日本発アプリが米最強になった訳 – PRESIDENT Online

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日本発のニュースアプリ「スマートニュース」がアメリカ市場で存在感を高めている。日本ではクーポン機能を訴えるCMを目にする機会も多いが、米国では違った顔も見せている。企業評価額も2000億円を超えた。米国での躍進の理由とは――。



※写真はイメージです – 写真=iStock.com/Mlenny

1年間で利用者が2倍以上に

人気タレントを起用したテレビCMなどで「クーポン」機能が広く知られているニュースアプリ「スマートニュース」を運営するスマートニュース社が、2021年9月に国内外の投資家から2.3億米ドル(約251億円)の資金調達に成功したことが話題になった。

企業評価額が10億ドルに達した未上場企業を「ユニコーン企業」と呼ぶが、この資金調達により評価額が20億ドル(当時約2100億円)に達したスマートニュース社は“ダブル・ユニコーン企業”の仲間入りを果たしたことになる。

注目すべきは、複数のアメリカの投資家から投資を受けている点だ。なぜ日本発のニュースアプリがアメリカで注目を浴びているのか。スマートニュース社執行役員 経営企画担当兼ファイナンス担当の松本哲哉さんに取材した。

スマートニュースがアメリカでのサービスを開始したのは14年。当初は一部のニュース好きユーザーが利用するアプリだったが、今ではアメリカの主要ニュースアプリの一つとなり、その中でもユーザーの月間平均滞在時間が最も長いアプリに成長した(※)。さらに、コロナ禍まっただ中だった20年には、1年間で月間アクティブユーザー数が2倍以上に増えるなど、アメリカでの存在感を急速に高めている。

※出典=アメリカの調査会社App Annie社のデータから(2021年7月時点)。ユーザー数は非公表。

アメリカ大統領選挙を機にニーズが変化

アメリカでの躍進のきっかけになった機能がある。

アメリカの報道機関は保守かリベラルかのポジションを明確に出しており、利用者も読む新聞や見るテレビのチャンネルを自分の政治的な指向に合わせて決めている人が多い。また、ニュースをSNSでシェアする習慣が日本より顕著で、SNSの普及とともに、人々はニュースや情報をそこから入手するのが当たり前になっていた。

しかし、16年に行われたアメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利した際、SNSにはアフィリエイト目的のフェイクニュースが大量に流され、問題になった。また、近しい価値観でつながる友人がSNSでシェアするニュースは、自分と同じ嗜好のものばかり。まるで世界には自分が好きなニュースや信じたいニュース、自分たちと同じ意見しか存在しないと錯覚してしまうほどで、他者の意見を聞く耳を持てなくなってしまった。これがアメリカ社会を分断に追いやった理由の一つと言われている。

このような状況の中で、SNSでシェアされる偏ったニュースを読むのではなく、複数の異なる視点のニュースをバランスよく見たいというニーズが有権者たちに広まっていく。

「もともとアメリカ版スマートニュースの政治チャンネルでは、保守とリベラルの多様な意見を表示するように心がけていました。社会の分断が顕在化するとともに、以前は1社の新聞やSNSだけを見ていた人たちも、スマートニュースならいろいろな意見をフラットに見られることに注目し始めました」(松本さん、以下同)

人気の理由は「異なる視点からのニュース」

政治的な思想においてバランスの取れたニュースの閲読体験を実現するために、19年にリリースされたのが「News From All Sides」機能だ。ニュース画面下部に表示される赤と青のスライダーをユーザーが左右に動かすと、同じトピックでリベラル、中道、保守の媒体が報じたニュースを自動的に表示するというスマートな仕組みだ。異なる価値観のニュースや意見を直感的にわかりやすく表示する工夫が受けて、ユーザー増につながった。



アメリカ版の独自機能である「News From All Sides」。政治コンテンツについて、画面下部のバーを左右に動かすと、保守寄りからリベラル寄りまで、異なる視点からのニュースを表示する – 提供=スマートニュース社

20年9月の大統領選挙では投票をサポートする機能を実装し、投開票時には開票速報機能をリリース。今年中間選挙を控えるアメリカでは、ユーザーのニュースへの高い感度が継続している。

コロナ禍での情報発信の仕方も、さらなる躍進のきっかけになった。

「コロナ禍では、どこで感染が増えているか、毎日どのぐらい感染者が出ているかなどの情報が強く求められました」

20年3月に新型コロナウイルスチャンネルを開設し、感染状況などをビジュアルで見られるようにしたところ、月間のアクティブユーザー数が2倍以上になったという。人々が求める情報をタイムリーに提供できる、それがスマートニュースの強みだ。ただニュースや情報を表示するだけでなく、世の中に求められている形で表現できることがアメリカでの巨額の資金調達成功の一因となった。

日本で目指すのは「すべての情報を一つに」

一方で、引き続き日本でもスマートニュースの存在感が増している。

国内の調査会社であるICT総研の「2021年 モバイルニュースアプリ市場動向調査」によると、17年度末に4683万人だったモバイルニュースアプリの利用者数は、21年度末には5874万人まで増加。23年度には6183万人に達すると予測されている。スマートフォンやタブレットの普及により、ニュースはモバイルニュースアプリで見るのが当たり前になりつつある。

さらに同調査によると、モバイルニュースアプリ利用率は、1位の「Yahoo!ニュース」63.5%、2位がスマートニュースの56.2%となっており、3位で37.0%の「LINE NEWS」を引き離して、2強状態に突入したことがわかる。特に、スマートニュースの利用率は前回から34.8ポイント増と急速に浸透している。

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