東京から名古屋や大阪に向かう時によく言われるのが静岡県長すぎ問題である。静岡県は横に長い県なのでいつまで経っても静岡県を脱出できないのだ。特に青春18きっぷユーザーにはお馴染みの「関門」で、ただ長いだけなのに静岡県を目の敵にするようなきらいがある。
しかしそれでは静岡県があまりに不憫だ。静岡県からしてみれば「勝手に通過点として認識してもらっちゃ困る」という話である。たくさんある駅にもそれぞれ見どころがちゃんとあるはずだ。
というわけで東海道線の静岡県内の駅に全部降りて見どころを探してきた。
一日あたり約20駅に下車する旅
東海道線の静岡県内の駅は熱海駅~新所原駅まで全41駅。1泊2日でこの41駅に全て下車して各駅の見どころを探していきたい。
改めて地図で見ると静岡県の守備範囲の広さに笑ってしまう。せめて伊豆半島は神奈川県に分けてやってくれ。
出来るだけ明るいうちに回りたいので一日あたり約12時間と考えると一駅に使えるのは平均30分程度。電車の時間なども考えるとかなりあわただしい旅になりそうだ。実際、時間がなくて堪能しきれなかった駅もたくさんあるので、筆者が見つけられなかった魅力はぜひ教えてください。
では早速、熱海駅からスタート!
熱海駅:足湯にお湯がなかった
8時前の熱海駅はまだお店もあまり開いていない。この旅で注目したいのはどちらかというとマイナーな駅の見どころなので熱海駅のようないわゆる「観光地」はさくっと済ませて次の駅に向かいたい。
函南駅:「新幹線」という町がある
電車に揺られること約8分、次の函南駅に到着。
この駅の近くには以前から行きたいと思っていた場所があった。駅から歩いて20分弱、「新幹線」という町だ。
今の東海道新幹線が出来る以前に構想された弾丸列車計画のために着工された新丹那トンネルの工事宿舎がこの場所にあったことから名づけられた地名である。つまり東海道新幹線よりも新幹線と名乗ってきた歴は長いわけだ。先輩!お邪魔します!
町の中を歩いているとデイサービスの車がおばあさんを玄関まで迎えにきていた。そんなありふれた光景から、地名の珍しさとは裏腹に、ここに暮らす人たちは何事もなく平常心で暮らしていることが伝わってくる。自分との温度差が面白い。絶景もいいけれど、そこにある「普通」を見るのもまた旅の醍醐味だ。
みたいなこと考えていたら乗ろうとしている電車がくるまであと15分。やばい!急いで戻らないと!この旅に余韻に浸っている暇はない。最初から息を切らせながら駅に戻った。
三島駅:安全祈願
序盤から函南駅に1時間弱費やしてしまったのでテンポをあげていきたい。次の駅は新幹線も止まる三島駅だ。
三島は観光名所もたくさんあるので見どころを探すまでもないのだが、旅の安全を祈って三嶋大社にお参りしておきたい。駅からバスに揺られて約10分で到着だ。
三嶋大社は本殿・拝殿が国の重要文化財にも登録されている由緒正しい神社である。旅の成功と欲張って家族の健康もお願いした。格式高い神社ではだいたい健康も追加オーダーしてしまう悪い癖がでた。
沼津駅:駅弁で朝ごはん
駅に戻るやいなや電車に飛び乗り、次に降り立ったのは沼津駅。
沼津も見どころはたくさんあるのだが少し足を延ばさなければいけないところばかりだ。というわけでここで朝ごはんにしたい。
緑のものはわさびの葉で包まれており、わさびも沼津の名産品である。駅弁は電車内で食べてこそ!なのだが、全ての駅に降りなければいけない都合上一回の乗車時間が短すぎるため、駅のホームでいただいた。自分ですり下ろす生わさびも入っていて五感で楽しい駅弁だ。食べ終わると同時に次の電車がやってきた。忙しい!
片浜駅:松原越しの富士山!
お次は片浜駅。このあたりから全然馴染みがなくなってくる。
どうやら海が近そうなので海を見に行ってみよう。非日常、一人旅といえば海は外せない。
海の手前には「千本松原」と呼ばれる松林が約10kmにわたって伸びている。千本とついているが30万本以上の松が植えられているらしい。さばを読みすぎだ。
この松原を抜けると目の前には駿河湾が広がっている。日差しを受けて煌めく海も格別だが、振り返った光景がすごかった。
帰ってから調べると日本百景にも選ばれている景勝地として有名だったのだが、その前情報を知らなかったので思わず「うわー!」と声を出してしまった。勝手に自分だけの絶景を見つけた気分になって盛り上がったのだが、そりゃまぁみんな知ってるよね、富士山だもん。
先を急ぐと言いつつ分かりやすく富士山の美しさに魅了されてしまい予定よりも一本後の電車に乗ることになってしまった。果たして全駅回れるのか不安がよぎり始める。
原駅:原宿の水
次の原駅は東海道の宿場町「原宿」が近い。ん、原宿…?
勝手に若者の街、原宿だ!と面白がっているわけだが、原宿といえば最先端グルメである。タピオカに続くムーブメントをこちらの原宿から発信していこうではないか。
グーグルマップに残されていた読めなくなる前の説明書きによると地下180mから湧き出ておりごく微量ながらバナジウムを含んでいるらしい。飯田建設工業という会社の敷地内にありながら、無料でいただくことのできる湧き水である。
うん、ちゃんと冷たくて美味しい水だ。原宿(都内)の皆さん、原宿(静岡)に良い水ありますよ。
東田子の浦駅:駅舎と富士山を撮るならここ
喉を潤しつつ、次の駅は東田子の浦駅。いつも東海道線に乗って通り過ぎる時にちょっと耳に残る駅名が気にはなっていた。
もともとの予定ではこの公園に行こうかと考えていたのだが、片浜駅で富士山に見とれて時間をロスしてしまったのでこの駅で取り戻しておきたい。というのもこの駅は富士山とのツーショットが美しく、駅だけでも満足できてしまうから!
駅前は閑散としていて写真に写っている車に乗っている人以外の気配はなかったのだが、写真を撮っているといきなり耳慣れない言葉が聞こえてきた。駅前にペルー料理のお店があり、お店の奥さんらしき女性が軒先で大声で電話をし始めたのだ。
突然の異国情緒に思わず笑ってしまった。知らない駅でスペイン語?をBGMに眺める富士山、最高すぎるな。
吉原駅:富士山ドラゴンタワー
東田子の浦駅をサクッと楽しみ次にやってきたのは吉原駅。この駅も富士山が綺麗に見えるが駅舎とのバランスで言えば東田子の浦駅に軍配が上がる。
この駅では趣向を変えて、レンタサイクルを利用したい。徒歩だといける範囲が限られるので自転車が借りられるところでは有効活用して守備範囲を広げよう。気分転換にもなるし。
事前調査で行きたいと思っていた場所がある。ちなみにここまででだいたいお気づきだと思うがこの旅はめちゃくちゃ下調べして敢行しています。だって行き当たりばったりだとまじで時間なくなるから。下手したら一日5駅とかで終わっちゃうから。事前準備が大事。
自転車で約20分の道のりである。グーグルマップの所要時間を参考にして旅程を組んでいるのでのんびり風景を楽しみながら自転車を漕ぐ余裕はない。グーグルマップの徒歩や自転車の所要時間は一切の疲れが考慮されていないのだ。それなりのスピードを機械のごとく維持しなければならない。足が悲鳴を上げる。何が気分転換だ!
普段あまり自転車に乗らないのでいつも使わない筋肉に鞭打ちながらたどり着いたのはふじのくに田子の浦みなと公園の中にそびえるその名も「富士山ドラゴンタワー」だ。
個人的にちょっとマニアックな観光地にある登った割に見通しがそこまで良いわけでもないB級展望台が好きなので、「ドラゴンタワー」のそこはかとなくB級感を漂わせるネーミングにつられてやってきたのだが、うっかり普通に良いタワーだった。B級感とか思ってごめんよ、ドラゴンタワー。
そろそろ富士山摂取量が飽和状態になりつつあるだろうが、もうひとつだけ富士山のある風景を紹介しておきたい。田子の浦港の漁船と富士山だ。旅情以外の何物でもないぞ。
この風景だけでもおなか一杯なのに、この風景を油絵に描いているおじさんが三人くらい並んで折り畳み椅子に腰かけていた。絵を描くおじさんたちも含めて絵になりすぎるだろう。株式会社旅情から派遣されてきた旅情工作員の方々ですか?
工作員の皆さまのおかげと運動不足のせいでここでも乗車を予定していた電車を一本逃してしまった。果たして無事に全駅制覇は出来るのか!?気になるところだが今回はここまで。次回は富士駅からスタートします。
この記事で紹介した見どころはこちらの地図からどうぞ。
東海道線 静岡県内の駅に全部降りて観光する