田原氏 電通と喧嘩でテレ東退社 – BLOGOS編集部

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撮影:弘田充

田原総一朗と毒蝮三太夫、政治に世相に常に目を光らせBLOGOSで定期的に発言を続けるふたり。田原が87歳で毒蝮が85歳、まさにBLOGOSが誇る長老同士。お互いに少年時代に戦争体験を持ち、戦後日本を昭和・平成・令和とメディアに身を置き歩んできた。今もって現役で活動を続ける両人がBLOGOSレギュラー同士という縁により、初のロング対談が実現。長老同士が老いを超えて語り合う超老対談です。

全5回にわたるロング対談、日本人、戦争、核問題、政治、若者と多岐にわたったその第1回は…。

80代現役バリバリの”超老”2人が初対談

毒蝮 俺が田原さんとお会いしたので覚えてるのは浅香光代さんの会。浅草ビューホテルでやった時にちょっとだけ顔を合わせた。でも、こうしてきちんとお会いして話すのは初めてですよね。お会いできるのを願ってました。

田原 ホントにね、僕もじっくりとお会いしたいと思ってました。僕が毒蝮さんと初めて会ったのはおそらく1972年頃。半世紀前。毒蝮さんがTBSラジオで活躍されてて、僕はまだ東京12チャンネル(現・テレビ東京)の社員だった。毒蝮さんと会ったのは放送作家の菅沼定憲(※すがぬまていけん/「ヤング720」「11PM」等の番組構成を担当)さんがご縁だった。

毒蝮 そうそうスガチン、菅沼定憲ね。ふたりとも定憲が共通の知人なんですよね。俺は定憲とは戦友みたいなもんですよ。俺がまだ石井伊吉の時代、若い頃に彼と一緒に「劇団山王」(1954年~)ってのを作ったんです。「劇団四季」(1953年~)と「テアトルエコー」(1956年)なんかはほぼ同時期の結成ですよ。「山王」の旗揚げ公演は第一生命ホールでやった石原慎太郎の「処刑の部屋」だった。そのあと公演4回でポシャっちゃった。

田原 僕はTVディレクター時代に数々の番組を定憲さんに構成してもらってた。定憲さんの紹介で二番目のカミさんと知り合った。

毒蝮 今回、田原さんと会うにあたって定憲の奥さん、まゆみちゃんに電話したんですよ。何しろ田原さんの話はよく定憲から聞いてたからね。定憲はがんで亡くなっちゃったけど、田原さんの「朝まで生テレビ!」にも、がんの医療を語る立場で出てましたね。

田原 日本の医療問題を取り上げた回ですね。

毒蝮 定憲が亡くなった時に田原さんが弔辞を読まれたんですよね。

田原 そう。今回、我々を引き合わせたのはBLOGOSだけど、菅沼定憲という作家の存在もあったわけだ。

毒蝮 この対談、あの世にいる定憲にも読んでもらいたいですね。ええと、これは何で読めるんだっけ? パソコン? スマホ? 定憲はあの世でスマホ持ってるかな?(笑)

毒蝮 それにしても俺と田原さんが対談するってのはいったい何が目的なの? 年寄りはもういらねえって話か?(笑)

田原 それは冗談でなく去年から今年にかけて、ラジオで長期間つとめてたパーソナリティーが次々に辞めてるでしょ。

毒蝮 そうなんですよ、俺に近いところでは大沢悠里ちゃんが3月で降板(大沢悠里のゆうゆうワイド/TBSラジオ)するし、関西では道上洋三アナウンサー(ABCラジオ)も健康を考えて3月いっぱいで降りるとか、年々そうなっていきますよ。

田原 世代交代ですね。

毒蝮 まあ、カッコよく言えばそうだけど、年寄りは老害ですよ(笑)

田原 老害老害(笑)、僕なんて老害の典型です!

毒蝮 森喜朗さんなんか、森ロウガイだって(笑)

田原 今回は老害ふたりの老害対談だ(笑)

毒蝮 なんだ編集部、BLOGOSの長老同士だからこの対談を企画した? じゃあ長老で老害だからチョウロウガイ・・・超老害対談か? アハハハハ。

当たり障りのあることを言える人が必要

田原 今ラジオでは多くのベテランたちが交代している。毒蝮さんは1969年からずっとTBSラジオ(「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」)をやっている。だけど毒蝮さんは辞める気配がまったくない。この人が必要だってことがみんなわかってるんだ。

毒蝮 かれこれ50数年やってますね。

田原 テレビでもラジオでも出てる人はだいたい無難なことを言う人が多い。だけど毒蝮さんは当たり障りのあることをガンガン言いながら、なんでマスメディアに出続けているのか。年寄りをつかまえて「ジジイ!ババア!」、ところが言われたジジイとババアが毒蝮さんのファンになってる。だからそういう当たり障りのあることを言える人が必要だって国民がいるわけですよ。

毒蝮 それで言うと立川談志なんかもそうで、当たり障りのあることばかり言ってた。世の中を皮肉って痛烈なことを言う。言ってることは正しかったりするんだけど、談志の場合は痛烈過ぎて言われた相手は傷ついちゃうんです。例えば、「努力とは馬鹿に恵(あた)えた夢である」なんて、努力してがんばっている人を見下すようなことを堂々と言う。

解釈すれば深い言葉でもあるけど、言葉が辛辣なんですよね。それで相手をスパッと斬っちゃう。斬りっぱなし。斬ったらそのぶん相手を手当てしないとコミュニケーションにならないでしょ。だけどあいつは縫合手術がヘタなんですよ。斬りつけたまんま帰っちゃう。相手に痛みが残っちゃう。それに比べると俺はズルいから縫合手術が上手いし、斬ったら縫うタイプですから(笑)

田原 毒蝮さんには言いたいことをガンガン言ってほしい。

毒蝮 当たり障りあっても言う時は言ってくほうが大事だと思いますよ。田原さんもそういうとこあるじゃないですか。政治家に「あんた何やってるんだ」なんて平気で言う。だけど政治家たちも「田原さんなら会う」って人が多い。心から嫌われてたらとっくにこの世界にいませんよ。またね、田原さんが上手なんですよ。だから必要とされている。

田原 僕はね、自民党の歴代の総理大臣はけっこう柔軟性があると思ってる。だから面と向かってガーン!って斬り込んでいくのを、向こうも歓迎している。

毒蝮 向こうも打たれ強いんだ。

田原 安倍さんが三選されたあと、僕は安倍さんに言った。「国民の70%以上が森友・加計が問題だと思ってる。自民党の議員にも問題だと思っている人間がいるはずだ。誰か党内の議員で安倍さんに『問題だ!』と言ってくる人はいるか?」って聞いた。安倍さん「ひとりもいない」。

そこで言った、「ということは、自民党の議員は安倍さんへのゴマスリばっかり考えてて、この危機にどうすればいいか何をしたらいいかを考えてない。そんな無責任な野郎ばっかりだったらこの国は危なくなる。それが心配にならないか!」と。そしたら安倍さん「田原さんに言われれば心配だ」って。

毒蝮 言われなかったら心配じゃなかった?

田原 安倍さんも周りに言う人がいないんだ。

毒蝮 田原さんは政治家に対して当たり障りのあることを直接言える貴重な存在ですよ。

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