北斗七星の形をした柄杓はありえるか(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

非常に明るい星で構成されているためとても分かりやすく、 北極星を探すのに役立ったりもするため、 星座の中ではかなりメジャーな存在とも言える北斗七星。

そしてその北斗七星は「柄杓の形をしてる天体」とよく言われる。 確かにあの形がなにかに似てると言われたら「柄杓……かなあ」と 思うぐらいは柄杓かもしれない。

でもそう完全に認めるには釈然としない気持ちがある。 だってあんな取手が折れ曲がった柄杓があったら不便じゃないか。 いや逆に人間工学的にいいのかも。終わらない無益なせめぎ合い。

ここは実際に作ってみて確かめたいと思う。

2010年7月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

柄杓とはなにか

そもそも北斗七星ってどんな形してたっけ。という人がいるかもしれない。 こういう形ですよ。

これが柄杓と呼ばれています。

これが柄杓に見えるだろうか。たぶん見えると思う。

僕も小さい頃から「北の空に輝く柄杓のような天体が・・・」と言われてきて 特に疑問は持ったことはなかった。

それはたぶん「柄杓ぽいよね。天体としては」という宇宙びいきの一種が 働いていたかもしれない。 でも実際の柄杓を思い出すとどうも怪しくなってくる。

伝統的日本の柄杓と言えばこれなわけで、 あんな柄の部分がぐにょぐにょ折れ曲がってるのはいままで見たことがない。

見たことがないにも関わらず、 それでも北斗七星は柄杓なのである。

要はアリなのかナシなのか

あらためて空の柄杓ってなによと思う。

果敢にも柄杓をイラスト化している絵本があった。

ちょっと柄の部分にムリが生じてるようにも見えるが、 柄杓が日本のとは違うからかあんまり違和感はないように見える。

むしろ「お年寄りにも使いやすい」みたいな感じさえ受け、 この形の柄杓というのも結構アリなんじゃないか。

つまり北斗七星型の柄杓を実際に作って使い心地を確かめたい。

で、作りました

前置きが長くなってしまったので、ここはもう完成した物をいきなり 見てもらうことにしましょう。

手前が北斗七星。奥がこぐま座の柄杓。

当初は北斗七星だけの予定だったのに、本を見たらこぐま座も柄杓の形をしていたので ついでに作ることになってしまった。

形としてはそんなに違和感ない。新進気鋭のデザイナーがデザインしたエルゴノミクス柄杓としてfrancfranc で売ってそう。

このクオリティ。

 

北斗の柄杓が出来るまで

あの北斗七星型の柄杓を作るには、 まず本物の北斗七星を見てみなければと思い星空を見に外へ出た。

そういったフィールドワークがものづくりの資料集めに大切なのである。

でも山奥の平原とかではなく近所の公園。
夜空に瞬く星を見上げる、という言葉がまるで似つかない雰囲気。
ザ・曇天。

曇ってて全然見えない。そういえば梅雨だった。

まあいくら梅雨とはいえ1日ぐらい晴れる日はあるだろう。そう思って待ってたら、もうずっと曇り。 原稿を書いているいまも天気はどんよりしてて、星なんて存在しないんじゃないかと思うぐらい 見えなかった。

もうこれが北斗七星でいい。
たまたま立ち寄ったお寺の柄杓がアルミ製だったのは見なかったことにしたい。

結局実際に北斗七星を見るのは諦めて本を借りてきた。

本の便利さに感動。

さて本を参考に北斗七星の形を描いた。

だいたい正しいです。

星と星を線でつないでるので当然ながらカクカクしてる。

これ、金属の柄なら叩いたり曲げたりすることで割と簡単に作れそうだけど、 ここはやはり日本の伝統的柄杓にあわせて木で作りたい。

まず曲げ木用の型を作る。 北斗七星の柄部分をプリントした紙とアルミの板を用意。
点に合わせて目印を書く。
そしてその目印を壁などを使って押し曲げる。
次にインクが壁に写って落ち込む。敷金が……。
北斗七星型の板が出来ました。
それを魔法で2つにします。

これで型が出来たので曲げ加工したい木を水につけて柔らかくする。

レンジで茹でるスパゲッティ容器の万能さ。

本来なら一週間近く浸しておくべきらしいが、 それだとさすがに締め切りに間に合わず、ただ木を水に浸した記事で終わりそうなので、 今回は一晩だけにしておく。

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木に申し訳ないことをする

木材を水に浸してから一日経ったので取り出した。 持った感じちょっと重くなってる気がするのでたぶん大丈夫だろう。

なお台所で撮ってるため先ほどまでと絵的になにも変わってませんが 一日経ってます。

これからレンジで温めるためラップで巻く。
加熱してさらに柔らかくする。
暖めて柔らかくなった木材を型にはめて固定する。結構固かったがなんとかいけた。
木ん縛。

 

一つの柄を作るのに二日

この状態のまま乾かすことまたも24時間。 北斗七星型柄杓の柄部分が出来た。

リクライニングチェアーのようでもある。
ほぼ完璧に北斗七星の形(この時点では四星)。

 

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こぐま座も作る

北斗七星を作ったらこぐま座も作らないといけない。なんて法律はないが、 柄杓としてはこっちの方がありえそうなので無視することが出来なかった。

こぐま座。こっちの方が柄杓っぽい。

そしたらまた二日かけて柄を作る。

さすがにこれは折れるんじゃないかと思ったが、
ヨガをマスターした木は折れない。
少し角度つけすぎたけど70%ぐらい合ってる。
4日間の成果物。

 

水をすくうことはあまり考えない

柄の部分はどちらも完成したので、後は水をすくう部分。 あれは木が完全に丸くなってるので曲げ木で作るとなると相当難しそう。

とりあえずここは、たくさんの水をすくうような強度は無視して、 そのままでも曲げられる薄い板を使うことにした。

薄さ0.5mmのバルサシート。これをクルッと丸めてホッチキスで止める。
舟幽霊対策ならこのままでも良い(底の抜けた柄杓を渡すと助かるから)。
底も同じシートで作ろうとしたら微妙に足りない。
なので結合する。ボンドをつけてゴリラで押さえる。
水をすくう部分完成。
そして1ページ目の完成写真に戻るわけです。

 

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ようやく使ってみる

最初に完成形を見せてからここまで長くかかったが、ついにこの柄杓の使い心地を試したい。

まずは北斗の柄杓から。
バケツに入る角度がいい!

水をすくおうとバケツに入れようとしてさっそくこの柄杓の利点に気づいた。 柄杓をバケツに入れたときの角度がちょうど良いのだ。

これによって果たしてどういった利点があるのかは知らないが、とにかくちょうど良いんです。

ただそれとは別ににこの柄杓には心配な点があった。

ここ。

柄と水をすくう部分は接点を接着剤でくっつけてるだけなので、非常に強度が弱い。 水をすくったらポロッと落っこちてしまうかもしれない。使い心地以前に最初の出発点はそこである。

柄杓で水をすくう行為に緊張したのは初めて。
水を保持できてる!
壮大に溢れてはおりますが。

溢れてはいるけど、何も参考にせず思いつきだけで作ったにしては水を保持できてるので 良かった。

北斗神拳奥義、水蒔き。

さて水を蒔いた感想だが、それがあんまりない。

感想がないわけではないのだが、普段から柄杓を使ってるわけでもないので、 それに比べて便利かどうかとか分からないのだ。やってることも水蒔いてるだけだし。

強いて言うなら内側に折れ曲がってる分、狙ったところより手前に落ちやすいかもしれない。

時間を掛けて作った物の最終的な成果。

 

こぐま座柄杓の使い心地

もう一つの柄杓、こぐま座の形をした方はどうだろう。

柄杓とお玉の中間みたいな形。

普通にこう入れてもいいけど、

普通にこう入れてもいいけど、
奥から手前にすくうショベルカースタイルがしっくりくる。
より壮大に溢れております。

この柄杓を使って水を蒔く様子は動画にしてみました。

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この地味すぎる行動をわざわざ動画で見てもらったのにはわけがある。

実はいまの映像の中にこの柄杓の利点が隠されているのに 気づいただろうか。

たぶん分からないだろうからすぐ言いますが、それは水を蒔くとき柄で反動が付けられるということです。

後ろに反らしたとき柄がしなり反動エネルギーが貯まる。
そして一気に解放。水がより遠くに飛ぶ!

柄杓の水を遠くに飛ばしてどういった利点があるのかは知りませんが、 なんとなく楽しいからそれで良いのではないでしょうか。

北斗七星型の柄杓はありえた

星座の段階ではこんな柄杓ないだろうと思っていたけど、 いざ作ってみるとそんな変な印象もなく、普通に柄杓として使えた。

使い心地に関しては、「柄杓の使い心地」の尺度がどうにもなかったため判断に困ったが、 あの形でも普通に使えることが分かったところで良しとしたい。なにより星座を元にしてるなんて素敵じゃないですか。

愛する人と二人、夜空を見上げながらこの折れ曲がった柄杓をプレゼントすればきっと素晴らしい結果が 訪れると思うので、そういう機会がある人はぜひ試してみてください。

すっかり墓参り気分に。

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