。

「40代」を充実した人生として過ごせる人がいる一方で、空虚なまま「40代」が終わる人も少なくありません。いや、むしろ多いと言ってもいいでしょう。

40代が充実しないと、50代以降は抜け殻のようになってしまいます。この10年を大切に生きないと、人生の後半がつらくなります。

あなたは、仕事や会社にエネルギーをとられて、自分を消耗していませんか?

子どもや家族にエネルギーをとられて、自分を消耗していませんか?

親や介護にエネルギーをとられて、自分を消耗していませんか?

たいていの「40代」は、「仕事」「子育て」「介護」の3つのどれかに、あるいはその3つともに、自分の人生を侵食されてしまっています。

本田健『40代にとって大切な17のこと』(きずな出版)

本田健『40代にとって大切な17のこと』(きずな出版)

「40代」は、仕事ができる、できないにかかわらず、それなりに忙しくなります。

子育ては、子どもが1人でも2人でも、莫大なエネルギーが必要になります。介護も同じです。両親と離れて暮らしている人は、たとえば兄弟姉妹がいた場合には、分担することもできるでしょう。一人っ子の場合、または自分だけが両親といちばん近い場所に住んでいる、という場合には、負担が大きくなります。

この「仕事」「子育て」「介護」の3つのエネルギーの綱引きで、より仕事をやる人、より子育てをやる人、より両親の介護をやる人に分かれていくわけです。

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